【Case 10】
右側上顎第2小臼歯(#15)における抜歯即時埋入症
例:場合により12mm→10mmのインプラント選択
右側上顎第2小臼歯のシミュレーション症例である。抜歯即時症例では、その歯を温存できない理由によってシミュレーションも変わってくる。本症例では、歯根破折による温存不可とした症例であり頬側の骨が保持されている状態と考える。このような症例では、WAX UPにおける上部構造の中心にインプラントの埋入位置を設定することが比較的容易にできる。
骨の状態から、スクリューリテインの部位にアクセスホールを出すことが比較的容易にできる。骨透過像での3D画像では、インプラントの位置関係を3次元的に確認する。
本症例では頬側の骨レベルに対して、ほぼ歯槽骨頂と同レベルにインプラントを設定することができる。しかしながら、埋入して歯槽骨との関係を埋入後に実際に視診、触診等で確認して浅いと感じた時は、10㎜のインプラントに変更することも考慮する。頬側の骨とインプラントとのギャップは0.5~1.0mm以内である。12㎜の長さのインプラントを選択して上顎洞の下縁の皮質骨にちょうど接するように位置決めを行う。口蓋側の骨が確保できるレベルまでの深度にするのであれば、10㎜を選択して、より深く埋入することも考慮する。頬側方向からの断面では臨在歯の歯根との位置関係や深度の確認を行う。
【Case 9】
左側上顎中切歯(#21)抜歯即時埋入症例#22をポンティックとした症例
左側中切歯のシミュレーション症例である。歯根破折による保存不可例で唇側、特に歯槽頂レベルの骨は保たれている。
骨の状態から、スクリューリテインとして口蓋側にアクセスホールが設定できるようにすることが可能と考えられた。骨レベルでは、歯槽頂レベルでの唇側の骨の約1㎜深いレベルでインプラントレベルを設定できると考えた。骨透過像では、三次元的なイメージの把握と骨造成のイメージを確認する。
本症例では唇側の骨がほぼ従来のレベルまで保持されていることが確認できる。インプラントと唇側のギャップは0.5-7mm程度であり、HAコーティングのインプラントであれば骨造成を必要としない場合も多いが、リフィットなどのスポンジ状の人工骨を挿入しても骨伝導を促す意味でよいのかも知れない。歯根側にはある程度十分な骨幅があることも確認できる。12㎜の長さのインプラントを選択して位置決めを行う。唇側方向からの断面では臨在歯の歯根との位置関係や進度の確認を行う。
【Case 8】
左側上顎中切歯(#21)にエキスパンジョンならびにGBRを併用する症例
左側上顎中切歯のシミュレーション症例である。骨幅を確保するためにエキスパンジョンを併用することとし、さらに唇側の骨が薄くなることから、十分な骨幅と歯槽頂部での骨を保持するために、人工骨と吸収性のメンブレンによるGBRを併用することとした。
骨と最終補綴形態との関係でスクリューリテインの最終補綴が計画できた。抜歯後の歯槽骨頂との関係では唇側、口蓋側ともに2㎜ほど深い位置で埋入が計画できると考える。
抜歯窩とインプラント体とのギャップならびに位置関係では、残存する唇側の骨とのギャップで大きな問題はないと考えるが、根尖部から先の骨幅が少し不十分であるためにエキスパンジョンと骨造成を併用する計画とした。直径3.4mmx12㎜の長さのインプラントを選択して梨状孔の下縁の皮質骨に近接するように位置決めを行う。また唇側ならびに口蓋側の骨レベルより約1~2㎜の深さを確保できるレベルまでの深度にすることも重要である。隣接歯の歯根との距離も適切であると考えられ問題ない。
【Case 7】
左側上顎中切歯(#21)症例
左側上顎中切歯のシミュレーション症例である。根尖病巣と歯根破折に伴う唇側の骨吸収を認め、抜歯即時埋入とともに骨造成のためのGBRを行う症例である。直径4.2 mmx14mmのインプラントを選択した。
骨の状態により切端にアクセスホールが来る設計となっている。セメントリテインとの最終補綴とした。
本症例では要抜歯の#21に根尖病巣が存在しており、唇側の歯槽骨も吸収あるいは非常に薄くしか存在していないと判断した。口蓋側の骨はある程度の厚みで存在しており、GBRを併用してのインプラント埋入を計画した。梨状孔までの距離は十分あり、14㎜の長さのインプラントを選択して梨状孔の下縁の皮質骨に近接するように位置決めを行った。
【Case 6】
左側上顎中切歯(#21)抜歯即時埋入:最終補綴形態が未定だった症例
左側上顎中切歯のシミュレーション症例である。この時点で臨在歯を含む#13-#23の補綴を今後どのようにするのかが決定されておらず歯冠の小さな補綴物のままである。このような症例では、従来、最終的な臨在歯も含めての補綴形態を考慮したシミュレーションが理想である。
先述した如く最終補綴の決定がなされない状態:現状での埋入位置の決定である。骨の状態によりできるだけスクリューリテインができるような位置でインプラント体の位置を決定した。骨幅もある程度十分あり直径3.7㎜x12㎜が埋入可能であった。
本症例では抜歯後の唇側歯槽骨が比較的長い距離ではあるが、少ないギャップで存在することにある。ギャップは0.5㎜程度であり骨を入れる必要はないが、リフィットなどの吸収するスポンジ状の人工骨を挿入したほうがより安心であると考える。14㎜の長さのインプラントを選択して梨状孔の下縁の皮質骨にちょうど接するように位置決めを行う。また口蓋側の骨が確保できるレベルまでの深度にすることも重要である。
【Case 5】
左側上顎側切歯(#22)抜歯即時埋入症例
左側上顎側切歯のシミュレーション症例である。骨幅が十分ではないためインプラントの選択は直径3.4mmのものになり、傾斜角度により、最終補綴物の切端にアクセスホールが出るような設計になってしまっている。しかし、極端に唇側にアクセスホールが出るものではなくセメントリテインでは問題ない。
骨幅と歯槽骨の状態によりセメントリテインとの最終補綴として、アクセスホールの位置を決定した。骨幅の関係で口蓋側に傾斜して、アクセスホールの位置を口蓋側に設定できなかったが、この程度の唇側傾斜ではセメントリテインで補綴を行った場合には問題ない。
本症例では唇側歯槽骨の存在がCT上明らかにできなかった。術中の骨に対する触診、視診によって、吸収の著しい場合には、切開してGBRの準備も行って、できるだけ直系の細い3.4㎜ x 14㎜の長さのインプラントを選択し、梨状孔の下縁の皮質骨までに達する設計とした。口蓋側では、既存骨のほぼ歯槽頂レベルにインプラントの上端が設定されている。
【Case 4】
右側上顎中切歯(#11)唇側歯槽骨頂に骨が認められる症例
右側上顎中切歯のシミュレーション症例である。要抜歯の歯は残根状態を呈しており、歯槽頂付近の骨は保たれていることが、CT上の画像診断で確認できる。最終補綴形態から考えると、ある程度、理想的な部位に埋入できると判断する。直径3.7mmを選択し、長さ14㎜のインプラントを選択した。この症例のポイントは、抜歯窩の状態とともにインプラントの最深部での骨幅が、その方向であればある程度確保できていることにある。このシミュレーションから考えると、最も重要なことはいかに骨を温存しながら抜歯を行うかという点にあることがわかる。
骨の状態によりセメントリテインとの最終補綴として、アクセスホールの位置を決定した。骨レベルでは、歯槽骨頂付近の骨が温存されていることが観察できる。先述したが、抜歯時にこの唇側の骨をいかに保存するかが重要である。
本症例では抜歯窩とインプラント体とのギャップは、気にならない程度であるが、骨密度が低いこと、皮質骨が比較的明瞭であること、切歯管との距離に留意が必要である。
また口蓋側の骨レベルより約1㎜、唇側の骨より約2㎜深い位置にインプラント体を設計することとした。隣接歯の歯根との距離も適切であると考えられ問題ない。
【Case 3】
右側上顎側切歯(#12)抜歯即時埋入症例:埋伏過剰歯を避けての埋入
右側上顎側切歯のシミュレーション症例である。最終補綴形態から考えると、ある程度、理想的な部位に埋入できると判断する。直径3.4mm長さ14㎜のインプラントを選択した。抜歯窩の唇側に薄い骨が存在するものの、骨幅はある程度確保されており、唇側の骨とのギャップに関してはリフィットなどの骨補填材料でカバーできると考える。
骨の状態により切端付近にアクセスホールが設定されることから、セメントリテインでの対応が必要となるが、骨レベルでは、歯槽頂部付近に唇側の歯槽骨があり3Dでもその状態が把握できる。
本症例では抜歯窩の唇側歯槽部では薄いながら骨が残存していることが確認できる。唇側の骨とインプラント体とのギャップに関しても人工骨の挿入で問題はない。ただ、CTで埋伏過剰歯の存在が確認できる。これらの埋伏歯を臨在歯の歯根と同じように避けなければならない、サージカルガイドによる埋入でなければ難しい手術といえる。
【Case 2】
術中の唇側骨の確認が必要になる右側上顎中切歯(#11)抜歯即時埋入症例
右側上顎中切歯のシミュレーション症例である。骨幅もある程度確保されており、ある意味典型的な症例ともいえる。最終補綴形態と骨の状態から、アクセスホールは切端に設定される。ある程度、理想的な部位に埋入できると考え直径4.2mm長さ14㎜のインプラントを選択したが直径3.7㎜でもよかったとも考える。
骨の状態によりセメントリテインで対応できる位置にアクセスホールが設定できる。骨レベルでは、歯槽頂付近の歯槽骨も十分に描出されて存在するが、断面では、非常に薄い可能性もあり、術中の同部の骨残存を確認する必要があると同時に、その部分の唇側骨の抜歯時の温存に留意する必要がある。
唇側の骨も保持されていると考えるが、術中の確認は必須である。唇側、口蓋側の骨とも最上部から、2㎜ほど深い部分に埋入設計されている。梨状孔の下縁の皮質骨までは達していないが、14㎜の選択をできており、十分にオステオインテグレーションが、維持できると考えた。隣接歯の歯根との距離も適切であると考えられ問題ない。
【Case 1】
右側上顎犬歯抜歯即時埋入症例
右側上顎犬歯のシミュレーション症例である。犬歯では、症例にもよるが、歯牙がかなり唇側に位置し、その意味では骨内にしっかりと埋入できる位置に、インプラントを設計できるが、唇側抜歯窩とインプラント体とのギャップに対する配慮が必要になる。最終補綴形態から考えると、理想的な部位に埋入できると判断する。#13は直径4.2mm、長さ14㎜のインプラントを選択した。
骨の状態によりスクリューリテインでも応できる位置にアクセスホールが設定できるがセメントリテインでも問題はない。骨レベルでは、歯槽頂部付近の骨が描出されており、断面図でも口蓋側に十分は骨があり、傾斜角度的にも大きな問題はないと考える。
犬歯は残根状態であるが唇側の骨は薄いながらも残存していることがCTで確認できる。
頬側に骨があることを確認しながら、口蓋側、頬測ともにある程度の深さ、骨頂部から1-2㎜深い部位に埋入するようにシミュレーションする。