これからご紹介する失敗例は、院長:新谷悟が昭和大学歯学部教授(昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学講座 主任教授)ならびに東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックで、他院で受けられたインプラント治療の失敗例をリカバリー(回復)した症例ケースになります。
このようなインプラント治療の失敗例を示すことで、患者様が二度と不利益を被ることがないように切に願い、下記に失敗症例を解説します。
症例1(某インプラントセンター失敗例)
インプラントが上顎洞に落ち込んで反対を向いています。患者さんは上顎洞炎を起こし、鼻から膿が出ており、いわゆる蓄膿症になっていた。明らかに不適切なインプラント治療が原因の蓄膿症である。
丸で囲まれたインプラントが、隣のインプラント体と異なり上を向いて、上顎洞という空洞の中に落ち込んでいるのがわかります。上顎洞の底が炎症で骨が溶けているのもわかります(点線部分)。
インプラントが迷入している右側(画面上では左側)の上顎洞は炎症で膿が充満し白くなっています。左側(画面上では右側)の上顎洞は空気が入っているために黒く写っています。
症例2(某歯科医院の失敗例)
左側の上顎洞の中にインプラント体が横たわっています。摘出手術が必要でした。
上顎壕内へのインプラント迷入症例。上顎洞に迷入したインプラント体が、上顎洞の底に横たわっている。摘出には手術が必要で患者の負担は大きい。
症例3(某デンタルクリニックの失敗例)
骨に埋めるはずのインプラントが歯肉に突き刺さっています。骨を見ずに歯肉の上からインプラントを埋入するテクニックを未熟な術者が見よう見まねで行った結果です。患者様があまりにも可哀そうです。
赤い線で囲んだ骨に入るべきインプラントが、まったく顎の骨に埋まっておらず、青い線で囲んだインプラント体は歯ぐきに打ち込まれている。
症例4(上顎洞迷入例)
前述の症例に似ているが、やはり後方のインプラントが上顎洞内に迷入している。
症例5(骨造成の失敗例)
骨造成には、細心の注意と高度な治療技術が必要で、未熟な術者による手術は絶対に避けなければなりません。感染した部位のみならず骨採取部位の侵襲を考えると患者様の負担は予想以上に大きい。
骨造成の失敗例。べニアグラフトという方法で、骨を増やそうとしたものの骨は生着せずに感染を起こしている。除去を余儀なくされ、リカバリーが大変な症例であった。
症例6(下顎前歯部で出血し気道が圧迫され呼吸困難を生じた症例)
下顎前歯部にインプラント埋入した時に、舌側へ穿孔し血腫を形成し気道を圧迫して呼吸困難になり、緊急搬送された症例である。絶対に起こってはいけない事例であるが、患者様は一命を取り留めた。
患者様の了解の下、このようなことが2度と起きないために提示する。(写真は気道確保後のもの)
口腔底(くちの底)の部分が出血で拳上して気道が圧迫され息ができていない状態である。
症例7(インプラント周囲炎による骨吸収しインプラントが脱落した症例)
インプラント埋入後8年経過例。インプラント周囲炎による骨吸収でインプラント周囲から排膿して、インプラントが脱落した症例です。インプラント除去と骨造成を必要とする症例ですが、どうにかリカバリー手術を行いたいと思います。
本当であれば点線部位まで骨があるはずが、不適切なインプラント治療で実践まで骨が吸収している。インプラント外科の重要性がわかる。
症例8(左側下顎臼歯部のインプラント失敗症例)
2本のインプラントはインプラント周囲炎で歯列から大きくゆがみ、周囲から排膿を伴い、痛みを訴えてこられました。除去して、骨が再生してからの再度のインプラント治療になりました。
症例9(多数本のインプラントが適切な位置に埋入されなかったことで排膿している症例)
多数本のインプラントが適切な位置に埋入されなかったことで、排膿している。
多数本のインプラントを連結すると、インプラント周囲炎を生じて、骨から脱落していても患者さんの認識も遅れ、気づいた時には悲惨な結果になる。自らのインプラント治療が失敗していることがわかっても誤魔化す治療医がいることは非常に残念である。
症例10(前歯のインプラントが適切な位置に埋入されなかったことで排膿している症例)
前歯のインプラントが適切な位置に埋入されなかったことで、インプラント周囲炎を惹起して、インプラント体の周囲から排膿し、インプラント体の抜去を行った症例。
この症例も連結されており、排膿が持続するもインプラントの動揺などなく、ここまでの結果になったと考えられる。
症例11(前歯の骨造成失敗症例)
前歯の骨造成を顎骨の他部位から行い、そのほとんどが吸収されて、鼻腔近くまで骨が欠損した症例、ごく一部に左側の一本のインプラントが骨とわずかについているため、連結すると一応、歯の部分は付いている。
インプラント周囲炎によって周囲からの排膿が止まらず、さらに骨の吸収は進行している。
症例12(臼歯のインプラントを痛みと排膿で抜去となった症例)
第2大臼歯部と第3大臼歯部のインプラント。どうして、親知らずの部分にインプラントを埋入して連結する必要があるのか。
第3大臼歯部のインプラントは抜去して、第二大臼歯部のインプラントの上部構造(歯の部分)をやりなおして機能させた。
症例13(インプラントが動揺している症例)
「入れ歯が落ちたり、動いたりしないようにインプラントを入れましょう」と言われて、はじめは2本でそれをつないでいたらしいのですが、インプラントが動揺しはじめて、「では動かないように、さらにインプラントを足しましょう。」と費用を取られ、最終的には5本のインプラントが顎骨に入れられ、その5本連結したものが、動き始めて初めて失敗に気が付き、当クリニックを受診されました。
あまりにひどい治療にそれを行った歯科医に憤りと悲しみを感じた症例です。
症例14(3回インプラント治療を失敗され困り果て来院された症例)
3回ほどインプラント治療を失敗され(ほとんどが排膿して脱落したようです)その施術した歯科医に、愛想が尽きて当クリニックに相談に来られた患者さんです。
ヒーリングアバットメントもきちんと止められておらず、インプラント体の周りや鼻腔からの排膿を認めます。非常に再治療に苦慮する症例です。