下顎抜歯即時埋入術に対するインプラントシミュレーション(2020.5)

下顎における抜歯即時埋入インプラントの症例は、症例自体が少なく、あったとしても小臼歯部か、残根、乳臼歯の残存などであり、症例も限られる。

上顎の前歯とは異なり、あえて抜歯即時埋入を行わないといけない症例はないと言っても過言ではない。ただ、先述したような症例では、大きな問題もなく抜歯即時埋入ができることも事実であり、外科的手術の回数を減らすという意味では選択してもよいのではないかかと考える。

 

【Case 2】

右側下顎第2小臼歯(#45)症例

右側下顎第2小臼歯のシミュレーション症例である。歯根破折があり抜歯の適応と考え、頬側の骨吸収ならびに固有歯肉の変化をできれば避ける意味で、抜歯即時埋入を計画した。

シミュレーションでは、細側の骨が抜歯後、どの程度残存するかが不安要素としてはあるが、ある程度の深さで埋入し、場合によっては骨造成、GBRかオープンメンブレンの準備をしておけばよいかと考える。抜歯に際しては愛護的な抜歯が重要になる。

アクセスホールの位置は、ほぼ理想的な位置に設定されるため、スクリューリテインで対応する。抜歯後、頬側の骨が、若干陥凹するが、抜歯時には、固有歯肉が周囲に存在することから、メリットはあると考える。既存の骨内に埋入するために、時に舌側で骨縁よりも深くなるが、頬側に骨がない場合には骨補填材を抜歯窩から入れるか、切開して骨補填を行い、オープンメンブレンで対応することも考える。

顎骨ならびに歯槽骨の形態と最終補綴物のエマージェンスプロファイルなどから直径4.2mm 長さ10㎜のインプラントを選択し、やや深い位置に埋入位置を設定した。このインプラントの埋入位置で頬側の骨が抜歯後、どれだけ温存されるかにより、その後の骨補填など処置が変わるので、準備をしておく必要がある。近遠心的には隣接歯の歯根との関係を考慮しながら埋入位置を設定した。

 


 

【Case 1】

左側第1大臼歯(#36)症例

左側下顎第1大臼歯のシミュレーション症例である。残根状態で抜歯の適応であり、固有歯肉を維持することを考えると、抜歯即時埋入がよりよいのではないかと考えた。

シミュレーションでは、細側の骨の抜歯後の骨形態変化もある程度、予測できることから、シミュレーションの位置にある程度の深さで埋入し、場合によっては骨造成、GBRかオープンメンブレンの準備をしておけばよいかと考える。抜歯に際しては愛護的な抜歯が重要になる。

アクセスホールの位置は、咬合面に位置に設定されるため、スクリューリテインで対応する。抜歯していないために、頬側の骨の吸収や固有歯肉が温存されており、インプラント埋入後の新プラント周囲の固有歯肉は維持できると考える。インプラント体は既存の骨内に埋入するために、時に舌側で骨縁よりもやや深くなるが、初期固定などは問題ないと考える。埋入後、頬側に骨がない場合には骨補填材を抜歯窩から入れるか、切開して骨補填を行い、オープンメンブレンなどで対応することも考え、準備を行う。

顎骨ならびに歯槽骨の形態と最終補綴物のエマージェンスプロファイルなどから直径4.7mm 長さ10㎜のインプラントを選択し、下顎管との位置関係も考慮し、埋入位置を決定した。このインプラントの埋入位置で頬側の骨が抜歯後、どれだけ温存されるかにより、その後の処置が変わるので、準備をしておく必要がある。近遠心的には隣接歯の歯根との関係を考慮しながら埋入位置を設定した。

 

 

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