今後の骨造成の展望(2016)

2016年に東京医科歯科大学から発表された手術不要の注射による顎骨造成法に関する研究は、骨造成の新しい展開であると考えます。

従来の骨形成因子 BMP-2にOP3-4( 破骨細胞分化因子 RANKL の作用を阻害)を合わせて骨造成が著しく生じることを報告しています。このような研究成果によってより低侵襲な骨造成の時代が来ることに期待します。

東京医科歯科大学のPress Release2016.3.より

「 世界初、手術が不要の注射による簡便な顎骨造成をマウスで成功 」 ― 歯科医が夢見る患者にやさしい治療法開発への期待 ―

【ポイント】

  • ペプチドと骨形成因子を組み合わせた薬剤の注射により、手術を行わずに顎の骨を増やす方法をマウスで開発しました。
  • 注射した部位において骨形成に関与する遺伝子の発現誘導と骨造成を確認しました。
  • このような患者に負担の少ない骨造成法は、将来、歯科臨床への応用が期待されます。

 

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【研究の背景】

  • 歯が抜けたり、合わない入れ歯を長年つけていたりすると顎の骨は少なくなり、安定したかみ合わせが得られません。顎の骨が少ないと、人工歯根も植えられません。また、口蓋裂など生まれつき骨が足りない小児には骨の移植が必要です。このため、歯科臨床では顎の骨を造成する方法が数多く開発されてきましたが、いまだに手術をせずに骨造成を促進する方法はありません。
  • 局所の骨を造成する薬として骨形成因子 BMP-2 (Bone morphogenetic protein-2)があげられますが、この因子単独で骨が十分作られる用量を使用すると、ヒト口腔内では歯肉が腫脹するなどの副作用を引き起こすことが指摘されています。このため、BMP-2 の使用量を抑えて、骨を効率的に誘導できる骨形成促進薬が求められています。
  • 研究グループでは、これまでに破骨細胞分化因子 RANKL の作用を阻害する分子量 1400 ほどのペプチド OP3-4が骨形成を促進する作用を示すことを明らかにしてきました。また、薬剤を注射した局所に留めておく目的で既に臨床応用されているゼラチンハイドロゲルを用いた材料開発も理工学系の研究者と共同で行ってきました。

【研究成果の概要】

  • 本研究では粒子状のゼラチンハイドロゲルを用いて BMP-2 とペプチド OP3-4 とを組み合わせた薬剤をマウスの上あごに注射しました。4週間後、注射した部位には明らかな骨造成が認められました。注射1週間後からすでに、骨形成関連遺伝子の発現が亢進していました。
  • 副作用を考慮し、使用量を抑えた BMP-2 のみでは十分な顎の骨は造成されませんでした。
  • ところが、この少量の BMP-2 にペプチド OP3-4 を併用すると、骨の量は倍以上に増えました。BMP-2はヒトの口腔内に使用すると歯肉が腫れるなど副作用が報告されている。本研究では、十分な量の BMP-2 は使用せず、ペプチド OP3-4を組み合わせた薬剤を注射することにより、倍以上の新生骨を得ることに成功した。

上のパネルは、BMP-2 を含む薬剤を投与した場合であり、下のパネルは BMP-2 にペプチドOP3-4 を併用した場合である。

左図の黒い部分が骨を示し、右図の白い矢頭で囲まれた黄色部分が新生骨を示す。

【研究成果の意義】

  • 本研究は、骨が欲しい部位に注射するだけで骨を作ることが可能なことをマウスモデルで示しました。この非侵襲的な顎骨造成方法が示されたことにより、現状では手術をする方法以外には骨を増やすことができなかった歯科臨床において、患者にやさしく骨を増やすことができる技術開発に向けて大きく前進した大変意義深い成果と言えます。
  • 顎の骨が少なく入れ歯が安定しない場合、顎の骨が少なくインプラントが植えられない場合、顎の骨が少なく移植しなければならない場合などの症例において、多くの臨床現場に応用可能な骨造成方法の開発が期待されます。

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