上顎左側犬歯の歯根破折による抜歯即時症例(30歳代 男性)
数年前に根尖性歯周炎で他院で抜歯され放置していた。ブリッジは健全な歯を削るために嫌で、インプラントを希望したが歯のスペースがなく矯正治療を勧められた。歯がないのはいやだが、矯正治療をしようとは思わず、どうにかならないかと当クリニックに相談に来られました。スペースの問題(近遠心的な幅が4mm前後)からシミュレーションを行い、インプラントの可否を決定し、最終的にインプラント治療が可能で見た目も改善して喜んでいただけ症例です。
LANDmarker(iCAT)の画像。
非常に狭いスペースだが、φ3.4mmであれば埋入可能であると判断。
頬舌の幅はしっかりあり、上部構造の基底結節にアクセスホールがくるように計画。
ただし、φ3.4mmの場合14mmの長さでは、この時点では(現在、開発中)京セラのサージカルガイドにはシステムがないため、Landmark Guide(iCAT)のマルチガイドを作製することになった。
LANDmarker(iCAT)にワックスアップを取り込み、アクセスホールの位置も確認。
補綴主導のインプラントとしての問題もないことを確認している。
左側犬歯への浸潤麻酔の所見。表面麻酔は必須で、注射針は33Gを用いる。
Landmark Guide(iCAT)のマルチガイドを用いて直径3.4mm インプラント用のサーキュレーションメスで固有歯肉に丸く切開を行ったところである。マルチガイドのガイドの径が4.0mmであることから、直径3.4mm用のサーキュレーションメスが用いることができる。
サーキュレーションメスで固有歯肉に行った切開により固有歯肉を除去しところである。骨面が観察できる。
本症例にて、FINESIA Bone Level HA Tapered type(京セラ)直径3.4mm/長さ14mmのインプラント体を埋入する計画を立てた。
Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を用い、2mmの長さMのパイロットドリルstep1でドリリングを行っている。サージカルガイドにはドリルキーが装着されている。
ガイドを手指できちんと抑えて固定することが重要である。
step1ドリリング時。メモリを確認しながら慎重にドリリングを行っている。
Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を用い、2step(直径3mm)でドリリングし拡大形成を行う。ガイドに沿ってドリリングされているのがわかる。ここで、ドリルとガイドがこすれるような音がした場合には、角度がずれていることが考えられる。スムースにドリリングできることが重要である。
インプラント埋入窩形成後、インプラントの埋入を行う。
インプラント埋入サイズ:FINESIA Bone Level HA Tapered type(京セラ)直径3.4mm/長さ14mm
インプラント体がガイドに誘導されながら適切な位置・方向で埋入される。
サージカルガイドを外してインプラントの埋入位置、深度などの確認を行う。予定された位置、深さに埋入されている。出血もほとんどない。
ヒーリングアバットメント装着時の所見。4mmのヒーリングアバットメントが選択されている。
ヒーリングアバットメントの装着後の所見。止血にも貢献していると思われ、出血はない。
手術内容:#23 インプラント埋入術
トルク:25N/cm
麻酔:笑気鎮静・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 3.0ml
手術時間:12分
埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。
印象採得時と最終補綴物装着時の確認Dental X-P
「歯科技工所の中田デンタルのコメント」
立会い時に形態を周りの歯と同じくらいの長さにしてほしいとの希望を考慮して製作。下顎犬歯との対合関係とガイドによるチッピングのリスクを考え素材はe-maxを選択した。
最終補綴物装着時の口腔内所見
患者さんはブリッジではなく、インプラント治療を受けられたことを喜んでおられ、見た目にも良く、噛めるようになったと嬉しそうに言われています。
手術も短時間で終わり、3か月で上部構造(歯の部分)が入ったことでも満足していただいた。