インプラントサポートによる固定式義歯(オーバーデンチャー)症例 (50歳代 女性)
右側側切歯、犬歯ならびに左側第一小臼歯のみ残存し、義歯を装着していた。
義歯は苦痛ではないが、残存歯とともに動揺することから、インプラントによるサポート(2本)によりオーバーデンチャー(固定式義歯)を選択した。
患者さんは、術後3か月でインプラント補綴により咀嚼機能の回復ができ、喜んで頂けた。
LANDmarker(iCAT)にてシミュレーションをしている画像。
左はCT撮影のみから構築した3D画像。右は義歯を取り込み、CT画像に合成した3D画像。
CT画像のみでは将来の上部構造の位置が分からず、多数歯欠損では特に診断が難しくなる。
CT画像にインプラントの埋入位置を計画。初期固定をよくするため、インプラントの先端が鼻腔底に当たるような長さを選択。
Landmark Guide(iCAT)のマルチドガイドを用い、FINESIA HA Tapered type(京セラ)直径3.4/長さ12mm(右側)と直径3.4/長さ8mm(左側)を選択して埋入を計画した。手術中に固定を得るために、右側の側切歯と左側の第1大臼歯は温存したが、右側の犬歯はインプラント埋入窩に一致するために、ガイドを装着する前に抜歯を行った。
左側は的心サーキュレーションメスを用いて歯槽提粘膜への切開を行った。固有歯肉がインプラント周囲に存在することを確認しながら行う。
右側には抜歯窩、左側にはサーキュレーションメスで丸く切開された切開線が確認できる。
右側の埋入部位に、2mmのSurgical Drill(iCAT)で予定されたところまでドリリングする。抜歯窩であり、骨の斜面などにドリルを誘導されないようにサージカルガイドをしっかり固定してドリリングを行う。
左側の埋入部位に、2mmのSurgical Drill(iCAT)でドリリングを行う。
右側の埋入部位における、3mmのSurgical Drill(iCAT)でのドリリング。抜歯窩のドリリングではその深さから骨が存在するかなどを触診で把握することも重要になる。
左側の埋入部位においては、骨の形態を考慮し、この時点で粘膜切開を行い、骨とインプラント体の埋入状態を確認した方が良いと判断して、粘膜切開を加えた。このような術中判断の可能性に関してはあらかじめ、患者さんにお話をしておくことが重要である。
左側のインプラント埋入時の所見。FINESIA HA Tapered type(京セラ)直径3.4mm/長さ8mmのインプラント埋入を行った。
左側のインプラント埋入後の所見。インプラント体が骨内に埋入されている。
ヒーリングアバットメント装着の所見。
右側では犬歯の抜歯後、犬歯窩の骨が頬側に大きく張り出しており、義歯装着後の粘膜の痛みの原因になることも考慮し、骨の整形を行った。
右側にはFINESIA HA Tapered type(京セラ)直径3.4mm/長さ12mmのインプラント埋入を行った。
縫合後の所見。縫合糸は感染防止の観点からナイロン糸を使用している。
手術内容:両側義歯安定用のインプラント埋入
右側:抜歯即時
トルク:15N/cm (右側), 30N/cm (左側)
麻酔:笑気ガス・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 5.4ml
手術時間:20分
埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。
印象採取時の確認Dental X-P
最終補綴物装着時の口腔内所見
両側に義歯安定のためのインプラントサポートが装着されている。
最終補綴物の所見
義歯の裏面に義歯インプラントサポートのための、凹のリングが装着されている。
最終補綴物装着時の口腔内所見
動揺歯と義歯が大きく振れて食事ができなかった。骨がなく、インプラントはできないといわれたが、インプラントサポートの義歯を入れることで、義歯も安定し、なんでもよく噛めると喜んでいただいている。