GBR・GTR

GBR=Guided Bone Regeneration  GTR=Guided Tissue Regeneration

インプラント治療が導入された当初はインプラント生存率を確実にするためインプラント周囲に骨が十分にあることが必要条件であった。骨が少ない部位に対して適応症を拡げるために骨移植、仮骨延長、GBRについて検討が進められ現在に至っている。


GBR(guided bone regeneration)法とは

GBRの基本概念

GTRの基本概念を骨組織の単独再生に応用したもの。

GTR:歯周組織の進行スピードを調節することから考え出された。

通常のフラップ手術でバリアメンブレンを骨と歯根膜の間に設置し、骨内欠損部への上皮の侵入を食い止めることで成長速度の遅い歯根膜の成長待ち、新付着を得る。

GBRはメンブレンを用いて骨組織以外の組織の侵入を阻止し、選択的な骨の再生を図る方法である。GBRには、メンブレンを用い、骨移植を併用するものと併用しないものがある。骨誘導再生法と訳せるがメンブレンによって骨を誘導するわけではない。

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インプラント埋入とGBRとの組み合わせ

インプラントとGBRの組み合わせは、そのタイミングにより大きく2つに分けることができる。

1.Staged Procedure(段階法)

事前にGBRにより骨再生し、その後、通法に従いインプラント処置を行う方法で、まずGBRで必要な骨量まで増大し、それが完全に終了後に一般のインプラント処置に移る方法。

段階法は最初にGBRを単独で行い、必要な骨再生が得られた後に、通法のインプラント処置を行う。

GBRでメンブレンを設置しておく期間は一般的に6~9ヶ月となる。この期間は骨の欠損状況で多少異なると考えられるが、一般的に半年と理解すれば良い。非吸収性メンブレンではこれを除去するときに同時にインプラントの1次オペを行う。

本邦の長所としては、①1回法、2回法インプラントが選択できる。②理想の位置にインプラントが植立出来る。③GTR、インプラントのそれぞれの併発症が相互に影響しない点が挙げられる。一方、短所としては、同時法と比較して全体の治療期間が長いことが挙げられる。

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2.Simultaneous Procedure (同時法)

フィクスチャー埋入と同時にGBRを行う方法で、フィクスチャーの初期固定が得られていることが必須になる。初期固定が得られていない場合には段階法が選択されるべきである。長所として段階法より全体の治療期間を短縮出来き、短所として、GBRを失敗するとインプラントも失敗(オステオインテグレーションの失敗)につながり易い点が挙げられる。

本法の長所としては、段階法に比較して全体の治療期間が短いことが挙げられ、短所としては、①理想の位置にインプラントの植立が出来ない場合がある。②GTR、インプラント

それぞれの併発症が相互に影響する。③GTRの失敗はインプラントの失敗ということが挙げられる。

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GBRの適応症

●インプラント埋入時の開窓状骨欠損

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●骨内欠損 (抜歯窩即時埋入など)

●抜歯即時GBR

抜歯後に、骨を温存するために行う手技であるが、①本当に完全閉鎖が必要なのか。②完全閉鎖によって可動粘膜が最終的なインプラント治療の際にインプラントに接しないのかなどを検討して適応を決める必要がある。

・長所としては、骨吸収が生じていないことから、比較的骨の確保が容易であり、また、全体の治療期間の短縮できる点がある。

・短所としては、フラップによるメンブレンの完全閉鎖が容易でなく、そのためメンブレンの露出や、感染のリスクが挙げられる。

●歯槽堤の頬舌的幅径の不足

●歯槽堤の垂直的幅径の不足

GBRの基本術式

  1. 切開およびフラップの剥離
  2. 歯槽頂切開
  3. ブーザー法(側方切開)が多く使われたが、歯槽頂切開で行う術者も多い。減張切開や確実な縫合がきちんとされていない場合にメンブレンが、露出しやすいが、確実な骨膜減張切開とマットレス縫合および単純縫合の組み合わせによってメンブレンの露出を防ぐことが出来る。また、フラップへの血流確保の面でもブーザー法に比較して、リスクが少ない。当然、縦切開も必要に応じて入れるが、フラップは台形状が原則。%ef%bc%91%ef%bc%91ブーザー法側方切開はGBR以外でも以前から行われている方法であると思われるが、GBRではこの側方切開と後で出てくる縫合法をセットでブーザー(ベルン大の口腔外科教授)が広めたのでブーザー法と言われることもある。Split & Full Thickness Flapを作製するための切開法である。メンブレンの上に切開線が来ないように考慮している。また、フラップ先端がベベル状なので、切開部がズレてもいきなり露出しない。部分層を設けることによって、フラップがズレてもメンブレンがすぐに露出しにくいように考慮している。%ef%bc%91%ef%bc%92

    移植母床のプレパレーション

    GBRの原理からして抜歯後早期の欠損部(抜歯窩)では骨が一部再生を始めていると考えられるが、まだ未成熟な軟組織の状態である。この組織は骨になる組織と歯肉結合組織になるものとの境がない。従って徹底的に除去することが必要になる。また、骨の表面が皮質化している場合には穿孔し、骨髄側からの血液供給を行う必要がある。穿孔操作によりGBRの確実性を増すことができる

    メンブレンの選択と調整

    原則としては、インナーポーションで欠損を被うサイズを選択する。形状としては、種々のものが各メーカーから発売されている。

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その他、コラーゲンとして GuideOss・Bio-Gide (約16週 で吸収)、Ossix Plus(約16~24週で吸収)、OptiMatrix (約25週 で吸収)、Renovix(約16~18週 で吸収)

  • ポリ乳酸膜 としてEpiGuide ・Guidor・ Cytoflex(約21~64週で吸収)
  • 牛コラーゲン OsseoGuard (約26~38週で吸収)、OsseoGuard Flex・Cytoplast RTM・RCM6・Mem-Lok RCM・BioMend Extend (約18週で吸収)・ConForm (約12~24週で吸収)、Zimmer CurV (約22~26週で吸収)
  • 無細胞化ヒト真皮 Alloderm GBR・ Alloderm (約8~24週で吸収)OrACELL (約8週 で吸収)、ペリカ-ディアム CopiOs (約17~26週 で吸収)、Mem-Lok Pericardium (約16~24週で吸収)など

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スペースメーキングと骨移植

スペースメーキングは、メンブレンの強度にもよるが、骨の支えがある場合には組織によりフィットするタイプを選択することが多い。

ある程度の強度を持つタイプ、特に非吸収性のメンブレンでは、辺縁をきちんとトリミングしないと、そのことによって、膜の露出などをきたす結果になる

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切開線よりも1mmは近接する骨膜下に入れ込むほうが良いと考える。一方で、トリミングで最も注意することは周囲の歯にメンブレンが接触しないようにすることである。メンブレンが接触していると、フラップで閉鎖しても歯頸部近辺が開放創となってしまい外部からバクテリアが侵入し感染を来す恐れが非常に高い。

%ef%bc%91%ef%bc%95スペースメーキングに関しては、メンブレン単独またはフィクスチャーにより再生スペースの確保が可能な状況(Natural Space Making)はそれで良いが

メンブレン単独ではスペースメーキングが出来ない場合(Non-Natural Space Making)には補助的処置が必要である。例えば; ボーングラフトをする場合や、スクリュウを支柱にする場合、あるいはTRメンブレンを使用する場合などがある。最近はボーングラフトをしても尚、TRメンブレンを使うことが多い。TRメンブレンはスペース確保の目的もあるが、メンブレンの形状を任意に決め易いからである。

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骨の採取に関しては、オトガイ部や下顎枝前縁があるが術野の確保から考えるとオトガイ部が有利ではあるが知覚鈍麻のリスクから考えれば、下顎枝前枝もよい。ブロックで採取せず、切削片で採取する場合には自家骨の採取として、「骨カンナ」が便利であり各メーカーから発売されている。

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メンブレン固定

メンブレンの固定には、押しピンが便利である。ただし、部位によっては操作性の問題で 使用できないこともある。その他、スクリューで固定する場合もある。

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縫合

テンションフリーフラップにするために 可動歯肉と固有歯肉の境界を少し越えたところで頬側フラップ内面の骨膜を水平方向に切開し減張処置を行う。ランダムに骨膜にメスを入れる方法も記載されていることがあるが、これでは殆どのケースで余裕を持ったテンションフリーンフラップにはならないので注意する。縫合で重要なことはHolding Sutureを行い 更にClosing Sutureすることである。大原則はマットレス縫合により、Holdし、次に単純縫合によりCloseする。Holding SutureとClosong Sutureはそれぞれ目的が異なることを理解しなければならない。Holding Sutureの目的は、フラップ先端を閉じることではなく、頬・舌側のフラップを保持することが目的であり、フラップへの糸の応力を緩和させるためにも必然的にマットレス縫合によるHolding Sutureが一般的に行われる。

Closing Sutureはフラップ先端を閉じることが目的であり、先のHoldoing Sutureがあるため、このフラップ先端はテンションが掛かっていない。そのため、ケースによってはマットレス縫合によるClosing Sutureを行うこともあるが、一般には単純縫合で十分である。

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【術後の合併症】

●メンブレンが早期に露出

メンブレンが早期に露出した場合は、最終的には本来の所定期間前に除去する必要がある。感染がコントロール出来ない場合にはさらなる感染防止のために即時にメンブレンを除去すべきである。メンブレンの骨造成部が露出した場合には、それ以降に、バクテリアが骨造成部に感染し、再生組織に影響を与える可能性がある。よって、出来るだけメンブレンは留置したいが、露出したら感染コントロールをしても3週後には除去する必要がある。

【吸収性・非吸収性メンブレン】

非吸収性メンブレン

・利点

①確実にスペースメイキングできる

②バリア機能の期間をコントロールできる

③メンブレンの吸収過程がなく骨形成に悪影響を及ぼす吸収産物がない

④長期の経験による確実な外科術式が存在する

・欠点

①メンブレン除去手術が必要

②メンブレンが露出して合併症が起こる頻度が高い

③患者に受け入れられにくい

④術式が繊細である。

 

吸収性メンブレン

・利点

①メンブレン除去手術が不要

②2回法で行う際、簡素化した外科術式が可能

③より安価である

④患者に受け入れられやすい

・欠点

①バリア効果の期間がコントロールできない

  1. 吸収することで創傷治癒や骨再生に影響を及ぼす
  2. 骨補填材料が必要

吸収性メンブレンは材質的に2つに分類される。

合成高分子系材料

この系統では、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマーあるいはそれぞれのコポリマー(共重合体)が使用される。これらは、生体内にも存在するもので安全性も確保されているといえる。生体内で分解すると、水と二酸化炭素だけになり、最終的には排出される。吸収性材料を用いた各種医療材料で、最も多く使用される。これらの分子量や配合比率によって、特性が異なってくる。

動物由来材料

牛などの動物由来のアテロコラーゲンで、狂牛病(BSE)発生の恐れのある原産国動物由来材料は殆ど承認されない。国内では承認されたものが使用されている。

GBRの外科的注意事項

  1. GBRを行う部位の粘膜はしっかりしているのか?
  2. フラップのデザインは適切か?
  3. 原則的に縦切開を隣在歯の遠位から歯肉歯槽粘膜移行部を越えて、大きく設定する粘膜骨膜弁を確実に形成できているのか?
  4. フラップは全層弁で形成する。

・骨膜を損傷しないために確実に欠損部歯槽頂切開、

隣在歯の歯肉溝切開、縦切開を骨膜までしっかり行うことが重

骨面のデブライドメントを行っているか?

メンブレン直下は骨しか存在してはならない。

インプラント埋入位置は適切か?

審美性と長期安定性を考慮して理想的な埋入位置であるComfort zoneへ埋入する必要がある。

メンブレンの設置は適切か?

メンブレンの設置は骨欠損辺縁から最低2~3mmカバーする必要がある。

メンブレン骨欠損間に隙間がある状態だと、軟組織が侵入し、確実な骨が再生されない

骨面に残存する軟組織を生食水下のラウンドバーで徹底的に除去する

メンブレンの固定用ピンまたはスクリューを使用しているか?

縫合時メンブレンが移動すること、縫合針でメンブレンを損傷しないこと、補填材料が崩れないようするために固定する必要がある

骨膜減張切開が確実にできているか?

全層弁内面の最深部の骨膜に1本のラインで両端確実に行う。

その際の最深部は筋層の裏打ちのある厚みのある部分になる

9)縫合が確実にできているか?

マットレス縫合によるホールディングスーチャーと単純縫合によるクロージングスーチャーのコンビネーションが原則である

10)術後管理は適切か?

11)メンブレンの除去は適切か?

除去の際には新生骨と適合しているため丁寧に行い、新生骨を確実に粘膜で覆うように縫合する

 

  • GBRが必要な理由

十分な骨がない部位にインプラント埋入を行うと、埋入時は問題ないものの数年間、経過することでインプラント体の歯肉よりの露出を生じることになる。

 

GBR 症例(3Dテクノロジーを用いていなかった時代の手術例)

GBR症例では切開・骨膜粘膜弁の剥離・縫合を行う必要性があるが、埋入位置、方向などは3Dテクノロジー(サージカルガイド)を用いることで計画性を持つことになる。

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