インプラント周囲炎に対する非外科的治療

【Q】

インプラント周囲炎に対する非外科的治療にはどのようなものがありますか?

非外科的治療は、CIST(Cumulative Interceptive Supportive Therapy)で提唱されている療法で行う1)。すなはち、

  • デブライドメント
  • 殺菌洗浄
  • 抗菌的光線力学療法a-PDT
  • 抗菌剤療法を行い、これらを様々な治療を組み合わせて試みる。そして、少しでも改善傾向が見られれば継続する。改善が見られなければ外科的治療に移行する

1) A Mombelli , N P Lang. Clinical parameters for the evaluation of dental implants. Periodontol 2000. 1994 Feb;4:81-6


 

 

■非外科的治療

デブライドメント(汚染を取り切る)

粘膜縁下におけるインプラント表面のバイオフィルムにはエア・アブレーション、純チタン製のハンドスケーラーや超音波スケーラーを使い滑沢化を行う。

 

殺菌洗浄

デブライドメントが終わった後、インプラント周囲ポケット内の殺菌洗浄を行う。使用薬剤 リステリンはバイオフィルム形成抑制、炎症抑制効果など有効性と安全性が確認されている2,3)。さらに、ノンアルコールタイプのリステリンでも従来のリステリンと比較して効果に差ないと報告されている4)ことから、ノンアルコールタイプのものが推奨される。

 

抗菌的光線力学療法a-PDT

光線力学療法は光感受性物質を細菌に取り込ませた状態で光照射をして、活性酵素を発生させ細菌を破壊する療法である。

利点としては

  1. 痛みの無い低侵襲
  2. 細菌以外にウイルスや真菌にも有効
  3. 耐性菌を生み出さず抗生物質耐性菌に有効
  4. 全身疾患有する患者や妊婦などに使用可能
  5. 抗菌剤などの副作用が無い
  6. 細菌の酵素を不活化することで、炎症反応を抑制=歯周組織の破壊を抑制
  7. 自然免疫である好中球に働きかけ、遊走・集積を促進

などがあげられる5,6,7)

光滅菌に関しては、以前より赤色光を使用していたが、近年、青色光の研究が進み、歯周病原菌であるP.gingivalisなどは青色光を吸収しやすい酵素(プロトポリフェリンを含んでいることから、光感受性物質無しでも青色光照射で酵素群発現抑制や細菌増殖抑制が起こることが報告されている8)。経過良好だった照射回数は平均7.3回、照射時間3〜5分、照射間隔1〜4週に一回との報告がある8)

 

抗菌剤療法

抗菌剤の局所投与

デブライドメント、殺菌洗浄、抗菌的光線力学療法を行い効果がない場合、さらに局所的な抗菌剤の投与として、インプラント周囲のポケットに塩酸ミノサイクリンペーストを注入する。

通常1週間に1回の間隔で計4回注入する。

抗菌剤の全身投与

歯周病治療に使用されている合成ペニシリン系、テトラサイクリン系、マクロライド系抗菌剤を使用する。

近年使用されているマクロライド系のアジスロマイシンは、利点として、

  1. グラム陰性菌(大半の歯周病菌)への抗菌活性が高い
  2. 好中球に取り込まれ炎症部位に移行し効果を発揮する
  3. バイオフィルム合成抑制、分解作用

などがあり、よって歯周病やインプラント周囲炎に対して高い効果があるとされている9)

 

2)C H Charles , N C Sharma, H J Galustians, J Qaqish, J A McGuire, J W Vincent. Comparative efficacy of an antiseptic mouthrinse and an antiplaque/antigingivitis dentifrice. A six-month clinical trial. J Am Dent Assoc. 2001 May;132(5):670-5.

3)N Sharma , C H Charles, M C Lynch, J Qaqish, J A McGuire, J G Galustians, L D Kumar. Adjunctive benefit of an essential oil-containing mouthrinse in reducing plaque and gingivitis in patients who brush and floss regularly: a six-month study. J Am Dent Assoc. 2004 Apr;135(4):496-504.

4)竹中 彰治, 大墨 竜也, 若松 里佳, 寺尾 豊, 大島 勇人, 興地 隆史. アルコールフリー洗口液Listerine ZeroのStreptococcus mutansバイオフィルムに対する浸透・殺菌効果. 日本歯科保存学雑誌. 2013 年 56 巻 2 号 p. 105-112

5) N Kömerik 1, M Wilson, S Poole. The effect of photodynamic action on two virulence factors of gram-negative bacteria. Photochem Photobiol. 2000 Nov;72(5):676-80.

6)Masamitsu Tanaka et al. Photodynamic therapy can induce a protective innate immune response against murine bacterial arthritis via neutrophil accumulation. PLoS One. 2012;7(6):e39823.

7)守本祐司 他. PDTにおける好中球の重要性. 日本レーザー医学会誌 34 133-137, 2013

8)竹内 康雄 他. 歯科治療における抗菌的光線力学治療の応用. 日本レーザー医学会誌 Vol. 38 (2018), No. 4

9)奥田克爾. バイオフィルムと全身疾患— 薬剤耐性口腔内バイオフィルム感染症への対応. 日本口腔外科学会. 2018; 38: 457-470

 

 

 

 

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