サイナスリフトにて骨造成したインプラント症例ケース03

右側第一、第二大臼歯部の欠損(50歳代 男性)

他院でインプラント治療はできないと言われ、入れ歯を作るも不快感で装着せずにいた。食事の時に困ることと奥歯がないことがコンプレックスで困っていたとのこと。サイナスリフトをすれば、インプラント治療もできることを説明した。

患者さんは、術後6か月でインプラント補綴により咀嚼機能の回復ができ、喜んで頂けた。


LANDmarker(iCAT)にてシミュレーションを実施した。

ワックスアップの位置を、補綴主導のインプラントとしての問題もないことを確認している。


CT画像。LANDmarker(iCAT)にてサイナスリフトのシミュレーションも行った。


iCATから送られてくるドリルプロトコル。サージカルガイドの高さが調整されており、指示されたドリルを使うことでドリルが洞底位置でストップする。


Landmark Guide(iCAT)の京セラ対応のカスタムガイドを用い、FINESIA的心サーキュレーションメス(京セラ)を軽く歯肉に押し当て、インプラント埋入部位を歯肉粘膜に印記させる。このことで切開線を適切に設定できる。


サーキュレーションメスにおける歯槽提粘膜へのインプラント埋入位置の印記。可動粘膜に一部、かかっているがサイナスリフトの切開を行うことから、口蓋側の位置に切開線を持ってくれば固有歯肉がインプラント周囲に存在することになる。


サイナスリフトのための切開を行っている、メスによる切開の始まりは必ず可動粘膜に置き、骨膜を切り骨まできっちりと切開することが大切である。


歯槽提の切開では、先ほどのインプラント埋入位置の口蓋側を通る切開を行う。最終的にインプラント周囲に固有歯肉を確保する為の切開を行うことが重要になる。


粘膜骨膜剥離子による軟膜骨膜弁の作成。骨をこすぐように起こすことで容易に骨膜弁を剥離することができる剥離子を骨の方向に向けるのが正しい。

粘膜側に向けるのは明らかに誤り。


粘膜骨膜弁の作成と骨面の露出。この場合にガーゼを使って雑布法を用いると止血にも役立ち、骨面を容易に剥離できる。口腔外科的には基本的な手技であるのでガーゼによる雑布法の応用も習得して頂きたい技術の一つである。


上顎洞の側壁の骨面が剥離されている。出血がほとんどないことに注目頂きたい。


ピエゾサージェリー(メクトロン)による上顎洞側壁に対する骨窓の作成。キャビテーションによる霧状の水泡が観察できる。このキャビテーションにより術野が広がる効果もある。


ピエゾサージェリー(メクトロン)による骨窓形成。このような場合にミネソタ式の鈎が術野の展開と軟組織の保護に役立つ(↓)


上顎洞側壁の窓開け①


上顎洞側壁の窓開け②


上顎洞側壁の窓開け③


上顎洞側壁の窓開け④シュナイダー膜(上顎洞粘膜)が観察される。


上顎洞側壁の骨窓形成後、その開窓骨を上顎洞粘膜とともに洞内に織り込んでサイナスリフトの上端を骨とするためにサイナスリフト専用の剥離子で挙上していく。洞粘膜を傷つけないためには骨をこすぐように、粘膜を骨面から剥離していくことが重要になる。


サイナスリフト専用の剥離子で挙上していく。洞粘膜を傷つけないようにさらに剥離を進める。なれると簡単な手技だが、粘膜の損傷に十分気を付けることが大切である。


挙上した洞粘膜と上顎洞の側壁の骨で作成したサイナスリフトによる天井部分の骨がインプラント埋入のドリルで傷つけないように、スポンジ状の人工骨であるリフィット(京セラ)を挿入して粘膜を上方でささえる柱とする。


スポンジ状の人工骨であるリフィット(京セラ)で骨片(上顎洞側壁)と粘膜が上方にある程度固定されているのが観察される。これによりドリリング時の洞粘膜の損傷を回避することができる。


骨片(上顎洞側壁)と粘膜がリフィットにより、」上方にある程度固定されているのでドリリングを容易に行える。ドリルは洞底から3mmのところにまでドリルが達するように設定している。


インプラントの埋入を行う。FINESIA  HA Tapered type(京セラ) 埋入サイズ:直径4.7mm/長さ12mm2本である。直視下での埋入であり、適切な深さでの埋入が可能になる。


上顎洞の中の様子も観察しながらの埋入ではあるが、洞粘膜は上方に十分挙上されスポンジ状の人工骨で固定されているために安全に埋入が行える。


インプラント体が埋入されたところ洞とインプラント体との関係が良くわかると思われる。埋入トルクはいずれも15N/cmであった。


サイナスリフトにはアローボーンβ 1000μm~(ブレーンベース)を用いる。気孔率が高く優れた骨補填材と考える。鼻腔側からの血流も考え、インプラントを埋入する前に鼻腔側にも骨補填を行うことが重要となる。


骨補填が終了した時点での口腔内所見。


骨窓部にはコーケンティッシュガイド(吸収性メンブレン)を置き、骨補填材の溢出を防ぐこととする。骨膜が存在すればメンブレンを置く必要はないとの考えもあるが、サイナスリフトでの骨への血流はあくまで、鼻腔側からがメインであると考えるため骨膜と人工骨との直接的な相互関係を考えるとメンブレンを置いたほうが良いのではないかと考えている。


ヒーリングアバットメント装着の所見。


縫合後の所見。縫合糸は感染防止の観点からナイロン糸を使用している。絹糸は、感染防止の観点から好ましくないが、ゴアテックスの糸を用いる必要はないと考える。

手術内容:#17, #16 サイナスリフト同時インプラント埋入術
トルク:15N/cm (#17), 20N/cm (#16)
麻酔:静脈鎮静・モニター下
局所麻酔2%キシロカイン(1/80,000Epi) 7.2ml
手術時間:40分(下顎のインプラント埋入を含めて1時間15分)


埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。


印象採取時の確認Dental X-P


最終補綴物装着時の確認Dental X-P


最終補綴物装着時の口腔内所見

サイナスリフト症例ではあるが、清掃性を考えて単独歯とした。このような症例でよく連結する場合があるが、インプラント周囲炎などの症状が万が一、生じた場合に、気づいたときには2本とも失うこともあるため、単独歯にすることが長期間を考えると患者さんのためになる。そのことは患者さんにも十分にお伝えすることも大切である。


最終補綴物装着時の口腔内所見

他院では、骨がなく、インプラントはできないといわれたことで患者自体が非常にコンプレックスに近いものを感じておられました。

「骨がないからインプラントができない」との一言が、患者さんにとっては自分はほかの人と違って・・・・と考えるきっかけにもなる。東洋人は上顎洞が発達していること。サイナスリフト自体も経験豊富な治療医にとっては安全な治療ということを理解していただくことも大切であると思われた。

術後は良く噛めて機能面も十分に回復でき、患者さん自身も非常に喜ばれていました。他の不良補綴物や対側のインプラント治療も今後、行っていきたいとのことで、ともに【よりよい】口腔内を作っていきましょうとお互いにお話しをしています。

サイナスリフトは、安易に初心者がチャレンジするものではないことから、そのような症例は専門医に任せることも重要かと思います。

 

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