上顎多数歯欠損に対するインプラント手術におけるシミュレーション症例解説(2020.1)

【Case 10】

上顎4前歯(#12,11,21,22)症例

上顎の4前歯の症例:抜歯即時症例であるが、骨の幅は問題なく、梨状孔の皮質骨に接触させる形でインプラントの位置を設定し、長さ12mmが確保できるため直径3.7㎜、長さ12.0mmを選択した。

骨の状態から、口蓋側のスクリューリテインの部位にアクセスホールを出すことは困難であったため、セメントリテインとしてのアクセスホールの位置を設定した。左側に関しては現在のブリッジの位置よりもやや口蓋にインプラントのアクセスホールが来るが、歯冠の口蓋側への張り出しが軽度であることから問題ない程度と考える。

骨レベルでは、唇側の骨がどれだけあるかを検討することになるが、本症例では抜歯即時症例であるということもあり、唇側の骨は維持されているのがわかる。このような症例でも、口蓋側にアクセスホールを出すことはやや困難であり、そのような場合には積極的にセメントリテインを選択することも大切である。

骨透過像での3D画像では、インプラント・インプラント間の距離やインプラントの角度をチェックする。鼻点から放射状に展開する考え方もあるが、切歯管の存在などで、角度が規制させることも多い。

#21を除く#12、#11、#22は、抜歯即時埋入であるが、#21ではやはり、抜歯即時の部位に比して歯槽頂レベルでの唇側のやや骨幅の問題がある。しかしながら、深めに埋入することでその問題は回避できると考える。このような抜歯即時埋入の症例では、抜歯窩の状態やそこへの骨造成、GBRなどの選択を行うため、切開してフラップを作成し十分な明視野でインプラント埋入を行うことになるが、ガイドを用いる有用性はこのような症例でも十分にある。

 


 

【Case 9】

右側上顎犬歯、側切歯、中切歯、左側中切歯(#13,12,11,21) 症例

本症例は、前歯部で骨の幅がなく人工骨と吸収性メンブレンを用いて骨造成を行い、その後6か月目で、インプラントを埋入することとした症例である。上顎の理想的な長さである12mmのインプラントを選択するシミュレーションも考えたが、ファインシアがプラットフォームスウィッチであり、骨レベルよりも約1-2mm深い位置に埋入することから、10㎜を選択した。

アクセスホールの位置としては、スクリューリテインも選択できる位置に設定できたが、これは唇側に骨造成が十分にできたことによるものであると考える。

骨レベルでのシミュ―レーションでは、人工骨の一部が3D画像では骨がないように描写されているが、これについては骨質が疎な部分でこのように描出されるのであり、断面図を参考にして位置決めを行えばよい。骨透過像ではインプラント同士の位置、深さ、角度などを確認できる。

断面図で少し顆粒状の形態にも見える黄色の矢印で示している部分が人工骨で骨造成を行った部分である。6か月は経過しているが、十分に骨化していない場合もあるため、CT像も含めて、慎重な診断と実際の手術時に過信しないことも重要である。しかし、位置的にはシミュレーション通りに埋入できることが重要で、なるべくもともとの既存骨にいかに包まれるのかが重要となる。

3D構築画像でのインプラント・インプラント間の距離や角度などを断面図においても確認することが大切であり、極端に角度が異なることがないように微調整を行う。

 


 

【Case 8】

両側上顎犬歯間6前歯(#13-#23)症例

本症例は、無歯顎の症例で、先に前歯部にインプラントを埋入し、前歯部を完成させてから臼歯部の咬合回復(サイナスリフトなどを行うために期間がかかることも患者さんの気持ちとしてはある)を患者さんが強く希望した症例である。このような症例では、若干の骨造成とGBRなども考慮するが、手術後の総義歯によるインプラントへの側方力がかかる負担を考慮し、できるだけ既存骨に埋入すること、初期固定を十分に得ることが重要である。術後インプラントが十分なインテグレーションを得るまでの約3か月間、義歯による側方力に耐えなければならないことを考慮しなければならない。

最終的には、マルチアバットメントをつけて、ブリッジタイプのインプラント上部構造を選択するのでアクセスホールの位置は、厳密に規定することはないが、All on 4を行う時と同様の力学的な力の分散を3D画像でのインプラント同士の位置関係の時に意識すると設計がしやすいかもしれない。

先述したが、総義歯で約3か月間、側方力がかかることを考えると直径3.7mmで、長さは10mmのインプラントを選択し、骨内に深くに埋入する設計も考えられる。

実際には、問題なく経過したが、義歯の側方力でインプラントのインテグレーションが妨げられるケースもあるため、マルチアバットメントを用いてブリッジで連結することを考えると10㎜を選択したほうがより安全であったかと思われた。

 


 

【Case 7】

右側上顎第1大臼歯、第1小臼歯、側切歯、中切歯、左側中切歯、犬歯(#16,14,12,11,21,23)症例

本症例は、右側第2大臼歯(#15)は温存でき、第1大臼歯、犬歯、中切歯にインプラントを埋入する症例である。右側上顎第1大臼歯(#16)部はサイナスリフトで単独歯における最終補綴を行う。前歯は、マルチアバットメントを装着してのブリッジタイプの補綴物が装着される。スクリューリテインになるが、アクセスホールの位置は理想的な部分に持ってくる。太さの選択はエマージェンスプロファイルを意識してできるだけ骨幅に対して直径の大きいものを選択する。

3D画像での骨透過像でのインプラント同士の位置関係の時に意識する。

サイナス部のインプラントに関しては、実際には、インプラントと骨レベルの関係を直接見ながら埋入するので、少し浅い位置でのシミュレーションでも構わないと考える。この症例の場合には、口蓋側にも若干の骨造成が行われた。

#14に関しては、上顎洞の前壁との位置関係のためこの位置になる。頬口蓋側の断面ではもう少し深く埋入したいが、上記の理由でこの位置しか選択できない。

#23は抜歯即時での埋入で、抜歯窩と唇側の骨との関係を考慮する。#11では切歯管との位置関係、#12では、唇側の骨の厚みなど考慮すべき点がある。一方で多数歯の場合にはそれぞれのインプラントの位置関係を十分に考慮しないといけないため、そのバランスを考えながら(極端に深い、浅いなどがないようにしなければならない)シミュレーションを行っていくことが大切である。

 


 

【Case 6】

両側上顎小臼歯間(#15-25)症例

本症例は、両側の小臼歯間を単独歯で最終補綴を行う治療方針でシミュレーションを行った症例である。小臼歯部は、近遠心的な距離から小臼歯部を一本埋入とした。フロスで十分に清掃できるために単独歯として埋入した。

できるだけスクリューリテインとする方向で、アクセスホールの位置を理想的な部分に持ってくる。太さの選択はエマージェンスプロファイルを意識してできるだけ骨幅に対して直径の大きいものを選択する。

3D画像での骨透過像でのインプラント同士の位置関係に意識する。インプラント・インプラント間の距離などを意識し全体的なバランスを考える。しかしあくまで微調整は断面で行うべきであるが、断面のみで位置決定をすると3D画像で見たときにバランスの悪いものになることもあるので、この点には注意する。

#25では上顎洞までの距離の関係で上顎ではあるが10㎜を選択した。太さが直径4.7㎜であることから、十分に対応できると考えた。#23では唇側の骨ではなく口蓋側の骨レベルを考慮して位置決めを行った。#22ならびに#21では、理想的な位置に埋入を行うシミュレーションを行った。#21では切歯管との位置関係と抜歯後の唇側の骨がどれだけ残存するかを、インプラント埋入窩の形成後、鋭匙などで確認する必要がある。

#11,12,13に関しては骨幅なども問題ないが、#25に関しては頬側の骨が不鮮明になっており上顎洞までの距離の関係で10㎜のインプラントを選択した。手術時には先述したように頬側の骨レベルを鋭匙などで確認する。

両側とも小臼歯部と犬歯部においては上顎洞との近遠心的な関係、前歯部においては梨状孔の下縁部の皮質骨との関係で決定される。

 


 

【Case 5】

右側第2小臼歯から左側第1小臼歯の前歯(#15-34)症例

本症例は、右側の小臼歯部から左側の第1小臼歯までを単独歯でのインプラント治療を行った症例である。左側の第2小臼歯は温存している。

スクリューリテインとする方向で、アクセスホールの位置を理想的な部分に持ってくる。太さの選択はエマージェンスプロファイルを意識してできるだけ骨幅に対して直径の大きいものを選択する。右側の犬歯から小臼歯部#14部と#21,22部においては。頬測ならびに唇側に骨質の疎な部分があり、3Dでは骨欠損として描出されている。

粘膜レベルでの3D画像では、固有歯肉・歯槽提とインプラント窩の位置関係を確認して、手術時の切開の参考にする。骨透過像ではインプラント同士の位置関係に意識する。インプラント・インプラント間の距離などを意識し全体的なバランスを考える。微調整は断面で行うべきであるが、断面のみで位置決定をすると3D画像で見たときにバランスの悪いものになることもあるので、この点には注意する。

#14は抜歯即時埋入であるが骨の幅、高径も問題ないと考える。#13でも理想的なインプラント選択が可能である。

#11も問題ないと思われるが#12では、唇側の骨が骨質として疎であると考える。しかし、よく観察すると抜歯後の期間が短いためか骨質が疎であるためだけで、骨幅もあることも見てとれる。理想的な位置に埋入を行うシミュレーションを行った。唇側の骨がどれだけしっかりしたものなのかを、インプラント埋入窩の形成後、鋭匙などで確認する必要がある。

いずれも骨幅、高径なども問題ないが、#23,24に関しては抜歯即時埋入であるため手術時には先述したように頬側の骨レベルを鋭匙などで確認する。

両側とも前歯部においては梨状孔の下縁部の皮質骨との関係で高径を決定し、抜歯後埋入部位では、抜歯窩とインプラント埋入部位の骨状態を考慮してシミュレーションする。

 


 

【Case 4】

左側上顎第1・2小臼歯、第1大臼歯(#16,15,14)症例

本症例は、左側上顎第1・2小臼歯部と第1大臼歯へのインプラント埋入症例である。第2小臼歯と第1大臼歯に関してはサイナスリフトの適応とした。第1小臼歯のシミュレーションはエマージェンスプロファイルとサイナス内にインプラントの位置を設定した場合には、歯冠との角度の問題の可能性を考慮して長さ8㎜を選択した。

アクセスホールはスクリューリテインとする方向で、できるだけ理想的な部分に持ってくる。太さの選択はエマージェンスプロファイルを意識してできるだけ骨幅に対して直径の大きいものを選択する。

先述したが、#14は最終補綴物のTop Down Treatmentを考えた場合に8mmの長さを選択しても洞内に入れることを避けた。#25の最終補綴物とインプラント体の位置・角度・深さを見ると、いかにサイナスリフトを行っても埋入部位に苦慮することがわかる。個人差によっては鼻腔側に傾斜させなければならず、このような位置を選択することになる場合もある。#26の方が位置決定しやすいことがわかる。

側面からの断面におけるシミュレーション#25,26と#24の深さの関係と長さの選択を参考にしていただきたい。

 


 

【Case 3】

右側第1・2小臼歯部、第1大臼歯(#16-14)傾斜埋入症例

右側第1・2小臼歯部と第1大臼歯

本症例は、右側第1・2小臼歯部と第1大臼歯へのインプラント埋入症例である。上顎洞に若干の粘膜肥厚があり、耳鼻咽喉科の方から、ソケット、サイナスリフトをどうしても避けてほしいということで第1大臼歯では傾斜埋入を選択している。第1・2小臼歯に関してはエキスパンジョンを行わないと埋入するだけの骨幅がない。骨の高径は十分にあることと場合によってはマルチアバットメントで連結することも考え、あえて直径3.7mmを選択した。

アクセスホールはスクリューリテインとする方向で、できるだけ理想的な部分に持っていくのが原則ではあるが、#16では、傾斜埋入をしているために、どうしても頬側にアクセスホールがきてしまっている。

先述したが、#16は上顎洞内への骨造成ができないために、エキスパンジョンをしながら傾斜埋入とした。#15,14は骨幅がないことから、エキスパンジョンを選択している。最側面からの断面におけるシミュレーション#16,15,14の深さの関係と長さの選択を参考にしていただきたい。

 


 

【Case 2】

右側犬歯―左側側切歯間の前歯(#13-22)症例

本症例は、右側犬歯と中切歯、そして左側の中切歯部に埋入する症例である。エマージェンスプロファイルも考慮して直径4.7mmと直径4.2㎜を選択している。左側の犬歯と中切歯はブリッジとして連結するよりも中切歯に側切歯をカンチレバーにてつけることも考える。清掃性や周囲炎などの生じた場合に備えてできればスクリューリテインを選択したい。

アクセスホールはスクリューリテインとする方向で、できるだけ理想的な部分に持っていくのが原則ではある。

骨幅、長径ともに問題ないと考える。#12に埋入してインプラント・インプラント間が狭くなるのであれば犬歯、中切歯に埋入してブリッジあるいは、カンチレバーを選択することも重要である。

 


 

【Case 1】

右側中切歯―左側第1小臼歯(#11-24)症例

本症例は、右側中切歯、左側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯部に埋入する症例である。骨幅と骨の高径も十分であるので、エマージェンスプロファイルも考慮して直径4.2mmを選択している。

アクセスホールはスクリューリテインとする方向で、できるだけ理想的な部分に設定しようとしているが、中切歯、側切歯部では場合によりセメントリテインを選択する。

骨幅、長径ともに問題ないと考える。#21の唇側に骨が不足する可能性があるがこのような場合には他部位のインプラント形成窩形成時の切削片(自家骨)を骨添加することで大きな問題にはならないと考える。

 

 

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