サイナスリフト手術に関するQ&A

目次

  1. ソケットリフトにおけるWater lift techniqueとOsteotome techniqueどちらが有効か?
  2. 上顎洞挙上術での同時埋入と異時埋入はどのように判断していますか?
  3. サイナスリフトにおける Tissue LevelとBone levelの選択はどのようにしていますか?
  4. サイナスリフトの異時埋入を計画した場合、インプラントの埋入まで、どれくらいの待機期間をおけば良いと考えますか?
  5. 骨補填材料の種類と上顎洞での吸収期間はどのように報告されていますか?
  6. サイナスリフトにおける、インプラントの直径、長さの選択はどのように考えたら良いですか?
  7. 上顎臼歯部で、サイナスリフト、ソケットリフトを伴うインプラントを埋入した際に、インプラントの長径によって、補綴を単独あるいは連結するかどうかの基準はありますか?
  8. 上顎第二大臼歯のサイナスリフトを伴うインプラント埋入でのラテラルアプローチの骨窓の設計についてどのようにすればよいでしょうか?
  9. サイナスリフトの骨窓はのどのように設計すればよいですか?

 


 

【Q】ソケットリフトにおけるWater lift techniqueとOsteotome techniqueどちらが有効か?

【A】
クレスト側からのWater liftテクニックの場合、最低2mmの既存骨高径でも12mm-15mmの挙上が可能であると文献で示されています1)。また、一般的なソケットリフトの場合にWater lift テクニックでのシュナイダー膜の穿孔は0-2.9%との報告を見ますが2)、それに対してOsteotome テクニックでは4mm-5mmの挙上が可能であるものの、6mm-8mmあるいはそれ以上の挙上ではシュナイダー膜の穿孔が24%に起きると報告されています1)。
以上より、著者は、Water lift Techniqueのほうが有効であると考えます。

引用文献

  1. T. Bensaha: Evaluation of the capability of a new water lift system to reduce the risk of Schneiderian membrane perforation during sinus elevation. Int. J. Oral Maxillofac. Surg. 2011; 40: 815–820.
  2. Dae Y. Kim, BDS; Yusaku Itoh, BDS; Tae H. Kang, BDS: Evaluation of the Effectiveness of a Water Lift System in the Sinus Membrane-Lifting Operation as a Sinus Surgical Instrumentcid_292. Clinical Implant Dentistry and Related Research, Volume 14, Number 4, 2012

 


 

【Q】上顎洞挙上術での同時埋入と異時埋入はどのように判断していますか?

【A】
文献的には、既存骨も高径が2mm以下でサイナスリフトとインプラント埋入を同時に行う、いわゆる同時埋入時のインプラント残存率は88%を下回る結果であることが報告されています。また、インプラントの初期固定を得ることが困難な場合の対応や、オッセオインテグレーション獲得失敗のリスクや上顎洞内迷入のリスクも同時埋入のリスク要因になると考えられるため、一般的には異時埋入が推奨されています。

一方で、既存骨の高径が4mm以上ならば、ソケットリフト同時埋入(インプラント残存率93-100%)でもサイナスリフト同時埋入(既存骨高径4mmで96%、既存骨高径3mmで92%以上の残存率)でも可能であるとの報告があることから、同時埋入でも、問題ないと考えます)2)。以上の事から、既存骨高径3mm以下は異時埋入、3mm以上はサイナスリフト、4mm以上はサイナスリフトか、可能であればWater liftの同時埋入が妥当であると考えます。

ソケットリフトかサイナスリフトの選択では、術者の技術的な因子も大きくかかわってきますが、その一方で、サイナスリフトは明視野の手術であり、Water lift techniqueも含めてソケットリフトは暗視野(術野が見えない)の手術であることも考慮しないといけないと考えます。

さらにソケットリフトの洞粘膜挙上に関しては、どれだけの挙上が必要かが、選択するインプラントの長さによって影響を受けるため、その点もサイナスリフトかソケットリフトかの判断に影響を与えると思われます。


引用文献

(参考文献1から引用)

  1. Chao Y-L, Chen H-H, Mei C-C, Tu Y-K, Lu H-K. Meta-regression analysis of the initial bone height for predicting implant survival rates of two sinus elevation procedures. J Clin Periodontol 2010; 37: 456–465.
  2. Omar Regab, Karim M et al: Implant Survival in One-Stage Lateral versus Crestal Sinus Lift Procedures – A Systematic Review and Meta-Analysis. Indian Journal of Science and Technology 2017; 10(13)

 


 

【Q】サイナスリフトにおける Tissue LevelとBone levelの選択はどのようにしていますか?

【A】
一般に Tissue levelでは細菌の停滞の原因となり得るマイクロギャップが存在しないことから1)、インプラント周囲炎を惹起させにくく、Tissue levelを好んで使う先生が多くおられますが、カラー部が金属色のため、主に非審美領域での使用が望ましいことは周知のとおりです。サイナスリフトでは、このカラ-部の問題は少ないことから、Tissue Levelのインプラントを使用することに問題はないと思われます。

一方で、Tissue Levelインプラントの場合には、ガイデッドサージェリーを用いたインプラント埋入が困難、あるいはほぼ不可能であることから、この点では、Bone levelが選択されます。

一般的なインプラント治療の場合ですが「ボーンレベルとティッシュレベル歯科インプラントの放射線学的検討:システマティックレビュー」(2020年)では、BLグループとTLグループにおいて、骨吸収marginal bone loss、インプラントの残存率や臨床的アウトカムなどに有意な差はないと報告されており2)、他の文献でも補綴装置装着時から補綴装置装着後24ヶ月までBLとTLでは、同様の結果であり、しっかりとしたメインテナンスを行なっていれば両者は同等の経過ならびに予後であることが示唆されています3)。

さらに、TLとBLのISQ値, Removal torque値を比較した研究でも、両者に有意な差はないとされています4)。

骨造成を伴う同時埋入のサイナスリフトやソケットリフトにおいて重要なインプラントの初期固定はTLとBLに差がなく、主に骨質が有意に影響すると報告されていることから4)、サイナスリフトやソケットリフトにおいては、ガイデッドサージェリーを行うことを重視する場合はBL、フリーハンドでの埋入を選択する場合には、BLとTLどちらかを選択すればよいのではないかと考えます。

引用文献

(参考文献4から引用)

  1. Yuya Sasada, David L Cochran:Implant-Abutment Connections: A Review of Biologic Consequences and Peri-implantitis Implications. Int J Oral Maxillofac Implants. Nov/Dec 2017;32(6):1296-1307.
  2. Saverio Cosola, Simone Marconcini, Michela Boccuzzi ,Giovanni Battista Menchini Fabris, Ugo Covani, Miguel Peñarrocha-Diago and David Peñarrocha-Oltra: Radiological Outcomes of Bone-Level and Tissue-Level Dental Implants: Systematic Review. Int. J. Environ. Res. Public Health 2020, 17, 6920;
  3. Tiago T. Vianna, Tiago Taiete, Renato C.V. Casarin, Maria C.C. Giorgi, Flávio Henrique B. Aguiar, Karina G. Silvério, Francisco H. Nociti Júnior, Enilson A. Sallum, Márcio Z. Casati1: Evaluation of peri-implant marginal tissues around tissue-level and bone-level implants in patients with a history of chronic periodontitis. J Clin Periodontol. 2018;45:1255–1265.
  4. Sukumaran Anil, BDS, MDS, PhD Abdullah Alfarraj Aldosari, BDS, DMSc:Impact of Bone Quality and Implant Type on the Primary Stability: AnExperimental StudyUsingBovineBone. Journal of oral implantology Vol. XLI/No. Two/2015 144-148

 


 

【Q】サイナスリフトの異時埋入を計画した場合、インプラントの埋入まで、どれくらいの待機期間をおけば良いと考えますか?

【A】
サイナスリフトでの段階法(異時埋入)を選択される場合は、それぞれの填入した骨補填材の治癒期間を考慮することが重要と考えます。

骨形性能、骨誘導能と骨伝導能を有する自家骨の填入では治癒期間を4―6ヶ月としても良い結果が得られるとの報告がありますが, それに比べて人工骨や異種骨を填入する補填材として使用した場合、これらの人工骨には骨伝導能しかないので、治癒期間は6ヶ月以上に設定した方が良いと考えます1)2)。

また、自家骨と異種骨の混合材の治癒期間は6ヶ月以上に設定した方が良いと報告もあります3)。

その他の、上顎洞底挙上術での脱蛋白ウシ骨ミネラルの単体利用の治癒期間5ヶ月と8ヶ月の比較:ランダム化比較臨床試験では、両期間とも組織学的観察、組織形態計測分析、体積分析、ISQによるインプラント安定性の測定、いずれにおいても有意な差は認めないことが示唆されています4)。

さらに、サイナスリフト後9ヶ月までは自家骨単体はBio-Ossやbeta-TCPと比較して有意に骨化度を示すが、9ヶ月以降はBio-Ossやbeta-TCPなどの骨化度が高まり有意な差がなくなると示されていることから5)、異種骨や人工骨を填入し、6ヶ月待ってからインプラント埋入を行い、その後さらに2−3ヶ月間のオッセオインテグレーションを待てば、その間も填入された異種骨や人工骨の骨化が進み十分なオステオインテグレ-ションが獲得されると考えられます。

著者の経験では、人工骨で同時埋入した場合にでも6か月の待機期間で十分なオステオインテグレ-ションが得られているのも事実です。

(参考文献5から引用)

引用文献

  1. E. A. Al-Moraissi, A. S. Alkhutari, B. Abotaleb, N. H. Altairi, M. Del Fabbro: Do osteoconductive bone substitutes result in similar bone regeneration for maxillary sinus augmentation when compared to osteogenic and osteoinductive bone grafts? A systematic review and frequentist network meta-analysis. Int. J. Oral Maxillofac. Surg. 2020; 49: 107–120.
  2. Danesh-Sani SA, Engebretson SP, Janal MN. Histomorphometric results of different grafting materials and effect of healing time on bone maturation after sinus floor augmentation: a systematic review and meta-analysis. J Periodont Res 2017; 52: 301–312.
  3. Pablo Galindo-Moreno, Juan G. de Buitrago, Miguel Padial-Molina, Juan Emilio Fernández-Barbero, Javier Ata-Ali, Francisco O′Valle: Histopathological comparison of healing after maxillary sinus augmentation using xenograft mixed with autogenous bone versus allograft mixed with autogenous bone. Clin Oral Impl Res. 2018;29:192–201.
  4. Stefano Corbella, Silvio Taschieri, Roberto Weinstein, Massimo Del Fabbro: Histomorphometric outcomes after lateral sinus floor elevation procedure: a systematic review of the literature and meta-analysis. Clin. Oral Impl. Res. 27, 2016, 1106–1122
  5. Jörg Handschel, Melani Simonowska, Christian Naujoks, Rita A Depprich, Michelle A Ommerborn, Ulrich Meyer and Norbert R Kübler: A histomorphometric meta-analysis of sinus elevation with various grafting materials. Head & Face Medicine 2009, 5:12

 


 

【Q】骨補填材料の種類と上顎洞での吸収期間はどのように報告されていますか?

【A】
骨補填材料には自家骨、同種骨、異種骨と人工骨があります。
自家骨は昔からゴールドスタンダードの材料として位置づけされていて、骨伝導能、骨誘導能、骨形成能を有していますが、上顎洞底挙上術の骨増生9ヶ月後には他の異種骨や人工骨との骨化度に有意に差がなくなると報告されています1)。一方で、自家骨の吸収は術後6ヶ月から6年の間に約45%生じるとの報告もあります2)。

骨伝導能を有する異種骨のBio-Ossの場合、上顎洞底挙上術での骨高径は保たれるとして長年支持されて来ていますが3)4)、デメリットは逆に吸収されにくく長期間上顎洞内に異物として残ることやウシ由来の感染リスクを伴うことがあげられます4)5)。しかし、上顎洞内での骨吸収は術後2年後に平均20%であり、自家骨に比べて少ないことも報告されています6)。

骨伝導能を有する人工骨のBeta-TCPやサイトランス(炭酸アパタイト)は吸収性であり、特にサイトランスでは破骨細胞形成が高まり、骨芽細胞の作動を促すことで、骨形成率が増加することが報告され、Bio-Ossと吸収率の比較では有意に吸収が少なく、これは骨の置換力が高いことを示しています6)。

以上のことから、上顎洞底挙上術の骨造成では長期間異物として残らなく、速やかな新生骨への吸収置換、自家骨より優れたボリュームの保持を有するとの報告よりサイトランスが良いのではないかと考えています。

さらに、サイナスリフトでの填入骨量に関しては、上顎洞内にグラフトされた骨は4年間で約3mm吸収されると報告されている7)ことから、この報告を挙上量を決める目安として考えても良いかと思います。

引用文献

(参考文献6から引用)

  1. Jörg Handschel, Melani Simonowska, Christian Naujoks, Rita A Depprich, Michelle A Ommerborn, Ulrich Meyer and Norbert R Kübler: A histomorphometric meta-analysis of sinus elevation with various grafting materials. Head & Face Medicine 2009, 5:12.
  2. Siddharth Shanbhag, Vivek Shanbhag, Andreas Stavropoulos: Volume changes of maxillary sinus augmentations over time: a systematic review. Int. J. Oral Maxillofac. Implants. Jul-Aug 2014;29(4):881-92.
  3. Tara L Aghaloo 1, Peter K Moy: Which hard tissue augmentation techniques are the most successful in furnishing bony support for implant placement?. Int. J. Oral Maxillofac. Implants 2007;22 Suppl:49-70.
  4. Trombelli L, Franceschetti G, Stacchi C, Minenna L, Riccardi O, Di Raimondo R, Rizzi A, Farina R. Minimally invasive transcrestal sinus floor elevation with deprote- inized bovine bone or b-tricalcium phosphate: a multicenter, double-blind, randomized, controlled clinical trial. J Clin Periodontol 2014; 41: 311–319.
  5. Yeoungsug Kim, DDS; Hessam Nowzari, DDS; PhD; Sandra K. Rich, MPH, PhD: Risk of Prion Disease Transmission through Bovine-Derived Bone Substitutes: A Systematic Review. Clinical Implant Dentistry and Related Research, Volume 15, Number 5, 2013.
  6. Koudai Nagata, Kei Fuchigami, Ryoji Kitami, Yurie Okuhama, Kana Wakamori, Hirokazu Sumitomo, Hyunjin Kim, Manabu Okubo and Hiromasa Kawana: Comparison of the performances of low- crystalline carbonate apatite and Bio-Oss in sinus augmentation using three- dimensional image analysis. International Journal of Implant Dentistry. (2021) 7:24.
  7. Young-Kyun Kim, Su-Gwan Kim, Bum-Su Kim, Kyung-In Jeong: Resorption of bone graft after maxillary sinus grafting and simultaneous implant placement. J Korean Assoc Oral Maxillofac Surg 2014;40:117-122.

 


 

【Q】サイナスリフトにおける、インプラントの直径、長さの選択はどのように考えたら良いですか?

【A】
オッセオインテグレーションの獲得に重要なことは、上顎洞底までの残存骨と骨補填材とのインプラント接触面積を大きくすることと考えてます。

フィクスチャーの長さを長くすることにより、残存骨並びに人工骨とフィクスチャー接着表面が増大し、フィクスチャーを介した顎骨への外力の分散が広がりやすいこと、すなはち、偏心荷重を負荷した場合、長いフィクスチャーのほうが外力を分散させやすく有利であることから、長いインプラントを選択したいと考えます。しかし、一方で中心荷重を負荷した場合は、フィクスチャーの長さの影響はないと文献で示されていることから 1)、歯槽骨の幅を考慮してできるだけ直径の大きい(太い)インプラントを選択し、さらにできれば10mm以上、理想的には12mmのインプラントを選択したいと、著者は考えています。

偏心荷重:頬側および舌側に荷重点を設定した場合
中心荷重:中央部に荷重点を設定した場合

一方で、一般的な骨への埋入の報告ではありますが、ショートインプラントと骨造成を伴うスタンダードインプラントの比較に関するシステマティックレビューでは、ショートインプラントと骨造成を伴うスタンダードインプラントは同等の残存率を示したと報告されていること2)、また、ラテラルアプローチサイナスリフトを伴うインプラント治療で、フィクスチャーの長さ10mmから15mmの間では残存率の相違は認められないと報告されていることから3)、10mm以上のインプラントを選択すれば問題が起こりにくいと考えます。

さらに、サイナスリフトにおけるフィクスチャーの長さ10mmと8mmの間で残存率の有意差は示されず、上顎洞底挙上術を行なった部位における長さ8mmのインプラント残存率も良好な成績を示しています4)。以上の報告から、上顎洞底挙上術を伴う場合でもフィクスチャー長径8mmが支持されているとの報告もあります。前述したように、オッセオインテグレーションにインプラントの表面積が影響することから、歯槽骨の幅を考慮して、できるだけ長径が太いものを選択し、患者の偏心荷重も考慮して8mm以上の長さを選択すると良いと考えます。

著者は、上顎で8㎜のインプラントを選択し、上部構造が装着されてから、2年後にインプラント周囲炎を伴わずにオステオインテグレ-ションを失い、脱落した症例を経験しており、8mmのサイナスリフトには慎重であることを追記します(エビデンスなし)。

引用文献

(参考文献4から引用)

  1. Akira Yoshino: Effect of the Ratio of Superstructure Length to Fixture Length on the Strain of the Bone Surfaces Surrounding the Implant. Journal of Japanese Society of Oral Implantology. 2001 Sep 14:398-413.
  2. Juan A. V. Palacios, Jaime Jiménez Garcia, João M. M. Caramês, Marc Quirynen, Duarte Nuno da Silva Marques: Short implants versus bone grafting and standard-length implants placement: a systematic review. Clin Oral Invest (2018) 22:69–80.
  3. Pohl V, Thoma DS, Sporniak-Tutak K, Garcia-Garcia A, Taylor TD, Haas R, Hammerle CHF: Short dental implants (6 mm) versus long dental implants (11–15 mm) in combination with sinus floor elevation procedures: 3-year results from a multicentre, randomized, controlled clinical trial. J Clin Periodontol 2017; 44: 438–445.
  4. Telleman G, Raghoebar GM, Vissink A, den Hartog L, Huddleston Slater JJR, Meijer HJA. A systematic review of the prognosis of short (<10 mm) dental implants placed in the partially edentulous patient. J Clin Periodontol 2011; 38: 667–676. doi: 10.1111/ j.1600-051X.2011.01736.x.

 


 

【Q】上顎臼歯部で、サイナスリフト、ソケットリフトを伴うインプラントを埋入した際に、インプラントの長径によって、補綴を単独あるいは連結するかどうかの基準はありますか?

【A】(2021.11.13)
上顎に対するインプラント治療で、埋入するインプラントの長さが8mm以上あれば、連結する必要はないと考えます。
単独で補綴することにより、フロスを入れて1本ずつメインテナンスができるという点を考慮しております。
インプラント長が6mmになると連結が必要であると考えます。

文献的に、サイナスリフトにおけるフィクスチャーの長さ10mmと8mmの間で残存率の有意差は示されず、上顎洞底挙上術を行なった部位における長さ8mmのインプラント単独埋入でのインプラント残存率も98%と良好な成績を示しています1,2)。また、上下両顎に単独埋入した計1295本の8mmインプラントを最低2年以上経過したシステマティックレビューでは平均残存率98.4%(95% CI: 97.8〜99.0%)と報告されています1)
さらに、上顎臼歯部に埋入された長径8mmインプラントの7年後の残存率は98%であり、長径10mm以上のインプラントの残存率99%と比較して有意差はないと報告されています2)。

さらに、計2533本の残存骨8mm以下にソケットリフトと長径8mm以下インプラントを埋入した場合と、残存骨に制限を設けずにソケットリフトと長径8mm以上インプラントを埋入した場合の残存率の比較に関するシステマティックレビューとメタアナライシス研究では、

  1. 治癒期間中の残存率 両グループとも有意差はなし(OR=0.74,RD=0.00)
  2. 荷重開始1年後の残存率 両グループとも有意差なし(OR=1.04,RD=0.00)
  3. 荷重開始3年後の残存率 両グループとも有意差なし(OR=1.76,RD=0.02)

しかし、8mm以下インプラントは8mm以上インプラントより残存率が下がっていると報告されています3)。

一方で、荷重開始10年後の残存率に関して Qian SJ et al.(2019)らは、ソケットリフトした計40本(21本の8mm以下インプラント、19本の10mmインプラント)の10年後のインプラント残存率が、それぞれ90.7%と95%であり、両グループに有意差はなかったと報告している4)。

Malmstrom Hらは,、ソケットリフト時やサイナスリフト時などの上顎臼歯部に長径6mmのインプラントを単独埋入した場合、良好な成績を示したと報告しています6)。

その他、合計190本の6mmインプラントの平均109.2ヶ月間での残存率が97.5%との報告や25本(上顎臼歯部に23本、下顎臼歯部に2本)の6mmインプラントの2年間の残存率が97%であったとの報告をみます 6)。

一方で、合計7本の6mmインプラントの3年間の残存率47.6%と上顎臼歯部位での長径6mmのインプラント残存率が有意に低いとの報告や7)、長径6mmインプラントを他のインプラントグループ(8mm,10mm<)と比較すると7.92倍インプラント失敗のリスクがあると示唆されたとする報告もあり2)、長径6mmのショートインプラントの上顎臼歯部への単独埋入のコンセンサスは得られていないのが現状です。

引用文献

  1. Telleman G, Raghoebar GM, Vissink A, den Hartog L, Huddleston Slater JJR, Meijer HJA. A systematic review of the prognosis of short (<10 mm) dental implants placed in the partially edentulous patient. J Clin Periodontol 2011; 38: 667–676. doi: 10.1111/ j.1600-051X.2011.01736.x.
  2. French D, Larjava H, Ofec R. Retrospective cohort study of 4591 Straumann implants in private practice setting, with up to 10-year follow-up. Part 1: multivariate survival analysis. Clin. Oral Impl. Res. 26, 2015, 1345–1354
  3. Zhe-Zhen Lin, Yan-Qing Jiao, Zhang-Yan Ye, Ge-Ge Wang and Xi Ding: The survival rate of transcrestal sinus floor elevation combined with short implants: a systematic review and meta-analysis of observational studies. International Journal of Implant Dentistry (2021) 7:41
  4. Qian SJ, Mo JJ, Si MS, Qiao SC, Shi JY, Lai HC. Long-term outcomes of osteotome sinus floor elevation with or without bone grafting: the 10-year results of a randomized controlled trial. J Clin Periodontol. 2020;47(8):1016– 25.
  5. Paul A Fugazzotto: Success and Failure Rates of 1,344 6- to 9-mm-Length Rough-Surface Implants Placed at the Time of Transalveolar Sinus Elevations, Restored with Single Crowns, and Followed for 60 to 229 Months in Function. Int J Oral Maxillofac Implants. Nov/Dec 2017;32(6):1359-1363.
  6. Malmstrom H, Gupta B, Ghanem A, Cacciato R, Ren Y, Romanos GE. Success rate of short dental implants supporting single crowns and fixed bridges. Clin. Oral Impl. Res. 27, 2016, 1093–1098
  7. Pjetursson BE, Rast C, Bra ̈gger U, Schmidlin K, Zwahlen M, Lang NP. Maxillary sinus floor elevation using the (transalveolar) osteotome technique with or without grafting material. Part I: implant survival and patients’ perception. Clin. Oral Impl. Res. 20, 2009; 667–676.

 


 

【Q】上顎第二大臼歯のサイナスリフトを伴うインプラント埋入でのラテラルアプローチの骨窓の設計についてどのようにすればよいでしょうか?

【A】
サイナスリフトを行う際、基本的に術野へは、器具も含めて前方からアクセスすることになります。このことからサイナスリフトでは当該歯術野よりもやや前方に骨窓を設定することが手術のコツになります。

手術の経験が少ない先生は、頭蓋骨の模型などで当該インプラントの埋入位置と前方から上顎洞側壁を前方から観察した際の窓開けの位置を確認するとよいと思います。

すなはち、上顎第一大臼歯部の根尖の位置を確認して、その根尖に影響を与えるような位置でなければ、上顎第二大臼歯部の真横に窓の位置を設定するのではなく、上顎第二小臼歯部もしくは上顎第一大臼歯部の上から窓開けを行うと良好な術野の確保が出来、挙上などの操作も容易になると思います。

一方で、解剖学的な報告では上顎洞の側壁の厚みは平均1.0−1.5mmであり、平均的にもっとも厚いのが上顎第一大臼歯相当部なので1)、同部は骨壁が厚く、骨の開窓からの上顎洞粘膜の確認や骨窓の折り込みが難しくなることがあることも頭に入れておきたいものです。

引用文献

  1. (SUGAI Toshiro: Maxillary sinus floor elevation: lateral approach and alveolar crest approach. 日本口腔外科学会雑誌2010.Mar Vol. 56 No.3 150-165)

 


 

【Q】サイナスリフトの骨窓はのどのように設計すればよいですか?

【A】
骨窓の基本的な従来型デザインは、1本のインプラントの埋入に対して8x10mm、複数のインプラント埋入に対して15x20mmの鋭利な角度がない丸みの開窓が良いとされています1)。

開窓の大きさに関しては、できる限り広範囲に開窓することで、明視下における術野が拡大でき、上顎洞粘膜の剥離が容易になり、洞粘膜の穿孔などの合併症が少ないというメリットがありますが2)、上顎洞の開窓サイズが大きく、切削する骨量と上顎洞粘膜の挙上量も多くなるため術後の血液供給が不足しやすく、治癒が阻害されるというデメリットもあるといわれています1)。

Hafiz Adawi , Parnward Hengjeerajaras , Stuart J Froum , Zahra Bagheri :A Less-Invasive Window Design for Lateral Wall Maxillary Sinus Augmentations. Int J Periodontics Restorative Dent. Nov/Dec 2019;39(6):855-861.
Akagawa, Yasumasa et al. Fundamental Concepts and Techniques of Oral Implants 3rd ed. 2017

 

開窓部の設計

wall off(骨を除去)とtrap door(骨の折り込み)

ここで、サイナスリフトのラテラルアプロ-チにおける骨の開窓(Bony SWindow)形成時のwall off(骨を除去)とtrap door(骨の折り込み)の選択についても記載します。

【Trap door method】
上顎洞側壁の厚さ1mm以下の場合は上顎洞側壁骨片を上顎洞粘膜と同時に挙上する。

【Wall off method】
上顎洞側壁の厚さ1mm以上の場合は上顎洞粘膜から骨壁を外し、上顎洞粘膜を挙上した後、再び骨壁を側壁へ戻す。術後、側壁部から新生骨造成が期待できる。

Trap-door (The bony window is elevated into the newly formed sinus cavity) とWall-off(The bony window is elevated out of the surgical site and discard) の間でサイナスリフトの成功率とシュナイダー膜の穿孔率ともに有意な差はないと報告されています1)。著者の考えは、できればTrap-doorを選択しますが、シュナイダ-膜から骨が外れてしまった場合には無理せず骨片を除去するのが良いと考えています。

Trap-door の利点としては、骨造成量を設定しやすい、シュナイダー膜を挙上しやすい、インプラントの先端部に骨があることによって埋入時にシュナイダー膜の穿孔防止になるなどがあリます2)3)。欠点はTrap-door形成時ラウンドバーやピエゾで生じた骨辺縁のベベルが、骨補填材料を填入する際やインプラント埋入時にシュナイダー膜を穿孔する可能性があることだと思います。

1wall法と2wall法

Wall-off法には隔壁の有無で1wall法と2wall法があります。
1wall法の設計では、開窓部は近心壁から2〜3mm、上顎洞底より3〜4mmの位置とし、大きさは近遠心的に10〜12mm、垂直的には5〜7mmの距離を確保することが重要であり、開窓部上縁をフィクスチャー先端上方1〜2mmに設定することにより、埋入時に上顎洞粘膜とフィクスチャー先端の位置関係を確認できます4)。

2wall法の基本設計は1wall法と同じで、隔壁を中心に2ヶ所開窓し、2wallの間は4〜5mm空ける。二つ目のウォールは近遠心的に8〜10mmの大きさに設定します4)。

それぞれの適応症は1wall では、①側方開窓部骨壁が1mm以上、②上顎洞粘膜が正常、➂隔壁が存在しないことであり、2wall法は、①上顎洞内に大きな欠損部がある、②欠損部上顎洞内に大きな隔壁がある4)。

覚本らは『ボーンオグメーションの実践』の中で、側方開窓部の設計に関して、開窓部前方は上顎洞前壁の近くで、後方へあまり広げる必要はない。下方はできるだけ上顎洞底骨付近に設定し、上方は埋入するフィクスチャーの長さに3〜5mmを加えた位置に設定する。と記載しています5)。

小田らは、『正しい臨床決断をするためのエビデンス・ベースト・インプラントロジー』の中で、.上顎洞側壁の開窓に予め定められた直径のSLA kit LSリーマーを使用していると記載しており、SCA kitの中に、リーマー先端と上顎洞粘膜の間に薄いボーンディスクを形成しながら上顎洞側壁を穿孔するドリルであるLSリーマーがあり、CT画像にて上顎臼歯部の既存骨高径、動脈の状態、側壁の厚さなどを確認し、適切な直径、長径のLSリーマーを、選択し使用する。と記載しています6)。

2019年にHafiz Adawiらは低侵襲型開窓デザイン(Less-Invasive Window Design)を報告している7)。
そのデザインは、1本のインプラント埋入に対して4x8mmの垂直的な卵円形開窓、複数本のインプラント埋入に対して5x10mmの水平的な卵円形開窓を設計するものであり、従来の側方開窓デザインと比較して、開窓部のサイズが小さいことが特徴である。

 

開窓部の大きさによるメリット・デメリット

骨の開窓部の大きさに関しては、開窓部が小さいと、①フラップの切開がわずかですみ、術後の患者の不快感を最小限に抑えられる。②移植材料の上顎洞外への漏れ予防5)、③上顎洞側壁の温存により上顎洞内における骨移植材料の支持と安定性を増し、周囲組織から血液供給を得やすい、骨移植材料周囲に骨関連細胞が遊走しやすくなるなどの利点が考えられる8,9)。
一方で、デメリットは、シュナイダ-膜の挙上がこんなんになり、万が一、上顎洞粘膜穿孔が起こった場合にその対処が難しく、開窓部のサイズを拡大させる必要がある場合があること、また、上顎洞内の移植骨に感染を生じた場合のドレナージが困難になるなどがあげられる10)。

引用文献

  1. Elvinas Juzikis, Algimantas Gaubys, Henrikas Rusilas: Uses of maxillary sinus lateral wall bony window in an open window sinus lift procedure: literature review. Stomatologija, Baltic Dental and Maxillofacial Journal, 20: 14-21, 2018
  2. Shou-Yen Kao, Man-Tin Lui, Dong-Hui Cheng, Ta-Wei Chen: Lateral trap-door window approach with maxillary sinus membrane lifting for dental implant placement in atrophied edentulous alveolar ridge. Journal of the Chinese Medical Association 78 (2015) 85e88
  3. Ta-Wei Chen, DDS, Haw-Sheng Chang, DDS, Kam-Wing Leung, DDS, MS,Yu-Lin Lai, DDS, MS, and Shou-Yen Kao, DDS, MHA, DMSc: Implant Placement Immediately After the Lateral Approach of the Trap Door Window Procedure to Create a Maxillary Sinus Lift Without Bone Grafting: A 2-Year Retrospective Evaluation of 47 Implants in 33 Patients. J Oral Maxillofac Surg 65:2324-2328, 2007
  4. 山道信之、糸瀬正通: サイナスフロアエレベーション. クインテッセンス出版 2008
  5. 覚本嘉美、八木原敦史: ボーンオグメーションの実践. ゼニス出版2011
  6. 小田師巳、園山亘:正しい臨床決断をするためのエビデンス・ベースト・インプラントロジー. クインテッセンス出版2020
  7. Hafiz Adawi , Parnward Hengjeerajaras , Stuart J Froum , Zahra Bagheri :A Less-Invasive Window Design for Lateral Wall Maxillary Sinus Augmentations. Int J Periodontics Restorative Dent. Nov/Dec 2019;39(6):855-861.
  8. Gustavo Avila-Ortiz, Hom-Lay Wang, Pablo Galindo-Moreno, Carl E Misch, Ivan Rudek, Rodrigo Neiva: Influence of lateral window dimensions on vital bone formation following maxillary sinus augmentation. Int J Oral Maxillofac Implants. Sep-Oct 2012;27(5):1230-8. 1.
  9. Baldini N, D’Elia C, Bianco A, Goracci C, de Sanctis M, Ferrari M. Lateral approach for sinus floor elevation: large versus small bone window – a split-mouth randomized clinical trial. Clin. Oral Impl. Res. 28, 2017, 974–981.
  10. SUGAI Toshiro: Maxillary sinus floor elevation: lateral approach and alveolar crest approach. 日本口腔外科学会雑誌2010.Mar Vol. 56 No.3 150-165

 


 

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