口腔癌の再建に使われる皮弁

口腔癌の再建手術

口腔癌の手術では腫瘍の大きさによっては、広い範囲の切除が必要になる。口腔は食事、会話、呼吸といった生活に重要な組織があるため、切除によって大きな欠損を生じた場合、欠損部を修復する必要がある。移植の方法には有茎組織移植(皮弁の血管を通じて血行を保持するもの)と遊離組織移植(皮弁の栄養血管を移植床の血管とつなぎ合わせることで血流を確保するもの)がありますが、現在はマイクロサージャリーによる遊離組織移植が主流となっている。マイクロサージャリーとは、移植する組織の栄養血管(動脈・静脈)を移植部位の血管とつなぎ合わせる手術で、通常は手術用顕微鏡を使って行い、マッチ棒程度の太さの血管を、髪の毛ほどの糸でつなぎ合わせる方法である。有茎皮弁では移動出来る距離に限界があり、大きな欠損を修復出来ないという欠点があるが、遊離組織移植では皮弁の移動が自由であり、動脈・静脈それぞれを頭頸部の血管とつなぎ合わせる事で移植組織に血液の流れを再開させ、生きた組織の移植が可能になる。

  1. 有茎組織移植

(1)大胸筋皮弁(だいきょうきんひべん)

最も古典的な組織移植法の一つで、前胸部の乳首の周辺から組織を採取する方法である。皮膚、皮下脂肪に大胸筋を含めて皮弁を採取します。皮弁を栄養する血管(胸肩峰動静脈)は鎖骨の真ん中辺りを基点にしているので、この部分を軸にして皮弁を頭部の方向に反転させて移植を行う。血管吻合は必要ないが軸の部分が固定されているので移植に若干の制限がある。胸部から採取した皮膚・皮下脂肪・筋肉を鎖骨の高さまで移動する。通常採取した部分の皮膚は縫合閉鎖可能であるが、大きな皮弁を採取した場合は皮膚移植が必要になることがある。女性では乳房の変形が強く出るのであまり使用出来ない。

(2)DP皮弁 (胸三角筋部皮弁)

前胸部で鎖骨に沿って巾約10cm、長さ約20cmの皮膚と皮下脂肪を採取する方法である。

大胸筋は採取しない。皮弁を栄養する血管は内胸動静脈であり、この部分を幅広く軸にして皮弁を頭部の方向に回転して移植する。通常採取した部分は植皮術が必要で、皮膚移植を行う。

  1. 遊離組織移植

(1)遊離腹直筋皮弁(ゆうりふくちょくきんひべん)

腹直筋は前腹部にある、いわゆる腹筋の一つで、筋肉を栄養する血管が同時に腹部の皮膚も栄養しているため、腹直筋の一部または全部と腹部の皮膚・皮下組織を同時に採取して移植する。腹直筋皮弁は、再建に用いられる皮弁のなかでも、採取できる皮膚・皮下脂肪・筋肉の量が比較的大きいという利点がある。栄養血管(深下腹壁動静脈)が長く採取できることも利点となる。

(2)遊離前腕皮弁(ゆうりぜんわんひべん)

前腕には、親指側を流れる橈骨動脈と小指側を流れる尺骨動脈と2本の血管が存在する。前腕皮弁では、前腕部分の親指側を流れる橈骨動脈、静脈とそれによって栄養される皮膚を用いる。前腕皮弁は、薄い皮膚を採取し細工がしやすいという特徴である。また、血管が長いことや、皮膚への血流も安定しており操作性が良い皮弁である。

(3)遊離前外側大腿皮弁(ゆうりぜんがいそくだいたいひべん)

大腿(太もも)の前側やや外側から組織を採取する方法である。皮膚、皮下脂肪とこれを栄養する血管(外側大腿回旋動静脈)だけで採取する事が可能であるが、必要に応じて大腿の筋膜、筋肉の一部を同時に移植する場合もある。大腿皮弁は前腕皮弁と腹直筋皮弁の中間くらいの皮下脂肪の厚さがあり、中程度の頭頸部の欠損に対して有用な皮弁である。通常採取した部分は縫合閉鎖可能であるが、大きな皮弁を採取した場合は皮膚移植が必要になることがある。

(4)血管柄付き遊離腓骨皮弁(けっかんへいつきゆうりひこつひべん)

下腿(膝から下のすねの部分)の外側から、骨・皮膚・皮下脂肪・筋肉の一部を採取して移植する方法です。下腿には太い脛骨 ( けいこつ ) と細い腓骨 ( ひこつ ) の2本があり、体重はほぼ全てを太い脛骨で支えているため、腓骨を採取する事が出来る。移植のために比較的長い血管(腓骨動静脈)が採取できること、数箇所で骨を切っても血流が安定しているので顎の骨の形を再現するのに有利であることが利点である。頭頸部では下顎骨や上顎骨の再建によく用いられる。

 

 

 

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