【Q】
歯周病患者に対してインプラント治療はできるのか?
歯周病患者に対してインプラント治療を行うことは可能だが、サポーティブセラピーが適切にそして十分に行われることが必要不可欠である。
2つの論文を紹介します。1篇は慢性歯周炎の既往歴のある患者と歯周組織が健全である患者の間には、インプラントの短期及び長期の残存率に統計的な有意差はなかったが、サポーティブセラピーが行われていたにも関わらず、歯周病患者ではインプラント周囲炎が多く生じる事例があるので注意が必要であるとする論文です。
もう1篇は、歯周組織が健康な患者に対し、中等度歯周炎既往患者と重度歯周炎既往患者では10年後のインプラント生存率が有意に低く、特にサポーティブセラピーを受けなかった患者のインプラント失敗率は高いと示唆されるとしています。
論文I
Karoussis IK, Kotsovilis S, Fourmousis I. A comprehensive and critical review of dental implant prognosis in periodontally compromised partially edentulous patients. Clin. Oral Impl. Res. 18, 2007; 669–679
論文II
Roccuzzo M, De Angelis N, Bonino L, Aglietta M. Ten-year results of a three arms prospective cohort study on implants in periodontally compromised patients. Part 1: implant loss and radiographic bone loss. Clin. Oral Impl. Res. 21, 2010; 490–496.
その他、多くの文献でインプラント埋入前に患者の口腔内プラークコントロールを徹底的に行うことで、90%以上の高いインプラント残存率を示すことから、感染源のコントロールが良好なら、重度歯周炎既往患者にもインプラント埋入は可能と結論づけています3,4,5)。一方で、これらの報告は主に慢性歯周炎既往患者に対するインプラント埋入であり、歯周病の治療が完了していない侵襲性歯周炎の患者に埋入されたインプラントの残存率は低く、有意差はないものの、失敗リスクに関して侵襲性歯周炎患者が、健康な患者の4倍、慢性歯周炎患者の3.97倍も高いとの報告も見られます6,7)。