サイナスリフト(基本)

サイナスリフトの適応

上顎臼歯部のインプラント埋入手術において上顎洞までの距離がない場合には一般に上顎洞挙上術が行われる。教科書的には、下記に示すように歯槽頂から洞底までの距離が7~10mmの場合には、インプラント埋入形成窩から骨(人工骨、自家骨)を入れて上顎洞粘膜下に骨を入れることで上顎洞を挙上するソケットリフト術を適応し、それ以下の骨の高さしかない場合には上顎洞の側壁を開窓して骨を填入移植するサイナスリフトが適応されるが、

経験を積むことでソケットリフトの適応は4mmあるいは5mmくらいからに拡大する。

さらにサイナスリフトの同時埋入に関しても1mm程度あれば可能になる。

しかしながら、十分な経験と知識・技術に裏打ちされていることが必要であり、また、CTなどにより十分に解剖学的な検討を行ったうえで決定されなければならないことは言うまでもない。

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サイナスリフトにおける局所的診断

  • 上顎洞の疾患の有無
  • アレルギー性鼻炎
  • 上顎洞にポリープを併発していることが多い。
  • 上顎洞にポリープが充満しているようならば埋入前に耳鼻科における加療を優先する
  • 粘膜肥厚を認め、膿性鼻漏なら埋入1週間前にレフトーゼおよび抗生剤を処方
  • 水溶性鼻漏なら、そのまま埋入へ
  • 歯性上顎洞炎
  • 原因歯と考えられる歯牙の処置を優先し、抗生剤等により炎症の消退を図る。

上顎洞の形態

  • 上顎洞の幅
  • 上顎洞の前額的な幅の広さによってサイナスリフトの条件は変化
  • 狭い幅のものはnarrow sinus と呼ばれ難易度も高くなる
  • 隔壁の有無
  • 上顎洞の約30%に隔壁が存在する
  • パノラマで正確に診断できるのは約半数のみ
Krenmair G et al. J Oral Maxillofac Surg. 1994;52(3):332-333

・隔壁は、第二小臼歯部および第一大臼歯部に多く認める

 

上顎洞側壁の開窓部の設計

上顎洞の開窓部の設計は理想的には以下の図のごとくとされているが、術者の技術や経験によって開窓部の大きさなどは変わる。一般的に言えることは、サイナスリフトを安全に行うためには(シュナイダー膜を破かないようにするためには、下図で5mmとされている開窓部の位置を上顎洞底部に2-3mmあるいは1mm程度と低く設定すること、埋入部は必ずインプラント埋入部位の前方寄りにあけることが重要であり、コツとなる。

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サイナスリフトの術中偶発症

サイナスリフトの偶発症で最も多いのは、上顎洞粘膜の穿孔で術中の10~40%の確立で生じるとの報告もある。Bony windowの形成時、隔壁部の剥離の際に生じやすいとされており、ピエゾサージェリーなどの器具の使用によって防げると販売業者は言うが、私が思うにはきちんとした洞粘膜の剥離の手技がなければどのような器具を使ってもそのような偶発症は起こり得る。側壁の骨削除=開窓においてはピエゾサージェリーは有効であるが、剥離に関しては、慎重な手技に勝るものはない。

不幸にして上顎洞粘膜の穿孔が生じた場合には、その部分のみを修復しようとするのではなく粘膜に余裕を持たせる意味でも、さらに粘膜剥離を進めて上顎洞粘膜に余裕を持たせるようにすることで対応できる。

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穿孔時の対処法

穿孔時の対処法としては、先ほど述べたように穿孔部周囲の剥離を十分に行い、穿孔部になるべくストレスをかけないようにする。

穿孔が

  • 5mm以下の場合には→吸収性膜(サージセルやコラテープ)にて閉鎖
  • 5mm以上の場合には→Bony window近くに小孔を開け、5-0ナイロン糸にて縫合し、バイオメンドの端をBony window近くに固定し穿孔部を被覆
  • 穿孔部の修復が不可能と判断した場合には、手術を中止しBony window部はバイオメンド等で閉鎖し、上顎洞粘膜と剥離した粘膜骨膜弁との癒着を防ぐ

以上の対応ができない術者に関しては、サイナスリフトの手技自体を行うべきではないと考える。昨今、見よう見まねで十分な口腔外科的知識や手技を伴わない術者がサイナスリフトを行い患者さんに迷惑をかけている症例が見られ、悲しい限りである。

そのような術者はサイナスリフトを行ってはいけない。

 

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