2000-2005年ころのインプラント治療は補綴主導よりも手術主導で、骨のある所にインプラントを埋入し、その位置にどうにか歯を作り装着してインプラントとして機能させようという時代であったと認識している。
骨があるところに入れるインプラント治療であり、Top down treatment という概念が広まる前のインプラント治療とも言える。
以下に症例を示す。
症例は下顎嚢胞摘出開窓術後の症例で骨の厚みなどに問題がなかったとは言えないもののオトガイ神経を避けるために#45部には埋入せず、#46部に傾斜埋入を行った症例である。すべてを義歯型の補綴物で対応すべきかどうかに関しては現座では疑問が残る。補綴治療の平行性を鑑み、今でいうマルチユニットのようなものをDTに作成願った症例である。
症例は右側下顎良性腫瘍(エナメル上皮腫)の腸骨による再建後のインプラント治療症例である。腸骨による下顎再建では腸骨の位置が正常な下顎骨の位置とは異なるために十分な補綴学的な検討が行われるべき症例であったと考える。この時代においては、ソフトの問題やシミュレーション自体を取り巻く環境の整備ができていなかったために、致し方のない治療ではあるが補綴物の最終形態を考えるともう少し、今であればよいものが作れると同時にインプラント埋入位置や角度も改善できたかもしれないと思われる。粘膜移植なども含めて再度検討したい症例である。
本症例もエナメル上皮腫に対する下顎骨半側切除後、遊離腸骨による下顎骨再建後へのインプラント治療である。腸骨に対して仮骨延長法を適応して骨の高さを増大させた後にインプラント埋入を行っていっる。遊離腸骨に骨膜はなく、仮骨延長の血流を十分に維持することが重要であった症例である。インプラントの埋入は手術主導で行われており、近心の1本に関しては方向の問題からサイレントにせざるを得なかった。
症例は下顎歯肉癌に対して、顎骨区域切除を行った後に血管柄付き腓骨皮弁で再建した後にインプラント治療を行った症例である。皮弁の処理など軟組織の問題と咬合の問題がありその点で粘膜移植、若干の反対咬合などの苦労があった症例である。
症例は前歯部も含めての多数歯欠損症例です。2000年当時の手術主導のインプラントでは周囲に十分の骨を確保するという点のみを重視して埋入するためにその後の補綴が非常に煩雑なことになる症例が多かった気がします。シミュレーションがなされるようになった後にはこのような症例は減りましたが、今でもシミュレーションなしで埋入を行っているクリニックでは同様のことが行われているかもしれません。歯科医学は確実に進歩しており患者さんが得る恩恵も多くなっていると思います。3Dテクノロジーはもはや常識の域になってきていると思います。