サイナスリフトにて骨造成したインプラント症例ケース06

サイナスリフトによる上顎第一大臼歯インプラント症例
基本的な症例

 

伝えたいポイント

  • サイナスリフトの基本手技
  • サイナスリフト同時埋入(一回法)の適応
  • サイナスリフトで用いる人工骨など

 

右側上顎第1大臼歯部欠損
(30歳代 女性)

 

他院でインプラント治療はできないと言われた。ブリッジや入れ歯にはしたくないということで当クリニックを受診された。サイナスリフトの適応と考えた。患者さんは、術後6か月でインプラント補綴により咀嚼機能の回復ができ、喜んで頂けた。

  • ソケットリフトとサイナスリフトの適応に関しては、かなり変化しており、骨の厚みが4mmの症例ではどちらを選択するか悩むが、本症例のごとく3mmであれば、安全のためにサイナスリフトを選択する。手術手技の難易はその術者にとっての難易であり、明視野が得られるという意味ではソケットリフトよりサイナスリフトは安全な手術手技と言える。

 


 

LANDmarker(iCAT)にてシミュレーションを実施した。
ワックスアップをシミュレーションデータに取り込み補綴主導に問題ないことを確認した。

 


 

埋入部位のCT画像。既存骨の厚みが薄くソケットリフトでは骨造成が難しいことが分かる。近心の上顎洞底の形状も注意が必要である。

  • このような上顎洞の底の骨形態もサイナスリフト、ソケットリフトの適応を決める基準となりうることを考慮しないといけない。※青色部分は骨造成のシミュレーション。 

 

Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を装着し、サーキュレーションメスで上顎洞挙上術(サイナスリフト)の切開の位置を確認するために、インプラントの埋入部位を歯肉にサーキュレーションメスを軽く押しあてることで印記する。

  • インプラントのヒーリングアバットメントがどの位置に出てくるのかは切開線を設定するのに、もっとも重要な情報である。この他、その部位にサイナスリフトの開窓部が来るのかを十分に把握して切開線を決定する。開窓部の上に切開線がきてはいけないのは、外科の基本である。

 


 

インプラント埋入部位がサーキュレーションメスで印記されているのがわかる。これを参考にサイナスリフトのための切開を行う。切開予定線を白線で示す。印記されたインプラント埋入位置は真ん中ではなく、口蓋寄りにすることが多い。

 


 

切開時は歯肉、骨膜を切開し、骨までしっかりと切開することが大切である。粘膜剥離は骨膜剥離子でしっかりと骨を擦ぐ様に剥離することが重要である。ガーゼを用い、止血しながら、場合によっては雑布法を用いて剥離を行う。

 


 

ピエゾサージェリー(メクトロン)による上顎洞側壁に対する骨窓の作成。キャビテーションによる霧状水が観察できる。このキャビテーションにより術野が洗浄される効果もある。必要かつ十分な窓開けを行うことが重要となる。1歯のみのサイナスリフトではその範囲はあまり大きくない。上顎洞粘膜を術者の不注意で損傷することがないように十分に気を付ける。

 


 

上顎洞側壁の骨窓形成後の所見。開窓した骨とともに上顎洞粘膜の剥離、挙上を行う。上顎洞の挙上子を用いてシュナイダー膜を慎重に挙上しているのがわかる。この際もシュナイダー膜を損傷させないように上顎洞の底の骨を擦ぐ様に挙上させることが重要である。

 


 

サイナスリフト専用の剥離子でさらに挙上している。洞粘膜を傷つけないためには骨を擦るように、粘膜を骨面から剥離していくことが重要になる。上顎洞粘膜をインプラント埋入のドリルで傷つけないように、コラーゲンHA複合体でスポンジ状の人工骨であるリフィット(京セラ)を挿入して粘膜を上方でささえる。

  • 上顎洞の骨造成に関しては基本的にはリフィットや気孔率の高いアパタイトなど、できるだけ気孔率を中心に考える。血流が人工骨の骨化に大きく寄与していることを忘れてはいけない。

 


 

人工骨によって上顎洞粘膜が上方に固定されているのがわかる。スポンジ状の人工骨であるリフィット(京セラ)で挙上された空間に、アローボーンβ 1000μm~(ブレーンベース)とアパセラム-AX(京セラ)も混合して填入している。鼻腔側からの血流も考え、インプラントを埋入する前に鼻腔側にも骨補填を行うことが重要となる。

  • サイナスリフトの骨化への血流は、主に郊外側からの血流であることは知られており、その意味で十分に口蓋側を剥離して血流を維持することが重要である。

 


 

上顎洞底の骨にインプラント窩を形成している所見。サージカルガイドを用いて方向、位置などが規制されるのがわかる。上顎洞に抜ける感じは手に伝わり、比較的容易に感じることができる。

 


 

インプラントの埋入を行っている所見。インプラントタイプ及び埋入サイズ:FINESIA HA Tapered type 直径4.7mm/長さ12mm(京セラ)である。

的心ガイドを用いての埋入であり、シミュレーションと同様の位置、角度、深さでの埋入が可能になる。ガイドが当たる位置までしっかりと埋入され、深さが規制されているのがわかる。

 


 

インプラント体が25N/cmと良好な埋入トルクを得ることができ、インプラントのヒーリングアバットメントの周りに人工骨が来ないことから1回法として4mmのヒーリングアバットメントを装着した。インプラントが埋入されている状態が、開窓部分とインプラント形成窩から、観察できる。

 


 

開窓部にKOKEN社製メンブレンを置き、縫合を行った。縫合糸は感染防止の観点からナイロン糸を使用している。

手術内容:右側上顎第1大臼歯(#16) サイナスリフト同時インプラント埋入術
トルク:25N/cm (#16)
麻酔:笑気ガス・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 5.4ml
手術時間:28分

 


 

埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。また。上顎洞のインプラント周囲は人工骨で骨が充填されており問題ない。

 


 

印象採取時の確認Dental X-Pならびに最終補綴物装着時の確認パノラマ X-P

 


 

最終補綴物装着時の口腔内所見

スクリューリテインの補綴としている。第1大臼歯は、咀嚼機能の要でもあり、その機能回復は重要である。サイナスリフトは十分な経験と確実な方法で行うことで、十分に機能できるインプラント補綴が可能である。青の矢印で示している部分は縦切開の瘢痕。気にならない程度と考える。

 

 

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