口腔癌の手術療法

. 原発巣の切除手術

①舌癌

舌癌は原発巣の大きさ,臨床型,浸潤の深さおよび周囲組織への進展により切除範囲が異なる。具体的には,口底浸潤,舌根浸潤,下顎骨浸潤の有無,程度による。原発巣の切除範囲が大きければ皮弁による再建手術が必要となる。

舌癌 T1N0, earlyT2N0症例は口内法による舌部分切除を行う。表在性の lateT2N0, T3N0は同様に口内法による舌部分切除を行う。lateT2, T3, T4は原発巣切除(舌部分切除,舌半側切除,舌(亜)全摘出など)に通常軟組織再建手術を必要とする。頸部リンパ節転移がある場合には,原発巣切除と頸部郭清を同時に行う。

a.舌の切除方法

① 舌部分切除:舌可動部の一部の切除,あるいは半側に満たない切除

② 舌可動部半側切除:舌可動部のみの半側切除。

③ 舌可動部(亜)全摘:舌可動部の半側を越えた(亜全摘),あるいは全部の切除。

④ 舌半側切除:舌根部を含めた半側切除。

⑤ 舌(亜)全摘:舌根部を含めた半側以上の切除(亜全摘),あるいは全部の切除。

②下顎歯肉癌

下顎歯肉癌は早期に下顎骨に浸潤し,骨破壊を呈する。特に下顎骨内に深く浸潤した場合は放射線治療が期待できず,高線量では放射線性骨壊死といった副作用も考慮する必要がある。また,抗腫瘍薬の骨への移行が悪いことから,外科的切除が基本となる。下顎骨内に進展した腫瘍は直接触知できないために手術範囲の設定において,パノラマ,頭部後頭前頭方向,顎骨斜位方向,咬合法,口腔内 X線写真やCT,MRなどの画像診断により,腫瘍の骨吸収の深達度,骨吸収型,周囲軟組織への進展状況を正確に把握し,治療計画を立てる必要がある。

 

下顎歯肉癌の切除方法

1)歯肉切除:gingivectomy 歯肉粘膜骨膜のみの切除で骨切除を行わない。

2)下顎辺縁切除:marginal mandibulectomy, marginal resection 下顎骨の辺縁(通常下顎骨下縁)を保存し,下顎骨体を離断しない部分切除。

3)下顎区域切除:segmental mandibulectomy, sectional mandibulectomy 下顎骨の一部を歯槽部から下縁まで連続的に切除し,下顎体が部分的に欠損する切除。

4)下顎半側切除:hemi-mandibulectomy 一側の関節突起を含めた(顎関節離断術)下顎骨の半側切除。

5)下顎亜全摘出:subtotal mandibulectomy(with/without condylar process) 下顎骨の半側を越える切除で,通常下顎枝から対側下顎枝の範囲以上の切除。 これに関節突起が温存された否かを追記する。

③口底癌

口底癌は正中型(前歯部相当)と側方型(臼歯部相当)に分けられ,多くは前方正中部に発症する。側方に進展すると,口底粘膜下が疎性結合組織であるため深部に浸潤しやすいことが特徴である。内方に進展すると舌下面,外方に進展すると下顎歯肉・歯槽部や下顎骨に浸潤をきたす。深部に進展するとオトガイ舌筋,舌骨舌筋,顎舌骨筋への浸潤をきたす。また,内舌筋(下縦舌筋,横舌筋,垂直舌筋など)への浸潤をきたしたり,舌根(中咽頭)へ進展する。ワルトン氏管周囲への浸潤や,舌深動脈,舌下動脈,舌神経,舌下神経周囲への浸潤を示す。頸部リンパ節転移は両側に起こりやすい。

口底癌のT1N0,earlyT2N0症例には口底部分切除(口内法)を行う。lateT2,T3,T4症例は原発巣切除(口底全切除)と頸部郭清手術を同時に行う場合がある。また,舌や下顎骨に浸潤したものでは,舌や下顎骨の合併切除を行う。

 

 

④頬粘膜癌

頬粘膜癌の外方進展は頬筋,皮下および皮膚浸潤である。内方進展は上・下顎歯肉,上・下顎骨浸潤。前方進展は口角。臼後部からの後方進展は粘膜下に沿って下顎骨・翼突下顎隙への浸潤を起こす。同様に,上方進展は上顎結節や翼口蓋窩へ至り,内方進展は軟口蓋,舌根への浸潤をきたす。

初期癌では頬粘膜切除手術あるいは放射線治療が行われる。T3,T4では頬粘膜切除,下顎骨合併切除,上顎骨合併切除,皮膚切除,あるいは臼後三角部より上・後方の拡大切除などがある。

 

 

⑤上顎歯肉癌

上顎歯肉癌は,下顎歯肉癌と比較して発生頻度は低く,硬口蓋癌はさらにその頻度は低いとされる。上顎歯肉癌(硬口蓋癌を含む)は,下顎歯肉癌と同様に,速やかに骨への浸潤をきたしやすい。外科的治療では,外向性の早期癌に対して骨膜を含めた局所切除がなされる場合もあるが,多くは口内法による上顎部分切除や上顎亜全摘出術が行われる。切除によって,上顎洞や鼻腔が開洞される場合が多い。上顎洞内に大きく進行した場合には,上顎洞癌に準じた上顎全摘出術や拡大上顎全摘出術が適応となる。欠損部に対しては審美的障害ならびに言語,摂食障害の点から,顎補綴、遊離組織移植による再建術が行われる。

上顎歯肉癌の切除方法

1)上顎骨部分切除:partial maxillectomy 上顎歯肉部,上顎洞内の一部,上顎洞正中側,固有鼻腔の一部など,上顎骨の一部を切除する。

2)上顎亜全摘出:subtotal maxillectomy 眼窩底のみを温存し上顎骨を切除する。

3)上顎全摘出:total maxillectomy 上顎骨のすべてをその周囲組織を含めて切除する。

4)拡大上顎全摘出:extended maxillectomy 上顎骨とともに,眼窩内容や頭蓋底を切除する。

 

ピックアップ記事

  1. 超音波骨切削機器を用いた歯根端切除術の利点・囊胞壁を損傷せずに囊胞壁の明示が可能・骨の切…
  2. ◎超音波骨切削機器による口腔外科領域低侵襲手術適応症例抜歯 下顎隆起除去術 インプラント関連…
  3. CTによる画像診断がインプラント外科にとって必須であることは前述したとおりであるが、もう一つの問題と…
歯科医院ホームページ作成
PAGE TOP
CLOSE
CLOSE