本内容は、私見ではあるが、日本口腔外科学会地方会の同題名でのワークショップで議論した内容であり、多くの施設での治療後の経過観察の指針と大きく異なることはない。その点から是非参考にしていただきたい。(2017.11.22)
【癌治療後の経過観察の目的】
経過観察の目的は以下のような事象をできるだけ、早期に発見して治療、対応に当たることである。
1.原発巣および頸部再発
2.頸部リンパ節への後発転移
3.遠隔臓器への転移
4.異時性重複癌
【口腔癌における経過観察の期間・間隔と検査法】
期間 少なくとも治療終了後5年間.
間隔
術後経過年 頻度
1 1~2回 /月
2 1回 /月
3 1回 /2か月
4 1回 /3か月
5 1回 /4か月
検査法
■再発、原発巣診査
視診、触診、造影CT、MRI
■頸部リンパ節後発転移
超音波、造影CT
■重複癌
胸部X線、胸腹部CT、FDG PET-CT
■その他
上部消化管内視鏡検査、腫瘍マーカー
口腔癌の術後・経過観察で有効と思われる検査
CT ならびに PET-CTを以下の期間で検査することが望ましい。
術後1年以内は2~4週間毎の視診、触診
(3)、6、12ヶ月後にFDG PET-CT検査
2年目6か月に一回
3年目以降12か月に一回
必要に応じて超音波検査やCTを追加
*PETの利点
利点
・一度に広い範囲を撮影できるため予想外の部位に転移した腫瘍が検出可。
・小さなリンパ節に転移があるかないかの判断がより正確にできる。
欠点
・解像度が低い。
・以下の臓器では検出困難で他の検査との併用が必要。
泌尿器科系・脳・心臓・肝臓 :正常でもFDAが集積する臓器
脳・心臓 :多くの糖を消費する
腎臓、尿道、膀胱 :FDAの排出経路である。
・糖尿病患者では検出困難
・CT検査を併用することが多い
頭頸部癌に対するPET-CTの保険適応
・他の検査、画像診断でその存在を疑うが病理診断により確定診断が得られない患者.
・他の検査、画像診断により病期診断、転移、再発の診断が確定できない患者.
科学的根拠
・原発巣の検出でPET/Cは造影CTやMRIより有用である。
J Nucl Med. 2008 Sep;49(9):1422-8.
J Nucl Med. 2009 Aug;50(8):1205-13.
・頸部リンパ節転移の評価でPET/CTは感受性、特異性ともに造影CTより高い。
Ann Nucl Med. 2009 Jan;23(1):73-80.
Head Neck. 2007 Mar;29(3):203-10.
・頸部リンパ節転移の評価で PET/CTと造影CTで差がない。
J Nucl Med. 2009 Aug;50(8):1205-13.
口腔癌の局所・頸部再発ならびに転移を早期に検出するためには、局所再発、頸部再発では、視診、触診が、頸部転移では、触診、超音波エコーならびにPET-CTが、転移ではPET-CTが有用であると考えている。
以下に遠隔転移のPET-CT所見の例を示す。