論文紹介と解説 2018.10.20

パノラマエックス線写真上の下顎管明瞭度と下顎臼歯歯槽部の骨密度に関する検討

立浪秀剛、津野宏彰、他 日本口腔インプラント学会誌 Vol 31.3.2018.9

 論文の要旨は、歯科治療において通常撮影するパノラマXPにおける下顎管の明瞭度と臼歯部の骨密度に関するもので、下顎管の迷入度は低くなれば、骨密度も低くなるとの相関があるのでCT撮影以前の骨密度のスクリーニングになるとのものである。

考察の中では、骨密度が低く骨が柔らかい場合には、ドリリングが深くなり思わぬ下顎管の損傷につながることも記されている。

 

インプラント手術時のドリリングにおける下顎管の損傷に関しては参照論文Du Toit, Howard Gluckman, Rami Gamil, Tara Renton, Implant Injury Case Series and Review of the Literature Part 1: Inferior Alveolar Nerve Injury, Journal of Oral Implantology. 2015;41(4):e144-e151.でもあるように、2018年現在でも起こりうる合併症の一つである。しかしながら、それはドリリング、インプラント埋入のすべてのステップのいずれかの手術過程で、フリーハンドでドリル、インプラント埋入を行った場合であり、すべての過程をきちんとガイデッドサージェリーで行った場合の合併症としては設計のミス以外は皆無と言ってよいかもしれない。ガイドサージェリーを用いての下顎管損傷、オトガイ神経損傷は、ガイドの設置が、多数歯欠損や粘膜のみのを支持として不安定な場合で、ずれる場合を除いてはありえないからである。ガイドサージェリーにおける合併症に関してはいくらかの経験があるが、オトガイ神経麻痺は経験しない。

本邦においてもインプラント手術を行う全施設で全症例でガイドサージェリーが導入されれば患者さんの不利益であるオトガイ神経麻痺の合併症はなくなると考える。

 

現状で、フリーハンドで行っている術者においては、私の20年前の経験が参考になればと思い、記載する。下顎管の上方には下CT画像でも観察できるように少し骨密度が高い=少し硬い部分が存在する。私がフリーハンドでインプラントのドリリングを行っていた時に、その当時はパノラマ写真の拡大率でインプラントの長さ、太さを選択しており、その拡大率が異なって私に伝わり、間違ったより深い長さまでドリリングを行いそうになっていた時である。低速でドリリングしていると少し硬い骨質を蝕知した。そこで、何か変だなと思い、そこまでのドリリングとしてインプラントの長さを変更してインプラント埋入を行った。その結果、インプラントは下顎管の直上で埋入されていたのである。すなわち、蝕知した骨密度の高い領域は、下顎管の上方の骨密度の高い部分であったのである。

このことから、いまだフリーハンドで治療を行っている先生は、特にドリリングの際にできるだけ、低速にし骨質を感じながら行うのも、一つの工夫かと考える。

 

 

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