骨幅のない上顎小臼歯部にエクスパンジョンにより Regular size の直径3.7mmインプラントを埋入した症例
伝えたいポイント
- エクスパンジョン後、フリーハンドで入れることのリスク
- 上記を少しでも軽減するための工夫
- 今後の展望
- レギュラーサイズを選択する理由
左側上顎第一小臼歯(#24)のエクスパンジョン症例
(40歳代 女性)
左側上顎第一小臼歯の根尖性歯周炎で他院ですでに抜歯がなされていた。上顎洞までの距離は問題なかったが、骨幅はせまく直径3.4㎜を選択することも考えたが、
- 小臼歯であり、側方運動に関しての重要な歯牙であること
- 上部構造を固定するスクリューの強度
- サブジンジバルプロファイル
の点からエクスパンジョンを行い、直径3.7mmを埋入することを選択した。
患者さんは、抜歯インプラント手術後約4か月でインプラント補綴により十分な咬合関係が回復できたと笑顔で喜んでいただけました。
LANDmarker(iCAT)の画像。
最終補綴をイメージしワックスアップしたものを画像に取り込み埋入位置を計画。
埋入部位のCT画像。φ3.7mmではスペースがやや狭く、また唇側の骨幅が非常に狭くなることからエクスパンジョンを併用した埋入を計画した。
インプラントの長さはL14.00mmを選択し、上顎洞底の硬い骨に当てることでバイコーティカルな初期固定を得られるようにした。
左側第一小臼歯部にLandmark Guide マルチガイド(iCAT)を装着して直径3.4mmのサーキュレーションメスで歯肉の除去を行い、続いて2mmのドリルで予定された深度までインプラント窩の形成を行う。
- マルチガイドを用いれば、ほぼぶれなく直径3.4mmのサーキュレーションメスでの切開は可能である。直径3.7mはできない。最終的にはエクスパンジョン症例で直径3.7mmあるいは直径4.2mmまでインプラント埋入ができる外科キットの開発が必要である。
BOS BONE SPREADER
少ない衝撃で骨を押し拡げながら「脆弱骨の緻密化」・「骨幅の拡幅」を行う際に用いる。
エクスパンジョンを行い、FINESIA HA Tapered type 直径3.7mm/長さ14mm(京セラ)を埋入する計画を立てた。BOSボーンスプレッダー(京セラ)で2mmインプラント形成窩を押し広げることでインプラント埋入に必要な窩洞を形成する。骨の幅がないときに有効となる。
【Step.01】
BOSボーンスプレッダー#1先端系1.1mm・ボディ部2.5mm
【Step.02】
BOSボーンスプレッダー#2先端系1.4mm・ボディ部2.9mm
手指でのエクスパンジョンが困難になれば、トルクレンチを用いて押し広げることになる。
- 隣在歯にボーンスプレッダーが干渉することがあるのでその場合には、エクステンションをつけて干渉を回避する。
BOSボーンスプレッダーによるインプラント埋入窩の形成後、位置、方向、深さがきちんと形成されているか否かを3mmのマルチドリルで確認する。
- エクスパンジョンは2mmのインプラント窩形成後、例えば、口蓋側の骨が固く頬側の骨が柔らかい場合には、頬側にずれることがあるのは容易に予測できる。このずれを補正するために3mmのドリルで骨の抵抗感などから正しいインプラント窩が形成されているのか否かを確認する。
- 右側ではフリーハンドでタップを切っているが、これも含めてガイド下で従来は行われるべきであり、新しい外科のディバイスを京セラと開発中である。
インプラント埋入窩形成後、インプラントの埋入を行う。タップを切っており、ここからずれることはないと思われるが、完全を期すためにはガイドによる埋入が必要である。ディバイスの開発を待ちたい。
インプラントタイプ及びサイズ:FINESIA HA Tapered type 直径3.7mm/長さ14mm(京セラ)
ヒーリングアバットメントの装着後、縫合して手術とした。
手術内容:左側上顎第一小臼歯(#24)インプラント埋入術 エクスパンジョン症例
埋入インプラント:F 3.7X14
埋入トルク:25N/cm
麻酔:笑気鎮静・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 3.6ml
手術時間:14分
埋入後、panorama X-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。隣在歯との距離の関係も含めて、正確な位置に埋入されている。
印象採得時のDental X-Pを示す。プラットフォームスウィッチングの性格を持つFINESIAが理想的に埋入されている。
最終補綴物装着時のパノラマならびにDental X-Pプラットフォームスウィッチングの方のところまで骨がのっており理想的な埋入と言える。
最終補綴物装着時の口腔内所見。