サイナスリフトなどの骨造成にどのような骨補てん材を用いるかは十分な知識と常に科学的根拠を持った判断を求められる事象である。
漫然と新しい材料に飛びついたり、家族に対して選択しないであろう他家骨を十分な理解、説明もなしに患者さんに使用してはならない。
いかに、基本的な骨補てん材に関する知識をまとめたので参考にしていただきたい。
骨補填材に要求される特性
- 骨形成能 (osteogenesis) 移植骨中の細胞自体が増殖し、直接骨を形成する能力。
- 骨誘導能 (osteoinduction) 未分化間葉系細胞が骨芽細胞に分化し骨形成を誘導する能力。
- 骨伝導能 (osteoconduction) 細胞が骨を形成するための足場としての能力。
Autologous bone
予知性が高く、materialのなかで最も良い移植材であるが、大きな問題としては、手術の範囲や箇所が増えてしまう。
DFDB
母床骨周囲の顆粒では新生骨量が多いが、母床骨から少し離れるとその量に減少を認めた。このことから、他のbiomaterialと混合し使用した方がより良い臨床結果を得られると考えられる。
Biocoral
扱いやすく、再吸収性であり、炎症を惹起せずに骨新生を促す特性がある
Bioglass
遅吸収性であり、炎症を惹起せずに骨新生を促す特性があるFisiograft: 最も早く完全に吸収される(4ヶ月~8ヶ月)特性がある。
PepGen P-15
歯周病の骨欠損においてよく用いられる。今回の実験では、顆粒の周囲はほぼ完全に層板骨により囲まれていた
Calcium sulfate
骨前駆細胞の移動を促進し、リン酸カルシウムの層を介して骨の新生を促す。
Bio-Oss
気孔率が高いことから細胞の優れた足場となり、血管新生を促す環境を 提供する。これまでの多くの実験でその有効性は示されている。
hydroxyapatite
オステオポンチンや骨シアロプロテインなどと結合し骨新生を促進する。
【間葉系幹細胞と多血小板血漿PRPによる骨造成】
2000年当時、名古屋大学の上田 実教授の教室を中心に上顎洞内に腸骨より採取した間葉系幹細胞とトロンビン粉末、多血小板血漿PRPを用いた骨再生が行われた。再生医療の幕開けのような素晴らしい研究成果であった。その後、臨床応用も行われ成果を上げたが、間葉系幹細胞を用いずとも人工骨をサイナスリフトに使用するだけでも骨造成が可能であるとの認識から、同方法が主流になることはなく現在を迎えている。