口唇炎

口唇炎とは

口唇炎とは、口唇の慢性的な炎症や亀裂、剥離などを伴う疾患。主な口唇炎の種類としては、アトピー性口唇炎、接触性口唇炎、剥離性口唇炎、肉芽腫性口唇炎がある。

一般的な原因

口唇の乾燥に加え、歯科疾患(嚢胞性疾患による肉芽腫性口唇炎)や歯科金属アレルギー、などが原因となることもある。

しかし、多くはアトピー性口唇炎や接触性口唇炎などアレルゲンが関与するもの。歯科用金属以外にも、口紅や乳液、美容クリームなどの化粧品や、洗顔料や歯磨き粉、リップクリームなどが原因で発症することもある。

その他にも日焼けが原因になる場合やビタミンB2・B6の欠乏(剥離性口唇炎)、小中学生の子どもでは舌なめずり(舌なめずり皮膚炎)の繰り返しも原因となる。


口唇炎の種類と解説

アトピー性口唇炎

いわゆるアトピー性皮膚炎と同じで、表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる、慢性に経過する炎症と掻痒をその病態とする湿疹・皮膚炎群の一疾患である。患者の多くはアトピー素因を持つ。日本皮膚科学会の診断基準は、1.かゆみ、2.特徴的な皮疹とその分布、3.慢性・反復性の経過で、3つすべて当てはまるものをいう。

原因は、不明であるが、口腔内の細菌叢表皮常在菌のバランスの乱れによる表皮の黄色ブドウ球菌異常増殖が原因となっている可能性もあるとの指摘や遺伝的要因(スト細胞、好酸球にIgE抗体を結合させるレセプターや、サイトカインのうちアレルギーの炎症に関与するものの遺伝子変化)、栄養要因などが挙げられている。

接触性口唇炎

接触性皮膚炎と同じように、一次性刺激接触性口唇炎とアレルギー性接触口唇炎に分類できると考える。一次制の場合には、原因物質の接触によって皮膚の炎症を誘発し、原因物質の毒性の強さによって、症状の強さが決まる。アレルギーは無関係なので、誰でも起こり得る。一方、アレルギー性接触皮膚炎の場合には、原因物質に触れると、皮膚の炎症細胞が感作され、次に、またその原因物質に接触することによって、皮膚の炎症細胞が活発に働き湿疹を誘発する。原因物質の毒性の強さと症状の強さは相関しない。掻痒を伴う発疹が、原因物質の接触した部分に出現するのが特徴で、発疹は水疱・紅斑・丘疹など湿疹の経過をたどる。

歯科金属アレルギーの場合、詰め物により慢性的な接触性口唇炎を起こすことがあるが、口内炎として出現する場合が多く、ニッケルなどが溶けだすことによる歯肉の炎症などを生じることが多い。一次刺激性接触口唇炎は油、化粧品など刺激の強い物質で起こり、アレルギー性接触口唇炎 は、化粧品・外用剤などの原因となる物質が皮膚に接触させることで、アレルギー反応が生じ発症するほか、植物の原因として、サクラソウ・菊・マンゴー・銀杏でも生じる。

剥離性口唇炎

剥離性口唇炎は,口唇表皮細胞のターンオーバーが急速であることで発症する。剥脱性皮膚炎の原因は不明であるが,アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,脂漏性皮膚炎,乾癬,毛孔性紅色粃糠疹などの皮膚疾患が先行したりすることがある。

肉芽腫性口唇炎

肉芽腫性口唇炎は、1945年にMiescher らによって初めて報告された疾患で、臨床的 には口唇の持続性浮腫性腫脹、組織学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とする。口唇や顔面腫脹に顔面神経麻痺、皺襞舌が加わり、二主徴以上を呈するものを、 Melkersson-Rosenthal syndrome(MRS)と呼び、肉芽腫性口唇炎をその不全型や部分症状とする見方もある。

肉芽腫性口唇炎の病因は、歯周病や扁桃炎などの口腔内病巣感染、金属アレルギー、 食物アレルギー、遺伝的素因の関与、自律神経機能異常からの循環障害、クローン病な どが示唆されており、これらの複 合的な因子が関与していると考えられる。

特に重要なのが口腔内病巣感染であり、過去の報告例の約半数で、根尖性歯周炎、根尖膿瘍、齲歯などの治療を行った後に本症が改善している。

病巣感染が関与する機序 としては、口唇の腫脹が罹患歯に近接している例が多いため、局所 ないし近傍の慢性化膿性病巣からのアレルギー反応により肉芽 臨床的には口唇の持続性浮腫性腫脹、組織学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とする肉芽腫性変化が起こるという説や根尖病巣によって神経・動静脈が圧迫、炎症の影響を受け、 その支配領域にある近傍の口唇に浮腫、肉芽腫が生じるという説が言われている。 次に考えられるのは、金属アレルギーで、歯科金属は口腔内で長時間唾曝されることでイオン化します。イオン化した歯科金属がアレルゲンとなり、遅延型アレルギー反応により肉芽腫を形成することが考えらる。その他、食物アレルギー、遺伝的素因、自律神経機能異常など関与が考えられる。

MRS 患者の一部に常染色体優性遺伝の家族内発症が認められており、肉芽腫性口唇炎をMRSの部分症状と捉える立場からは遺伝の関与が考えられます。


治療・予防

口唇炎は多くの場合、放置していても自然に回復する病気なので特に治療を行わないこともある。口唇炎の初期症状は、乾燥してカサカサし亀裂が入るなどで、患者さん自身が保湿剤などを塗って対応する場合が多いのが実情である。

アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎の場合、かゆみが強い時は抗ヒスタミン剤などの内服薬を服用し、症状が激しい時は一時的に副腎皮質ステロイド剤の外用薬やさらに難治の場合には、ステロイド剤の経口投与を考慮する。

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症例は剥離性口唇炎で肉芽腫性口唇炎のごとく、2-3日の腫脹もあったことから金属アレルギー検査を施行後、歯科金属のノンメタルへの置き換えを行い、症状の改善を見た。

原因不明と片付けるのではなく、肉芽腫性口唇炎の原因が根尖病巣であるように原因を追究しそれを診断治療することが重要である。その際に、このような口唇炎などは多因子であること、病巣を治療することで治癒すればそれが原因であったとする除外診断になることを患者さんに十分に説明することが重要となる。

 

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