シミュレーションに関する総説(2020.1)

【はじめに】

ガイドサージェリーにおけるシミュレーションはインプラント手術を行うための設計図であり、これが正しく行われていないとインプラント手術が適切に行われないことになる。

サージカルガイドはシミュレーションの診断通りに作製される。正しくシミュレーションができていないとサージカルガイドを用いることで不適切なインプラント埋入が行われることになる。建物に例えるならば、設計図通りに建物は建てられるわけであるから、その重要性が理解できる。


【シミュレーションにおいて心がけるべき要点】

  • シミュレーションにおけるインプラントの選択、埋入位置に関しては『いかに正解(*)に近づけるか』という課題を常に考え、よりよいシミュレーションのために絶え間ない努力と実際の臨床からのフィードバックが大切である。

*正解とは超長期予後をもたらすインプラントの長さ・直径の選択、インプラントの位置とともに、GBRなどの骨造成やエキスパンジョン、ソケットリフト、サイナスリフトなどの骨造成を行うか否かの術式の選択を適切に行うことになると考える。

  • インプラント体の直径、長さの選択は、骨幅、骨質などによる規制を受けるとともに、補綴物(上部構造)のエマージェンスプロファイルの考慮などをする必要がある。あくまで低侵襲にこだわるのか、骨造成をするのかなどは、患者さんの性別、年齢、患者さんの外科的侵襲に対する考え方なども含めて考慮するべきであり、個々の症例でその答えも異なる。
  • サイナス、ソケットでの診断と術式では1回法か、2回法を選択するのかなどの選択もしなければならない。

【シミュレーションにおける一般的な考え方】

サージカルガイドのシミュレーション時に留意すべき項目を参照

.診断においては、最終補綴物の形態・位置とともに清掃性やエマージェンスプロファイルなどを考慮して決定するいわゆるTop Down Treatment を考慮して診断を行う。

 

.WAX UPについては、(A)実際の模型で通常のWAX UPを行い、最終補綴を作成してもらう技工所(技工士)に依頼して作成してもらう方法と(B)デジタルWAX UPを選択し、シミュレーション画像上でWAX UP してもらう方法の2つがある。

WAX UPのための印象を光学印象で行う場合には必然的にBの方法になるが、現状では従来の診断用石膏模型を印象採得にて作成し、技工室でWAX UPしていただく、Aの方法が良いのではないかと考えている。

WAX UPの適正を診断するためには、咬合関係、歯自体の大きさ、軟組織の形態(固有歯肉、可動歯肉の状態の把握)と最終補綴物の形態との関係、補綴物の歯冠形態における舌側、口蓋側の咬頭の形態などをチェックすべきである。

咬合関係は、デジタルワックスアップでも確認できるが、実際の模型のほうが、その他の項目に関しては、確認することが容易になると考える。特に、補綴物の歯冠形態が舌側、口蓋側に突出していないかというポイントや、歯冠の舌側、口蓋側の咬頭などのチェックには実際に触ることでより確認しやすくなるために、現在の段階ではAの方法を選択している。

 

POINT

最終補綴物の歯冠の頬舌(口蓋)的な大きさに関しては天然歯と同じ大きさにするとの考えや側方運動を考慮して90%, 80%,70%など少し小さめに作成するとの意見がある。また、技工所、技工士さんによって作成される最終補綴形態は、異なることを十分に理解しておかなければならない。その点でも、この段階での技工所・技工士との連携は極めて重要である。

 

POINT

舌側、口蓋側、頬側への膨隆や、咬頭の高さなどは臼歯部でも舌感や頬を噛んでしまうなどの最終補綴物装着後の患者さんの訴えに直結する。その意味では、WAX UPの段階で模型上で触診して噛めることも重要である。

 

 

 

 

 

 

.シミュレーション時には、インプラント体を中心に断層面を回転させて、

  • 周囲の骨が十分にあるか
  • 骨質(皮質骨との関係)
  • 臨在歯の歯冠(サージカルガイドのガイドホールの位置や強度と関係してくる)
  • 臨在歯の歯根(近接することによる失活、根尖病巣がある場合には感染のリスク)
  • 上顎洞や下顎管などの解剖学的な要素

との関係をチェックする。

解剖学的な関係では

【上顎洞】

上顎洞までの距離がない場合にはソケットリフトやサイナスリフトを考慮して上顎では12㎜の長さを確保するようにする。骨質や深度などのインプラントの位置、直径によっては10mmを選択することもある。

また、上顎洞への骨移植の量に関しては、iCAT ランドマークシステムにおいては、移植量のシミュレーションもできるため、予測値を参考に移植骨の量を決定することができる。

【下顎管】

下顎管までの距離では、インプラント体と下顎管との距離は1-2mmを安全域として神経麻痺を避けるために確保する。そのために下顎のインプラント体の理想的な長さである10㎜を8㎜に変えても全く問題ない。場合によっては6㎜のショートインプラントを選択するか、垂直的骨造成も考慮する。この場合には、連結なども考慮するが、単独であっても問題なく機能する場合がほとんどである。

 

臨在歯とインプラント体の関係をチェックする場合には、歯冠部で、サージカルガイドの厚さが、隣接歯の歯冠とインプラント埋入のためのガイドのドリル孔との距離が薄い場合にはサージカルガイドが、同部で薄くなり術中に破損する可能性があることからその設計ともかかわってくる。ガイドの高さの選択や、強度の点に関しては、シミュレーション後、iCATの方から相談が来るため、シミュレーション時に、設計するものとしては、あまり気にしなくてもよいかもしれない。

 

 

残存骨の歯槽頂の骨レベルとインプラントレベル、特に深さに関しては、骨レベルのインプラントでもバッドジョイントの場合と、カラーが付いたタイプのインプラントそしてプラットフォームタイプのインプラントでは、その深さが異なることも考慮に入れる。プラットフォーム対応のインプラントであるFAINSIAでは骨よりできれば1~2㎜、最低でも0.5㎜は深く埋入したいと考えている。

 

 

骨幅のチェックも、インプラントの直径を選択するときに重要になる。深さにも影響されるため直径と長さの選択に各深度における骨の幅の把握は重要である。これと同時に、アクセスホールの位置は、インプラントの傾き(角度)を決定づける重要な因子になる。アクセスホールは最終補綴物の咬合面の真ん中に来るのが良いと考えるが、どちらかに傾けるときには機能咬頭を避けて咬合面の頬舌的な位置を決定する。

一方で、近遠心的な位置は、清掃性を考えて、必ず真ん中に来るように設定する。

 

インプラントと周囲の骨の状況や臨在歯との位置関係を確認するためにはインプラント断面での像を確認する必要がある。下顎であれば下顎管との距離、上顎であれば上顎洞、鼻腔との距離や位置関係を確認をすることが重要である。

 

 

TOP DOWNでインプラントの位置を決定したら同時に、粘膜レベルではどこにインプラント形成窩が来るか、そして骨の三次元イメージでの、位置、深さ、角度などを確認する。エキスパンジョンやGBRなどの骨造成を必要とする症例では、手術のイメージをつかむという意味合いもあり最終上部構造がある画像での、シミュレーションから粘膜レベル、骨レベルのイメージを確認することは重要である。

 

多数歯の場合や欠損が両側にわたる場合などには両側のバランスをとることも肝要となる。

 

 

 

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