上顎抜歯即時インプラント症例ケース04

右側中切歯 歯根破折ならびに右側第2小臼歯の根尖性歯周病による抜歯即時症例(40歳代 男性)

右側中切歯の歯冠の崩壊があり、唇側で歯槽骨の吸収と若干の排膿を認めた。右側第2小臼歯の近心で破折を認める。
抜歯即時にするか待機埋入にするかについては、周囲の骨の残存状態や感染の有無を考慮して決定する。
患者さんは、約5か月でインプラント補綴により審美性や咀嚼機能の回復ができ、喜んで頂けた。写真で裏の状態をお見せするとジルコニアにこのようにセラミックを焼き付けているのですかと興味深そうであった。


LANDmarker(iCAT)にてシミュレーションを実施した。
11番部はワックスアップをデータに取り込み基底結節にインプラント体の方向が来るように設計、15番部は既存歯を目安に埋入位置を検討した。


11番部のCT画像。鼻腔底の少し硬い皮質骨に尖端を少し接触せせることで、バイコーチカルな支持を獲得するため、L16mmのインプラントを選択した。骨質表示は参考値であるがD3-D4の良好な骨質であると考えられた。


15番部のCT画像。こちらもバイコーチカルな支持を獲得するため上顎洞底の皮質骨に接触させるように位置決定を行い、L14mmのインプラントを選択した。骨質表示は参考値であるが、D3がメインの良い骨質と思われた。


唇側の歯槽骨を温存させることに注意して抜歯を行う。抜歯後の唇側の骨保存が非常に重要である。本症例では、歯冠側の骨が?????????


第2小臼歯の抜歯所見


抜歯後の口腔内所見


的心用サージカルガイド(i-CAT社製)を用い、FINESIA的心パイロットドリルφ3.4mmでドリリングを行っている。(Step1/3) ガイドを手指できちんと抑えて固定することが重要である。


FINESIA的心ガイドドリルφ3.4mm でドリリング。(Step 2/3)


FINESIA的心ガイドドリルφ3.4mm で最終形成。(Step 3/3) 的心ガイド(iCAT)ではストッパーがあることから、安心してその深さまで形成することができる。


インプラント埋入窩が形成できれば、インプラントの埋入を行う。ファインシアでの埋入であるがストッパーがついており適切な深さでの埋入が可能になる。


インプラント体の埋入:インプラント体がガイドに誘導されながら適切な位置・方向で埋入されているのがわかる。
インプラント埋入サイズ:直径3.4mm/長さ14mm HAコートテーパータイプ(京セラ)


ガイドを外したところである。抜歯窩の状態、インプラントと既存骨とのギャップの距離、それに伴う深度調整なども重要となる。


右側上顎中切歯のインプラント埋入窩を形成する。FINESIA的心パイロットドリルφ3.7mmでドリリング。(Step1/3)


右側上顎中切歯のインプラント埋入窩を形成する。FINESIA的心ガイドドリルφ3.7mmでドリリング。(Step2/3)


右側上顎中切歯のインプラント埋入窩を形成する。フリーハンドでの形成では、口蓋側の骨の斜面でドリルが滑り、インプラント埋入窩の軸が口蓋側に誘導される。ガイドを用いてもその傾向はあるためにその点を十分注視する必要がある。FINESIA的心ガイドドリルφ3.7mmで最終形成。(step3/3)


インプラント埋入窩が形成できれば、インプラントの埋入を行う。
インプラント埋入サイズ:直径3.7mm/長さ16mm HAコートテーパータイプ
ファインシアでの埋入であるがストッパーがついており適切な深さでの埋入が可能になる。


インプラント体の埋入:インプラント体がガイドに誘導されながら適切な位置・方向で埋入されてるが、抜歯即時の症例ではインプラント埋入時も口蓋骨の斜面に誘導されないように気を付ける。


インプラント埋入が終了したところである。残存骨とインプラント体とのギャップ、歯槽骨の残存を触診で感じ、骨造成、メンブレンなどの使用の有無を決定する。深度調整も必要なこともある。


唇側の骨とインプラント体とのギャップに人工骨で骨補填するが、本症例の場合、骨膜の欠損が一部疑われたため、吸収性メンブレン(コーケンティッシュガイド/GBR用)を使用して、人工骨と歯肉結合組織の間に骨膜様組織を誘導することを目的に挿入している。


唇側の骨とインプラント体とのギャップに人工骨 「アパセラム-AX(京セラ)とアローボーンβ250-1000μm(ブレーンベース)を混合して用いている」 で骨補填してる。写真では確認できないが、カバースクリューを装着して骨補填を行っている。


唇側の骨とインプラント体とのギャップへの人工骨補填。メンブレンの位置を変化させないように慎重に行う。


ヒーリングアバットメント装着後の所見。フラップを開かなくても骨のレベルなどは短針などで触診することで分かる。


骨補填材が、インプラント埋入窩から、こぼれ出ないように縫合する。第2小臼歯部に関しては、人工骨の溢出をさけるためにテルプラグもしくはスポンゼルをおいて縫合することもある。

手術内容:#15, #11 抜歯術・抜歯後インプラント埋入術 トルク15N/cm (#15), 20N/cm (#11)
麻酔:笑気鎮静・モニター下  局所麻酔2%キシロカイン(1/80,000Epi) 7.2ml
手術時間:23分


埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。


印象採取時の確認Dental X-P


最終補綴物装着時の確認Dental X-P


最終補綴物装着時の口腔内所見

来院時、歯根破折により止むを得ず抜歯となったが、隣の歯を削ってブリッジにするという治療よりも、保存することができずに抜歯になった歯の代わりにインプラントを行い、審美性を確保し機能回復をすることを選択しました。術後は審美面・機能面も回復できました。


最終補綴物装着時の口腔内所見

歯根破折により止むを得ず抜歯となったが、隣の歯を削ってブリッジにするという治療よりも、インプラント補綴を行い、術後は審美面・機能面も回復できました。
ブリッジによる治療は健全な歯を削らないといけないことから、安易に選択すべきではない治療ではないかと考えます。
清掃性やずっとその歯が持つのか否かという予知性を考えるとインプラント治療という選択になるのではないでしょうか。

 

 

 

 

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