サージカルガイドの設計のためにコンピューター上のCT画像と患者さんの口腔内より採取した印象模型。そして技工士さんに作成した頂いた最終補綴上部構造のWAX UP。これらを参考にインプラント体の長さ・太さ、そして埋入位置をシミュレーションするわけですが、その時に注意すべき点があります。下顎では、下顎管、上顎では上顎洞が留意すべき解剖学的な構造として挙げられますが、それ以外にもポイントはあります。それについて解説します。
- 骨幅との関係:歯牙に比べてインプラントでは近遠心的な幅が狭くなりますが、これに関しは骨幅が当然関与します。骨幅を考慮せずにインプラント埋入を行うことでインプラント体が若干の歯槽骨の吸収により、歯肉から薄く透けて見えるなどのことが生じることもありますので、その点には十分に注意が必要です。無理して太いインプラントを選択せずに骨幅に合わせた選択が重要になると思います。
- アクセスホールの位置:インプラント治療を失敗に終わらせる結果を招くインプラント周囲炎を起こしてしまう原因として挙げられるのが上部構造とインプラント体の位置関係であると考えます。上部構造の真ん中にインプラント体が来ることが清掃性の向上には、非常に重要であると思われます。その観点から、アクセスホールが上部構造の真ん中に来ることが重要になるのです。
- 臨在歯との位置関係:臨在歯との位置関係に関しては、簡易型のサージカルガイドでも、骨へのドリリングの起始点をある程度は把握することができると考えます。しかし、臨在歯の歯根の方向や湾曲状態を把握することができず、インプラント体と臨在歯の歯根が非常に近接するという症例も少なくありません。これを避けるためにもサージカルガイドの必要性がありますが、設計を行う際に考慮すべきであると考えます。
- プラットホーム骨レベル:骨の深さの点も重要になります。先ほど述べたような下顎管や上顎洞への近接などの解剖学的な構造物への配慮のみならず、周囲の骨の厚みの問題などで、この点への配慮は重要になります。特に、抜歯後、舌側よりも頬側、口蓋側よりも、頬側や唇側の骨吸収が多く起こりますのでその部分を骨造成や GBRで対応するのか、インプラントをより吸収した骨のレベルに合わせるのかについて、個々の症例で十分に検討がなされなければなららいと考えます。
- 対側との比較による埋入位置・傾斜角度の比較:口腔内模型と上部構造のWAX UPにてインプラント埋入位置などはほぼ決定されますが、最終チェックとしては対側の歯牙の傾きや位置なども参考にしなければならないと考えます。これに関しては、極端に意識することはないと思われますが、できれば対側とのインプラント体の力学的な多面体構造を意識したほうが良いと考えます。
【上記を考慮しないインプラント埋入で生じやすい事象】インプラント埋入位置やインプラントの径や長さの選択を、上記の注意事項などを参考にせず行った場合やサージカルガイドを使用しないで行った場合に術者に目の錯覚などからインプラント体はyより遠心に埋入される傾向があります。さらに、逆に意識しすぎると今度はより近心に埋入し、臨在歯の歯根を傷つける結果を招くこともあるのです。