ソケットリフトにて骨造成したインプラント症例ケース02

左側上顎第1大臼歯(#26) 歯牙破折症例 (40歳代 女性)

左側上顎第1大臼歯の痛みを主訴に当クリニックを受診された。歯牙が近遠心的に破折しており、歯ぎしりによる歯牙破折が疑われた。左側上顎第1大臼歯を抜歯、その後2か月待ってソケットリフト併用でインプラントの埋入手術をさせていただき、患者さんは、抜歯後6か月でインプラント補綴により咀嚼機能の回復ができた。


LANDmarker(iCAT)にてシミュレーションを実施。ワックスアップを取り込み、将来の上部構造の位置を確認して埋入位置を計画。


左側第1大臼歯(#26)のCT画像。φ4.7mm、L12mmのインプラントを計画。ソケットリフトを行うため、骨補填のシミュレーションも実施した。


iCATから送られてくるドリルプロトコル。


Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を口腔内に適合させた所見。適合はもちろん、インプラント埋入部位の粘膜が固有歯肉内に収まるかどうかを確認することが大切である。


的心ガイド(iCAT)を用い、FINESIA的心 サーキュレーションメス(京セラ)を用いてインプラント埋入部位の歯肉を丸く切開する。


サーキュレーションメスにおける歯槽提粘膜の切除。出血は骨面より若干あるくらいである。


FINESIA HA Tapered type 直径4.7mm/長さ12mm(京セラ)をソケットリフトを伴う骨造成し、埋入する計画を立てた。Landmark Guideの的心ガイド(iCAT)を適合させ、ドリルキーをガイド穴に挿入し、的心パイロットドリル 直径3.7mm用(京セラ)でドリリングを行う。


的心ガイドドリル 直径3.7mm用(京セラ)に進度調整用のストッパー(↓)を装着し、上顎洞底の直前までドリリングを行う。


上顎洞に穿孔させるために、上顎洞への骨造成ソケットリフト用のCASKIT(オステム)を用いて先行させる。先端のドリルの形状が特殊なために骨のみが切削され、上顎洞の粘膜は傷つきにくい。ストッパーも1mmごとに用意されており、使い方を厳密に注意して行えば洞粘膜の損傷はない。


ソケットリフト用のCASKIT(オステム)の従来のプロトコールでは粘膜骨膜弁を作成して骨面で行うが、私は、歯肉を切開せずに行うフラップレスで行う。そのため歯肉から洞底までの距離をシミュレーション上で計測し、注意してドリリングを行う。ストッパーの役目も重要になってくる。


ソケットリフト用のCASKIT(オステム)によるドリリング。ストッパーの長さが変わっているのがわかる。洞への穿孔がわかりにくい症例もあるため、専用の探触子で触診で確かめながら骨の穿孔を確認する。


上顎洞底の骨を穿孔し、インプラント形成窩の先が粘膜のみになっていることを確認したら、生理食塩水を1mlのシリンジに入れて、水圧による洞粘膜の挙上を行う。ゆっくりと洞粘膜のバックプレッシャーを感じながら圧をかけることが重要である。

粘膜に破れがなければ、シリンジを引くことで血液が逆流してくるが、もし、破綻しておれば、空気が返ってくることになる。洞粘膜の損傷はないことを確認すれば、人工骨を洞粘膜と洞底部に補填することになる。


洞粘膜の損傷がないことを確認後、アローボーンβ 250μm~1000μm(ブレーンベース)とアパセラム-AX(京セラ)を混合して、人工骨とし洞粘膜と洞底部に補填する。補填する骨に関しては、2種類の人工骨の混合やコラーゲン・HA複合体であるリフィット(京セラ)などを使用することがある。


人工骨であるアローボーンとアパセラム-AXを混合したものをインプラント形成窩に充填した所見。

その後、ソケット専用にプラガーにて,ところてんを作るがごとく骨を上顎洞に補填していく。


ソケット専用にプラガーにて人工骨を上顎洞に補填していっている所見。上顎洞粘膜を人工骨で損傷しないように愛護的に骨を送り込む。


再度、的心ガイド(iCAT)を装着し、インプラントをガイドに沿うような形で埋入いく。この時の深度もサージカルガイドによって規定される。


インプラントがガイドに沿いながら、埋入されている所見。


インプラント体が埋入されたときの所見。埋入トルクは20N/cmであった。


ヒーリングアバットメント装着の所見。


手術終了時の所見。

手術内容:#26 インプラント埋入術
ソケットリフトによる上顎洞への骨造成を伴う
埋入トルク:20N/cm (#26)
麻酔:笑気ガス・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 3.6ml
手術時間:13分


埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。インプラントは予定された部位に埋入され、上顎洞が挙上されているのがわかる。


印象採取時の確認Dental X-P


最終補綴物装着時の確認Dental X-P


最終補綴物装着時の口腔内所見

ソケットリフト症例ではあるが、直径4.7mmと十分な太さで咬合に関しても全く問題ないと考える。


最終補綴物装着時の口腔内所見

東洋人は上顎洞が発達していることから、サイナスリフトやソケットリフトを必要とする患者さんは、多い。サイナスリフトは経験豊富な治療医に託すということが、インプラント治療を行う一般歯科医師にとって、ある程度コンセンサスが得られているが、ソケットリフトはできるのではないかと自ら手術にチャレンジする歯科医も多い。しかし、粘膜が損傷した時のリカバリーや上顎洞炎になったときに責任が取れない、治療できないのであれば行うべきではないことを明記したい。

術後は良く噛めて機能的にも十分に回復でき、患者さん自身も非常に喜ばれていました。

 

 

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