【Q】
インプラント周囲の角化組織(固有歯肉)は必要なのでしょうか?
またどれくらいの幅が必要か教えてください。
角化組織は存在したほうがよく、安定してインプラント周囲炎を惹起させないために2 mm以上は必要であると思います。
その理由としては、
- プラークの除去が用意になる(ブラッシング時の痛み軽減)1,2)
- 軟組織退縮の防止1)
- 辺縁骨吸収の防止2)
- Bleeding on Probing (プロ-ビングした時の出血)陽性率の低下1,2)などの報告がある。
1)Schrott AR et al. Five-year evaluation of the influence of keratinized mucosa on peri-implant soft-tissue health and stability around implant supporting full arch mandibular fixed prosthesis. Clin Oral Implants Res 2009.
2)Perussolo J et al. Influence of the keratinized mucosa on the stability of peri-implant tissues and brushing discomfort: A 4-year follow-up study. Clin Oral Implants Res 2018.
インプラント周囲軟組織に対する角化組織の影響
- 角化組織幅2㎜未満の部位では、2㎜以上の部位と比較して舌側プラーク堆積量が有意に多く、BOP率も有意に高かった。
- 角化組織幅2㎜未満の場合、頬側軟組織の退縮量も有意に多かった。
角化組織の幅と術後の骨吸収量
インプラント周囲の角化組織幅2mm以上の軍に比べて、2 mm未満の群では、
- プラークインデックスとBOPが有意に高かった。
- ブラッシングの困難さが有意に高かった。
- 4年経過時の骨吸収量が有意に多かった。
- マルチレベル分析の結果、角化組織幅と経過年数が辺縁骨レベルに有意に影響を与えた。
インプラント周囲炎のリスク因子の評価
多変量解析の結果、インプラント周囲炎の罹患は喫煙、PCR >20%、上顎への埋入、角化組織幅2mm未満と関連ありとのことで、角化歯肉の幅のオッズ比は2.32であった。
固有歯肉、角化組織がインプラント周囲に必要なことは多くの報告から理解できたと思います。では、角化組織が2㎜以上ない場合にはどのようにしたらよいのかですが、遊離歯肉移植術を行うことになります。
遊離歯肉移植術で獲得できるインプラント周囲の角化組織の幅について
角化組織幅2mm未満の部位に遊離歯肉移植術を施した場合、平均で2.56mmの幅の増加を得ることができますが、角化組織幅2mm以上の部位では幅の増加量が平均0.55mmと期待したほど角化組織幅の増加がみられないことがわかっています。
このことから、プラークコントロールや辺縁骨吸収予防に対して、インプラント周囲角化組織幅は2mm以上の確保が望ましいのですが、すでに2mm以上の角化組織幅がある場合、特別な理由がない限り遊離歯肉移植術を行う必要はないと結論付けられると考えます。