ソケットリフトにて骨造成したインプラント症例ケース01

右側上顎第1大臼歯(#16) 歯根破折と根尖性歯周炎に対しての抜歯、待機埋入、ソケットリフト症例(30歳代 女性)

他院で歯牙破折と根尖性歯周炎を指摘され、抜歯、ブリッジを提案された。ブリッジは、生活歯である臨在歯を削るので嫌だということで、当クリニックに来院した。
抜歯して、場合により骨造成が必要であることをお話しした。抜歯後2か月でインプラント埋入手術を行い、4か月後に上部構造(葉の部分)が装着されて。
患者さんは、抜歯後約6か月でインプラント補綴により咀嚼機能の回復ができ、喜んで頂けた。


抜歯後2か月。iCAT LANDmarkerにて補綴の位置を中心に考えながら、幼弱な骨もあると診て、既存骨のある位置を選択(高さ約7.7mm)。
近遠心で診ると洞底はフラットなため比較的容易な症例である。
洞底に高低差があるような場合については別の症例で示したいと思う。


iCAT LANDmarkerにてワックスアップを取り込み、上部構造の位置を確認しながら埋入シミュレーションを実施。既存骨の位置と補綴の位置と考慮し良好なポジションを選択。
ワックスアップが表示されない状態ではトップダウンのイメージができず、最良の診断が難しい。


iCAT LANDmarker 的心用ガイドを装着している所見。固有粘膜がサーキュレーションメスで切り取る歯肉の周囲にあることも確認する。抜歯後2ヵ月で、粘膜に完全に覆われているのがわかる。


FINSIA HA Bone level Tapered 直径4.7mm/長さ12mmを計画。サーキュレーションメスについては、インプラント周囲の固有歯肉の幅の確保と止血効果も考慮し直径3.7mm用のものを使用している。


サーキュレーションメスがガイドに沿って挿入されているのがわかる。正確な粘膜切開が可能になる。


サーキュレーションメスでの固有粘膜切開。円形状の切開線が確認される。若干の出血を認める。


歯肉除去後の口腔内所見。サーキュレーションメスによって歯肉が切り取られ、骨面が観察できる。


iCAT LANDmarker的心用ガイドにガイドキーを挿入し、直径3.7mmのパイロットドリル(ショート)にてインプラント埋入窩を形成している。


直径3.7mmのパイロットドリル(ミディアム)にてインプラント埋入窩を形成している。ストッパーが装着されており。正確に上顎洞底まで0.5mmのところまで形成する。


ストッパーのところまできっちりとドリリングすることで、上顎洞底まで0.5mmのところまで正確に形成することができる。


サージカルガイドを一旦外し、CAS-KITを使用。CAS-KITの特長として、シュナイダー膜を傷つけることなく上顎洞底骨を形成出来るように先端の刃が工夫されている。CAS-KITを使用する際に注意する点としては、上顎洞底骨が形成された時の感覚に頼るのではなく、辺縁歯肉から上顎洞底までの距離を術前に計測し、ドリルの長さを調整する事である。その為、CAS-KITドリルのストッパーは1mm単位で用意されている。


ドリルに装着するストッパーで1mm単位の深度調整をしていく。


ストッパーを替え、更に深度調整している所見。骨を貫通する感覚が大切であるがわかりにくいこともあり、骨の穿孔を確認しながら行う。確認時にシュナイダー膜を損傷することもあるので優分に注意して行う。


CAS-KITでは、上顎洞底骨形成後、水圧によってシュナイダー膜を挙上する。
1mlのシリンジに生理食塩水を入れ、専用のチューブを用いゆっくりと圧をかけていく。


1mlのシリンジのピストンを引いた時の口腔内。血液が返ってきている事を確認することで、水圧でシュナイダー膜が挙上されている事が分かる。シュナイダー膜に穴が開いた時は、空気が返ってくる。


ドリリング時に採取された自家骨。


採取された自家骨と人工骨アパセラム-AX(京セラ)を混合して、ソケットリフトに用いる。


ボーンキャリアにて自家骨と人工骨を混合した骨をインプラント埋入窩の入り口に運ぶ。


骨填入時の口腔内(咬合面)。インプラント埋入窩に填入した骨を下から器具を用いて上顎洞内へ押し出すイメージである。


オステオトームを用い、上顎洞底と挙上したシュナイダー膜のスペースへ自家骨と人工骨を混合したものを填入している。


最初と最後には、スポンジ状のコラーゲン・HA複合体骨補填材・リフィット(京セラ)を填入する。骨補填という目的だけではなくインプラント埋入窩に残っている骨補填材を挙上スペースへ押し出していくという目的もある。また、骨とインプラントの接触面を骨補填材に邪魔されないようリフィット填入後に洗浄している。


ソケットリフトによるシュナイダー膜の挙上をサージカルガイドを再度、装着してインプラントを埋入する。(FINSIA HA Bone level Tapered 埋入サイズは直径4.7mm、長さ12mm)


インプラント埋入時の口腔内。サージカルガイドのガイドに沿って埋入されているのがわかる。


インプラント体埋入時の口腔内所見。埋入されたインプラント体が確認できる。


ヒーリングアバットメント装着。


24.ヒーリングアバットメント装着時の口腔内。(咬合面)出血がないことがわかる。


インプラント埋入後のパノラマX-P画像。
上顎洞内に挙上したシュナイダー膜と骨が観察される。


3.5か月後の印象採得時のデンタルX-P所見


上部構造(歯の部分)を装着した際の確認デンタルX-P所見


最終補綴物装着時の口腔内所見

スクリューリテインの補綴としている。第1大臼歯は、咀嚼機能の要でもあり、その機能回復は重要である。ソケットリフトはサイナスリフトに比較して簡単な骨挙上法であるが、十分な経験が必要であり、未経験者が見よう見まねで行う手技ではないことを明記したい。


最終補綴物装着時の口腔内所見

抜歯後、比較的短期間でインプラントによる補綴ができ、歯が戻ってきたようでよく噛めますとおっしゃっていただけました。ソケットリフトの手術も全く分からなかったというか違和感などなかったので、良かったとお話しされていました。

 

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