リッジ(ソケット)プリザベーション

リッジ(ソケット)プリザベーションが大切である理由

抜歯後の硬組織の吸収が大きく(抜歯後6ヶ月の平均吸収量は、水平的に3.79±0.23mm、垂直的に1.24±0.11mmであることが報告されています1)

抜歯後、インプラント治療が計画されているにもかかわらず何も行わなかった場合には、上顎臼歯部ではサイナスリフト、上顎前歯部や下顎臼歯部においてもGBRのような大規模な硬組織増生術が必要になり、患者さんへの肉体的・精神的な負担が増すことになります。また、リッジプリザベーションとそのような骨増生法を比較するとそれを行う術者の側にも「術式の難度が増す」「失敗のリスクが増す」などの可能性があることは言うまでもありません。

リッジプリザベーションの大きな目的は、抜歯と同時にリッジプリザベーションを行うことで歯槽骨の吸収を最小限に抑え、その後の難易度が高い骨造成処置を回避することにあるといえます2,3,4)

 

この研究では、上顎前歯において唇側の骨が厚いと分類される歯槽骨の患者さんを抜歯した場合には唇側粘膜の厚みが術前0.8mmが術後(8週後)に0.7mmと術前と変わらなく安定しているのに対して、唇側骨が薄いと分類される患者さんでは、術前の唇側粘膜0.7mmが術後(8週後)には5.3mmと7.5倍の厚みに増したと報告されています5)

1) Tan WL et al. A systematic review of post-extractional alveolar hard and soft tissue dimensional changes in humans. Clin Oral Implants Ren 2012;23 Suppl 5:1-21

2) Jung RE et al. Alveolar ridge preservation in the esthetic zone. Periodontol 2000 2018: 165-175

3) Vignoletti F et al. Surgical protocols for ridge preservation after teeth extraction. A systematic review. Clin Oral Implants Res 2012: 22-28

4) Park SH et al Clinical benefits of ridge preservation for implant placement compared to natural healing in maxillary teeth: retrospective study. J Clin Periodontol 2020: 382-391

5) Chappuis V et al. Soft tissue alterations in esthetic postextraction sites: a 3D analysis. J Dent Res 2015: 187-193

 


リッジプリザベーションにおける抜歯窩の初期閉鎖の必要性

抜歯後、開放創とするか閉鎖創とするかの問題に関しては、歯槽骨の吸収抑制作用や新生骨の組成に差はないと報告されています。それどころか、開放創の方が、

  • 歯肉-歯槽粘膜境(MGJ)の位置が変わらない。
  • 角化組織幅が有意に保存される。
  • 術後疼痛などの不快症状が有意に少ない。などの利点があると報告されています6)

6) Engler-Hamm D et al. Ridge preservation using a composite bone graft and a bioabsorbable membrane with and without primary wound closure: a comparative clinical trial. J Periodontol 2011: 377-387

 


リッジプリザベーションに用いる材料と術式の選択に関して

リッジプリザベーションに用いる材料や術式に関しては、科学的な根拠を持ち、コンセンサスが得られている術式は存在しないので、以下にいくつかの論文を引用し、提示いたします。

 

この報告では、40名の患者に、抜歯のみで自然治癒群、3つの異なるリッジプリザベーションをランダム割付て検討しています。施術直後と6ヶ月後に硬組織の形態変化をCBCTで評価した結果、β-TCP群は、自然治癒群と比較して骨の高さ、幅共に吸収が大きい傾向。

Bio-Oss Collagenを用いた両群では、自然治癒群と比較して、骨の高さ、幅ともに吸収が小さい傾向

Bio-Oss Collagenを用いた両群の骨吸収率は、β-TCP群よりも有意に小さい傾向を示す

と報告しています7)

この論文にあるように、Bio-oss Collagen は軟組織の形態保存という観点で、リッジプリザベーションは有効ですが、どのような材料を用いたとしても歯槽堤の吸収は100%抑制できるわけではなく、最大でも残存組織量は80〜85%程度であり8)、高度な審美性が求められる部位では、追加の増生が必要になることも想定しておかなければならないと考えます。

7) Jung RE at al. Radiographic evaluation of different techniques for ridge reservation after tooth extraction : a randomized controlled clinical trial. J Clin Periondontol 2013: 90-98

8) Thoma DS et al. Explorative randomized controlled study comparing soft tissue thickness, contour change and soft tissue handling of two ridge preservation techniques and spontaneous healing two months after tooth extraction. Clin Oral Implants Res2020

このBio-Oss CollagenとBio-Ossの審美領域におけるリッジプリザベーションの効果を比較した報告では、歯槽堤の形態維持に関して両者の結果は近似し有意差はなく、違いは操作性のみと考えられると報告しています9,10)

9) Sapata VM et al. Deproteinized bovine bone mineral is non-inferior to deproteinized bovine bone mineral with 10% collagen in maintaining the soft tissue contour  post-extraction: a randomized trial. Clin Implants Res 2020: 294-301

10) Llanos AH et al. Comparison between two bone substitutes for alveolar ridge preservation after tooth extraction: cone beam computed tomographic results of a non-inferiority randomized control trial. J Clin Periodontol 2019: 373-381

 


非吸収性d-PTFEメンブレンを用いたリッジプリザベーション

非吸収性d-PTFEメンブレンを用いたリッジプリザベーションも非常に有効な方法であると考えています。非吸収性d-PTFEメンブレン(Cytoplast)は開放創で用いますが、その理由は、このメンブレンが、細菌が侵入できないほどの小孔(0.2μm)を有しており、4〜6週間程度、感染を引き起こさないことで有効となるとされています11,12,13)

【著書】小田ら:正しい臨床決断をするためのエビデンス・ベースト・インプラントロジー.クインテッセンス出版2020からの引用

 

最大、8週間オープンメンブレンを口腔内に設置して、その後除去を行いますが、骨補填材の骨化には通常3〜4ヶ月必要であり、骨欠損部が大きい場合には6ヶ月必要であること14)、メンブレン下にどのような人工骨材料を使用するかによって骨化も変化してくることから今後の検討が必要と考えます。

加えて、唇側骨に大きな吸収を生じている部位に対するオープンメンブレンアプローチによるリッジプリザベーションの効果を抜歯窩の1壁以上に3mmを超える骨欠損を有する34名の患者を対象に、リッジプリザベーションと自然治癒をランダム割付し、4ヶ月後にCBCTで骨の形態変化を計測した報告によると

  • HW-1の硬組織の水平的な変化量はリッジプリザベーション群で有に少なかった。
  • 頬側の垂直的な変化量はリッジプリザベーション群で少ない傾向にあったが、その差は有意ではなかった。
  • インプラント埋入時の追加のGBRの頻度はリッジプリザベーション群で有意に低かった。としています15)

11) Greenstein G et al. Utilization of d-PTFE barries for post-extraction bone regeneration in preparation for dental implants. Compend Contin Educ Dent 2015: 465-473

12) Ronda M et al. Expanded vs Dense polytetrafluoroethylene membranes in vertical ridge augmentation around dental implants: a prospective randomized controlled clinical trail Clin Oral Implants Res 2014: 859-866

13) Soldatos NK et al. Limitations and options using resorbable versus nonresorbable membranes for successful guided bone regeneration. Quintessence Int 2017: 131-147

14) Bartee BK et al. Membrane-assisted surgical technique. J Oral Implantol 2001: 194-197

15) Sun DJ et al. Alveolar ridge preservation using an open membrane approach for socket with bone deficiency: a randomized controlled clinical trial. Clin Implant Dent Relat Res 2019: 175-182

最近では、骨造成のケースでTiハニカムメンブレンの応用が有効であるとされており、今後リッジプリザベーションにおいても応用されると考えられます。その特徴としては、メンブレンの小孔が20μmであるため、骨再生に必要な血流や細胞などの透過性に優れている。膜の強度が高く変形や破断しにくく、非常に薄膜のためスペースメイキングに優れる。メンブレン小孔内に硬・軟組織が絡まないため(上皮細胞の侵入が観られない)メンブレンを容易に除去できる。などがあげられます。

 


角化歯肉の退縮など軟組織に問題のある場合、歯槽骨の吸収など硬組織に問題がある場合の対応

抜歯予定歯の歯肉が退縮している場合や角化組織を喪失している場合には、骨補填やCTGを用いて喪失している軟組織の量や質を回復させることを目的としたソフトティッシュプリザベーションを行いますが、この場合に硬組織に骨欠損などがあるか否かが問題になります。骨には大きな問題がない場合、術後6〜8週でインプラント埋入術への移行が可能となります。抜歯予定部位の唇側骨の吸収量が大きく、抜歯後2ヶ月以内にインプラントを埋入できない場合な唇側骨板の吸収量が想定される場合には、リッジプリザベーションを行うことになります。このリッジプリザベーションで用いられるこれらの材料(自家組織やコラーゲンマトリックス、コラーゲンマトリックス、d-PTFEメンブレンなど)に関して、どの材料が優れているのかは現在のところコンセンサスは得られていません16,17)

Jung RE et al. Alveolar ridge preservation in the esthetic zone. Periodontol 2000 2018: 165-175より引用

【著書】小田ら:正しい臨床決断をするためのエビデンス・ベースト・インプラントロジー.クインテッセンス出版2020からの引用

 

16) Vignoletti F et al. Surgical protocols for ridge preservation after tooth extraction. A systematic review. Clin Oral Implants Res 2012: 22-38

17) Mardas N et al. Does ridge preservation following tooth extraction improve implant treatment outcomes: a systematic review. Clin Oral Implants Res 2015: 180-201

 

 

 

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