いびきや睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を考えるうえで、非常に重要な問題である。
睡眠は、サーカディアンリズム (Circadian rhythm):脳内の生物時計により管理される1日単位のリズム現象とホメオスタシス (Homeostasis):先行する睡眠時間の質と量により決定される補償現象で調整され、REM睡眠とNON-REM睡眠があり、睡眠時間によって定期的に繰り返されることがわかっている。
睡眠時の呼吸に影響を与える因子としては、寝る時の体位、性別、年齢、アルコール、睡眠薬、妊娠の有無などがあるが、肥満や顎が下がり、舌が咽頭方向に落ち込むことなどにより睡眠時無呼吸症候群になることが知られるようになってきた。
睡眠時無呼吸症候群は、夜間睡眠1時間あたりに認められる10秒以上続く呼吸停止状態が5回以上、すなわち apnea index が5以上、または睡眠7時間中30回以上起こり、日中傾眠や、その他の臨床症状を伴うもの。と定義される。
欧米では、肥満が主な原因ともされるが日本人を含む東洋人の場合には下顎が小さいことから、より気道が狭くなり、本症状を発生しやすいと考えられる。
OSASの病型としては中枢性、閉塞性、混在性に分類されるが、歯科口腔外科的なアプローチが有用なものは閉塞性と混合性の一部という認識でよいと考える。病因に関する因子の中で、 小下顎症、下顎後退症、顎骨の破壊 (リウマチなどの)顎形態異常が、歯科口腔外科的なアプローチの対象になる。
いびきと閉塞性睡眠時無呼吸症候群の関係は、非常に深いものがあり上気道に対して舌根ならびに口蓋垂が後退することでいびきが生じ、それが重度になると閉塞性の睡眠時無呼吸症候群を引き起こすと考えられる。
睡眠時無呼吸症候群の症状と症候に関しては以下のように非常に多岐にわたることが考えられる。
症状
1) 大きないびき
2) 過度の日中傾眠
3) 睡眠中の多動
4) 夜間の多尿・夜尿症
5) 早朝の頭痛
6) 性格の変化
7) 不 眠
8) 夜間の窒息感,息切れ
9) その他(性機能低下,夜間の寝汗,夜間の咳,逆流性食道炎の症状など )
症候
1) 肥 満
2) 多血症
3) 高血圧
4) 不整脈
5) 肺高血圧・右心不全
OSAS の診断
1)画像診断
・ セファロメトリー
・ CT
・ MRI
2)終夜睡眠ポリグラフィー
OSAS の治療 <保存的治療>としては、
- 内科的アプローチ
・ 肥満に対する減量
・ 誘因の除去 : アルコール → 禁酒,節酒
睡 眠 薬 → 内服中止,変更
仰 臥 位 → 側臥位での睡眠
・ 基礎疾患の治療
・ 経鼻式持続陽圧呼吸 ( NCPAP )
・ 薬物療法
・ 酸素療法
● 歯科的アプローチ
・ 歯科的口腔内装具 ( Sleep splint )
OSAS の治療<外科的治療>
- 耳鼻咽喉科的アプローチ
・ 原因療法 … 扁桃肥大 → 扁桃摘出術
アデノイド → アデノイド切除術
鼻中隔彎曲症 → 鼻中隔矯正術
鼻ポリープ → ポリープ切除術
・ 口蓋垂,軟口蓋,咽頭形成術 ( UPPP, LAUP )
・ 気管切開術
● 口腔外科的アプローチ
・ 小下顎症 → 下顎前方固定術
OSAS 治療における Oral appliance
・下顎を前方に位置付けて上気道を拡張させるタイプ
・舌を前方に位置付けて上気道を拡張させるタイプ
がある。以前は上下顎を完全に固定するスプリントタイプが良く使用されていたが、開口ができないために、就寝中に無意識に外すことがあったが、可動式にすることで下顎は下がらず、就寝中のある程度の下顎の運動ができるため装着感も改善されている。