頸部郭清術
頸部郭清術は、口腔がんの頸部リンパ節転移を制御する手術で, “口腔がん専門医” にとっては必須で基本の手術術式である。 既に100年以上もの歴史があり, この間にさまざまな変法や術式名称が生まれた。
口腔がんにおいても他の頭頚部がんや甲状腺がんと同じように全頸部郭清術が基本型とし, 肩甲舌骨筋上頸部郭清や上頸部郭清などを主とする選択的頸部郭清術が頻繁に行われている。選択的頸部郭清術を行うことで、術後の機能障害や変形の軽減化を目指し, 重要な脈管と神経など温存する。郭清領域を狭めても, 決められた領域のリンパ節群は残すことなく確実に郭清し, 治療成績を低下させないようにする。
頸部の皮膚切開
Y字切開:Y字の皮膚切開線を設定。縦切開に関してはS状にややカーブさせ設定する。
平行横切開:顎下部ならびに鎖骨上部に平行に横切開を設定する。
頸部の皮弁挙上
皮膚を#15メスにて切開後、ショ-加熱メスにて皮弁を広頚筋下に挙上する。
頸部郭清(上縁)
(上縁)顎下部において顔面神経を明示し、これを後方に追求して耳下腺内へ入るのを確認、同レベルで耳下腺を切離し、耳下腺下方部分は標本側とする。この時点で、後顎静脈を切断,結紮する。
頸部郭清(下縁)
(下縁)鎖骨上では、SCMを鎖骨のやや上方1-2 cmで切離し、総頚動脈、内頸静脈、迷走神経を確認後、内頸静脈を2-0絹糸にて結紮切断する。その後、腕神経叢を深さのメルクマールにして、鎖骨上縁の脂肪組織を上方に牽引しながら後方に切離を進める。この際、横隔神経、腕神経叢を確認保存する。
頸部郭清(後縁)
(後縁ならびに後上方部)僧帽筋の前縁で副神経を確認、切断し、肩甲舌骨筋も切断し上方に向かい中斜角筋、肩甲舌骨筋、頭板状筋の深さで剥離する。後上方では、SCMの上端を切断するとともに耳下腺および脂肪織を切断し、標本を前方へ起こしながら剥離を進る。標本を前方に起こしながら、剥離を進める。顎二腹筋後腹を前方に起こすことでを舌下神経などを確認し,明示し保存する。
頸部郭清(前半部)
(郭清組織前半部)標本を前方にロール状に剥離し,下方よりの第4,3,2頚神経を,結紮切断する。次に内頚静脈,迷走神経そして総頚動脈を明示し,まず迷走神経を膜組織より十分なcounter traction下にメスで切離し,ついで内頚静脈を温存しながら遊離する。最後に総頚動脈鞘の表層をメスにて触るように切離しながら、標本側とする。前方では胸骨舌骨筋の外側に沿って、上方に切開を加え、舌骨の高さにいたる。
頸部郭清(オトガイ部)
(オトガイ部の郭清)対側の顎二腹筋を明示するように浅層の脂肪組織を郭清する。(顎下部の郭清)最後に,標本を上方に持ち上げ,顎二腹筋を明示し,この時点で前方からの標本を顎舌骨筋の表層のレベルで後方に牽引した後に、顎舌骨筋を前方に筋鈎で、牽引し顎下腺を下方に思いきり牽引し舌神経のganglion, Warton氏管を結紮切断し郭清とする。