上顎洞底挙上術を伴うインプラント治療におけるトラブル

上顎洞底挙上術を伴うインプラント治療におけるトラブル、合併症、併発症は増加の傾向にある。その理由については不明であるが、下顎管の損傷はインプラントの埋入を浅くする、短いインプラントを選択するなどによって避けることができるが上顎洞手術に置けるトラブル特に上顎洞粘膜の損傷=シュナイダー膜の裂開などはその膜が非常に薄い場合などには不可避な場合も存在する。あるいは技術的に未熟な術者が果敢に挑戦を行いトラブルを生じるのかもしれない。いずれにしてもこれらのトラブルは患者さんにとってはマイナスでしかないことを肝に銘じたい。

一般的外科基本手技、インプラント埋入手技の重要性

まず、上顎洞底挙上術は外科的要求度の高い術式であることをにんしきしていただきたい。

外科基本手技(術野の展開、メス・剥離子・ピンセット等の手術器具の選択と操作、縫合法)が流れるように組み合わせ、正確で愛護的な手術を行うべきである。例えば、同時埋入する場合、既存骨高径の高さが不十分でもインプラント頸部だけで初期固定を獲得できるような、繊細なドリリング手技とインプラント埋入技術が要求される。

そのうえで、Step by stepでの診断が手術併発症の防止と適切な対応につながる。

その診断は、

術前診断: 臨床解剖の理解、病理学的状況の把握、画像診断、模型診断、術式の選択、手術シミュレーション

術中診断: あるべき解剖構造の確認、病的状況の確認、術前画像所見との照らし合わせ、併発症発症時の準則な原因究明

術後診断: 併発症の有無の確認、術中状況の回顧、術後画像検査所見と手術所見との比較検証に分かれる。

 

具体的な併発症を対策について記す。

【術中の出血】

以下に手術中の各段階における出血の原因とその対応について記す。

側方開窓部の骨溝形成時上に開窓部骨壁内を走行する血管を損傷した場合に骨壁が薄い場合には、血管の走行も確認できるが骨壁が厚い場合には、血管の走行が透けて直視することはできず、血管を損傷した場合には血管は断端から出血しながら骨内に引っ込む。このような骨からの出血の場合には、まずガーゼ圧迫を行い、電気メスやレーザーで焼灼止血するか 止血鉗子・スタンツェ型骨止血器で圧挫止血、さらには  骨ロウや止血剤(オキシセル、スポンゼル)を出血部位に塡塞させて止血を図る。

次に側方開窓部骨壁の剥離時に上顎洞側壁骨内を走行する血管が一部上顎洞粘膜の表面を側を走行し、骨から粘膜への移行部で損傷したような場合には血管は洞粘膜と骨内で出血し、洞粘膜部の出血は明視野に存在するが、骨内の血管は引っ込む。この場合には骨からの出血は先述した方法をとり、止血を図り、洞粘膜からの出血には、生理食塩水を浸したガーゼと吸引で出血点の同定し、電気メスやレーザーで焼灼止血 その後、上顎洞粘膜を吸収性コラーゲン膜や止血剤で被覆する。

さらに上顎洞粘膜の剥離時に洞内からの出血では分枝などから出血することもあり、出血点ならびに血管の走行が確認しづらい。上顎洞内からの出血、視野の確保ができないため、洞内にガーゼなどを充填し、圧迫止血を図ったのちに、開窓部骨壁を戻し、手術中止する。

【洞粘膜損傷、穿孔と術後感染】

過去の論文においても、サイナスリフトにおいて上顎洞粘膜の穿孔は比較的高い頻度で認められることがわかっている。ソケットリフトにおける上顎洞粘膜の穿孔頻度は比較的低いが、盲目的な処置であるため穿孔したことに気が付いていない可能性もあると考えられる。そして上顎洞粘膜の穿孔は、サイナスリフトにおいて最も高い頻度で生じる併発症で、平均約20%に起こると報告されている。

 

上顎洞粘膜穿孔を生じた場合に、手術を中止するか、修復術を選択してインプラントを同時に埋入するかは術者の判断である。このように修復術と同時に埋入されたインプラントの予後については、以下のような報告がある。穿孔10mm<に対して穿孔修復術と同時埋入されたインプラント残存率は、その他の群の残存率よりも有意に低く、穿孔10mm<が生じた場合には、上顎洞内へのブロック骨移植など高度な外科手技が求められる。

洞粘膜の損傷が、側方開窓部の骨溝形成時に生じた場合、その原因としては不適切な位置への骨窓設定及び形成やバーで洞粘膜を刺した。あるいは、上顎洞粘膜が薄い・上顎洞粘膜が肥厚して脆弱であることが考えられる。上顎洞粘膜の剥離時に生じた場合には、不適切な上顎洞粘膜剥離、上顎洞粘膜が薄い、上顎洞粘膜の厚さが一定でない、上顎洞底に凸凹・隔壁がある、上顎洞内に突出した歯根などが原因として考えられ、骨補填材料塡入時の損傷では、骨材料の充填時やインプラント埋入時の圧力が考えられる。

上顎洞粘膜の損傷、穿孔に対する対応としては、その基本は、上顎洞粘膜は剥離すると収縮して分厚くなるため、裂開部から離れた部位で上顎洞粘膜を剥離し、剥離された上顎洞粘膜にたるみが生じた後に、さらに裂開部の周囲を剥離して、そこに各種のメンブレンなどを用いて洞粘膜などを修復し、リカバリーする方法である。いかにいくらかの例を示す。

 

 

 

これらの上顎洞粘膜裂開の対処は外科的な修練が十分に行われている術者が行うものであり、もし対処出来ないのなら、一旦手術を中止し、対応できる歯科医師に3ヶ月以降の施術を依頼する勇気を持つことも大切である。

 

 

また、術前に洞粘膜の穿孔のリスクとそのリスクを高める因子について患者さんと共有しておくことも必要かもしれない。洞粘膜穿孔のリスクファクターとしては、既存骨高径、喫煙、隔壁の存在があげられ、術後上顎洞炎のリスクファクターとしては喫煙、洞粘膜穿孔、年齢がそして、術後創傷離開のリスクファクターとしては喫煙、洞粘膜穿孔、挙上範囲(欠損歯数)があげあれる。

 

 

【術後の合併症;鼻出血、感染】

手術直後の鼻出血の原因としては、上顎洞粘膜の裂開、手術翌日以降鼻出血の原因では上顎洞粘膜の裂開、上顎洞肥厚粘膜の自潰が、術後の上顎洞炎では、上顎洞粘膜肥厚部からの粘液性内容物の滲出(感染源)、上顎洞粘膜の裂開、上顎洞肥厚粘膜の自潰(感染源)などがあげられる。

 

 

そしてその対応としては、場合によっては切開を行い、骨補填材料の除去・洗浄及び投薬と頬側骨壁と骨補填材料の除去、吸収性メンブレンの設置・洗浄及び投薬を行い、様子を見ることになる。

 

 

 

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