インプラントオーバーデンチャーの適応や本数や埋入部位などについて

【Q】

インプラントオーバーデンチャー(Implant over denture)の適応、本数、埋入部位などについて教えてください。

インプラントオーバーデンチャー(Implant over denture)におけるインプラント体埋入本数に関してはシステマティックレビューの結果に基づく設計とその成績から上顎では4本から6本、下顎では2本以上埋入することが推奨されている。

上顎無歯顎 4〜6本以上 • 4 本未満ではインプラント治療の不具合が多い

• 前後的に広く多角的に配置

• 連結するほうが成績は良好

• 回転許容型は避ける

エビデンスは不足

下顎無歯顎 2本以上 • 犬歯あるいは側切歯間に配置

• 連結 / 非連結の骨吸収への影響は少ない

下顎無歯顎 1本 • 1 本でも良好な成績の報告がなされているが,長期的なデータは不足

引用: 日本口腔インプラント学会. 口腔インプラント治療指針2020.


上顎IOD(Implant over denture)については

1997年〜2001年までの初期の頃に発表されたほとんどの論文では、インプラント残存率が61〜84%と低い結果が示されていたが、これは当時のインプラントは機械研磨が主流であったことがインプラント残存率に影響していたと考えられる。

2016年に報告されたシステマティックレビューでは、最低でも4本の連結固定されたインプラントが必要であることが示されたが、2019年に報告されたメタアナリシスでは、上顎IODにおいて連結型と非連結型との有意差が認められなかった。(金澤 学ら:  IODとIARPDの最新エビデンス.日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 13 : 187-193, 2021)

また、上顎IOD(Implant over denture)における補綴形態に関しては口蓋部義歯床のない義歯を使用するのが望ましいとされている(高橋 利士ら:アタッチメントが上顎インプラントオーバーデン チャーのインプラントに及ぼす影響 : ボール,ロケーター,マグネットアタッチメントにおける比較. 2019-04.大阪大学歯学雑誌. 63(2) P.1-P.5)

上顎無歯顎に対して、通常4〜6本のインプラントを埋入した上顎IOD(Implant over denture)が標準的治療になっているが、各患者の解剖学的違いや客観的なエビデンス不足により、いまだにコンセンサスが得られていないのが現状である。

 

 


下顎2-IOD(Implant over denture)における埋入位置

下顎IOD(Implant over denture)において2本のインプラントを側切歯部に埋入するのが望ましいとされている。

理由として、

  • 義歯の回転運動を抑制(IODの前方と後方でのシーソーのような上下運動)前歯部での咬合時の義歯後方の浮き上がりを抑制
  • 2本のインプラント同士に平行性がとれなかった場合,連結が可能
  • オトガイ孔間におけるインプラント追加埋入の余地が増え,将来的にAll-on-4などの固定性補綴に移行可能

などがあげられる。(金澤 学ら:IODとIARPDの最新エビデンス.日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 13 : 187-193, 2021)

また、2-IOD におけるインプラント埋入位置について,オトガイ孔間の中でも前方(側切歯)が良いのか,後方(小臼歯)が良いのかについてエビデンスから検討してみたところ、

  1. 義歯の動きに関しては上記のごとく、小臼歯部よりも側切歯もしくは前歯部直下に設定したほうがよいという結論である。
  2. 応力解析有限要素法による応力解析のいくつかの論文結果からは,側切歯が最小,第一小臼歯が最小, 第二小臼歯が最小と報告された一方で,側切歯が最大などと結果がさまざまであった。
  3. 維持力
    下顎2-IODの維持力への影響を検討した研究では、小臼歯部に埋入したほうが側切歯や犬歯部に埋入するよりも維持力が改善したと報告されている。
  4. 患者報告アウトカム
    インプラント間距離が長いほうが Quality of Life (QoL)が良かったとの報告があるが、患者満足度が高いのは,インプラント間距離が長いことが影響するのではなく,顎堤が良好であることが影響する可能性がある。

以上のことから結論として義歯の動きの観点からは前方(側切歯)が推奨され、応力解析,維持力,患者満足度からは後方(小臼歯)が推奨される。しかし、どれも臨床研究に基づき強いエビデンスに基づく結果でないことを考慮して、下顎2-IODの埋入位置は症例ごと総合的に判断する必要があるとされる。(金澤 学ら:  IODとIARPDの最新エビデンス.日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 13 : 187-193, 2021)

アタッチメントの動きの許容性に関しては上記のごとくであるので参考にしていただきたい。

 

 

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