左側上顎犬歯(#23)の歯根破折による抜歯同時埋入症例 (20歳代 女性)
左側上顎犬歯の歯牙破折で破折線は骨縁下まで及んでおり、保存不可能と診断した。当クリニックにインプラント治療を希望して来院された。周囲の骨の残存状態や感染の有無を考慮し、唇側に骨が存在し、抜歯後の歯槽骨の変化も予測可能であり、その保存のために抜歯同時埋入と判断した。
患者さんは、インプラントの術後4か月、抜歯後約5か月でインプラント補綴により前歯が戻ってきたと喜んでいただけました。
左側犬歯の抜歯時の所見。唇側の骨を温存することが最重要で、できるだけ愛護的な抜歯を心掛ける。時間はかかっても決して乱暴な抜歯を行ってはならない。明らかな感染巣はないが、感染巣の除去は絶対である。
LANDmarker(iCAT)の画像。抜歯前の歯の形態を参考に埋入位置を検討した。
埋入部位のCT画像。隣在歯根が傾斜しているのに加え、埋伏歯があり非常に狭いスペースであるのが分かる。
そのことから直径3.2mmのインプラントを選択した。
FINESIA Tapered type 直径3.2mm/長さ10mm(京セラ)を埋入する計画を立てた。
Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を適合させ,2mmのパイロットドリルでドリリングを行っている所見である。
Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を用い、マルチガイド用の直径2mmでドリリングを行っている。ガイドキーを装着することで位置、方向が制御される。
Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を用い、マルチガイド用の直径3mmでドリリングを行っている。ガイドキーを装着することで位置、方向が制御される。
Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を用い、マルチガイド用の直径3mmでドリリングを行っている。本症例ではストッパーをつけられなかったため、目盛りを頼りにドリリングすることとなった。そのため深度が深くならないように注意深く、ドリリングを行う必要がある。
インプラント埋入窩形成後、インプラントの埋入を行う。
インプラントタイプ及びサイズ:FINESIA AO Tapered type 直径3.2mm/長さ10mm(京セラ)
インプラント体がガイドに誘導されながら適切な位置・方向で埋入される。
インプラントの埋入後の口腔内所見。抜歯窩にインプラント体が埋入されているのが観察できる。既存骨とのギャップはほぼない。
ヒーリングアバットメント装着時の所見。
既存骨とインプラント体の周囲にギャップはないものの、ドリリングで得られた自家骨をヒーリングアバットメントの周りに填入して、より確実な埋入とする。
ヒーリングアバットメントの装着後、縫合して手術とした。
埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。臨在歯との距離の関係も含めて、この位置しかない位置に埋入されている。フリーハンドでは絶対に正確な埋入はできない。
印象採得時と最終補綴物装着時確認Dental X-P
最終補綴物装着時の口腔内所見
最終補綴物装着時の口腔内所見
治療前は、恐る恐る噛んでいた部分で、思い切り噛めることが幸せとおっしゃられていました。治療前は、破折後臨在歯と接着されておりフロスが通らなかったので嫌だったが、きちんとフロスも入るので、歯のケアもしやすくうれしいとのことでした。