インプラントは顎骨に埋入するものでありできれば周囲に最低でも2mm以上の骨があることが望まれる。
その点から、インプラントの長期予後のためにはインプラント周囲に骨を造成するほうが良い場合や、骨造成なしではインプラントが埋入できない症例も存在する。
インプラント治療の際にその予知性も含めて、歯を失った原因を知ることは重要であるが、同時に歯周病などで歯を失った場合や上顎洞が発達した症例では、以下の図のように解剖学的に、骨造成なしではインプラント治療ができない症例も出てくる。
骨造成の目的は
- 適応症の拡大
- 審美的な回復
が主なものとなり、特に前歯部では埋入直後は問題ないものの、術後数年たって、特に唇側の吸収が生じ問題となることもある。
しかし、ゴールデンスタンダードである自家骨の場合には、最骨を伴うこと、GBR,などの場合には同時に埋入するか異時で埋入するか、骨造成に対して骨量がどれだけ維持されるのかといった問題もあり、臨床家としては頭を悩ませるところである。
骨造成法の種類
少量の骨を造成させたい場合には
GBR
垂直的:オンレーグラフト
水平的:ベニアグラフト
ある程度の量の骨を造成させたい場合には
オンレーグラフト+ベニアグラフト
仮骨延長法
ということになる。
以下に、少量の骨を造成させたい。オンレーグラフトの例を示すが、採骨部は下顎部前縁であり、骨を粉砕しGBR膜(非吸収性メンブレン)で被覆している。チタンのガイドが入っており圧迫で押しつぶされないという利点はあるが、メンブレンを除去する手術の必要性、メンブレンを被覆するために減張切開を十分に行い、粘膜で十分に被覆してやる必要(外科手技)が必要となる。
外傷後の骨の水平的な欠損(不足)に対して下顎枝前縁から骨を採取してベニアグラフトを行った症例である。10数年前の症例であるが、場合によっては現在でもこのような骨造成を行わなくてはいけない場合もある。
前歯部のべニアグラフとは比較的多く使われる外科手技になる。骨造成を先行させてべニアを固定しているスクリューの除去時にインプラントを埋入する方がより安全である。
採骨部(口腔内)
上顎結節、前鼻棘、歯槽頂部はその近くにインプラントを埋入する場合に同一術野からの最骨ということで低侵襲である。また、移植というよりも少し、インプラント体の一部が骨から露出するのでそこをカバーするために使用する場合も多い。
一方、下顎枝部やオトガイ部は、きちんとした板状の骨やある程度まとまった骨が必要な場合に採取される部位である。いずれもオトガイ神経麻痺を生じるリスクを持っている。
下顎枝の方がリスクが少ないように考えるが、同部位よりの採骨でオトガイ神経麻痺が生じ、裁判になった症例を裁判上の事例として意見を述べる立場になったことがあり、外科的な知識・手技の未熟なものが行うべきではない。
骨造成の不成功
骨造成術142例(男性64例で、女性78例)を調べた本邦の報告では、歯槽骨造成術後に認められた合併症として、インプラントの脱落や感染などによる移植骨の吸収や脱落など、14例・約7%に認められ、術式別ではGBRを行った症例が6例、サイナスリフトを行った症例が4例、ベニアグラフトを行った症例が4例であったとされている。