口腔領域・隙への注射針の迷入

症例は、上顎第三大臼歯の抜歯の際に注射針を破折させて、組織隙に迷入させたものを内視鏡と3Dプリンターを用いたシミュレーションで摘出したものである。

何かの勉強会で、開業医の先生から注射針を破折、迷入させたことがあるが、患者さんに説明せずに、過ごしているという話を聞いたことがあるが医療人としてあってはならない行為である。

組織隙に迷入した針を見つけ出すことは、非常に困難で、針は固いので蝕知できるとお壊れるかもしれないが、全く蝕知できないのが現実である。舌の手術で縫合針を見失いそうになった経験が私自身にもあるが、全く蝕知できず、X線テレビで撮影しながら摘出したことがある。このようなことを考えると、いつ何時にどのようなことが生じてもよいように注射針は根元まで入れず、針の一部が見えているようにすること、縫合針を持針器やピンセットから離すことがないようにすることが、その予防策になる。

 

患者はXX歳の男性で,某歯科医院にて右側上顎智歯抜歯時に33Gの歯科用注射針が破折し、右側上顎後方粘膜下に迷入したため、紹介来院した。

 

初診時、右側上顎智歯は抜歯されており、抜歯窩内に破折注射針は認めず、周囲にも針様構造物は触知しなかった。

紹介医にて撮影したパノラマX線写真所見及び破折時の状況より、針は右側上顎結節より頭側深部にあり、直視が困難なこと、紹介医でも除去を試みたが除去できなかったことから、即日の異物除去術を避け、消炎後に施行することとし、その旨を患者に説明し、さらに術後の腫脹が生じ始めてきたことから、内服抗菌薬を処方し帰宅させた。

異物の自然排出の期待もあり、しばらく経過をみたが、自然排出の所見がないため、患者と十分な相談の上、除去術を予定した。

注射針の3次元的な迷入位置を確認するため単純CTを撮影したところ、右側上顎骨後壁に沿って右側外側翼突筋と右側側頭筋に囲まれた咀嚼筋間隙で、上顎洞後壁に注射針と思われる点状のhigh-densityな部分を認めた。

これらのDICOMデータをもとに、三次元石膏模型を作製したところ、模型上で注射針は右側上顎骨後壁に沿って迷入しており、右側上顎第二大臼歯歯頸部より約20mm、咬合平面に対して約30度、頭側に迷入していることがわかり、この解析をもとに手術を施行した。

手術は、粘膜骨膜弁を形成後、硬性内視鏡を近心から挿入し、3次元石膏模型の際とほぼ一致した角度で、骨膜および粘膜を慎重に剥離し、内視鏡画像内に注射針の破折端部を認めたため鉗子を用いて注射針を把持し、除去した。除去後、創部をよく洗浄し、閉鎖創とした。

除去した注射針の長さは約12mmで、術後の異常出血や神経障害等も認めず経過良好でした

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