口腔乾燥症の原因には、以下に示すような全身や代謝と関連するもの、神経性または薬物性のもの、唾液腺自体によるものが存在する。
唾液分泌低下が認められない場合には、
1.口呼吸(鼻呼吸障害、口唇閉鎖不全);夜間口腔乾燥
2.全身疾患に起因するもの
糖尿病、腎疾患、人工透析、脱水、尿崩症
など
を考慮する必要がある。
唾液分泌障害がある場合には、その診断として
1.唾液腺組織の障害
耳下腺造影、シンチグラフィー、生検
2.自律神経の障害
に留意する必要がある。
口腔乾燥症の合併症としては、以下に示すように、カンジダや口腔粘膜疾患が存在することから注意が注意が必要である。
口腔乾燥症を疑う患者さんが来た場合の診察手順の例をしめす。ガムテスト、サクソンテストなどの唾液量の測定やムーカスなどの機器を用いた客観的な評価は必須である。
口腔乾燥症の自覚的症状としては、
- 口渇、飲水切望感、唾液の粘稠感
- 口腔粘膜や口唇の乾燥感、疼痛
- 味覚異常、ビスケットなど乾いたものを嚥下しにくい
また、
他覚的症状としては
- う歯の多発、歯や義歯の汚染、
- 口腔粘膜の発赤
- 舌乳頭の萎縮による平滑舌や溝状舌、口角びらん
などがある。
口腔乾燥症患者で見るべき口腔内所見は以下のようになる。
唾液検査には
1)唾液湿潤度検査紙
口腔粘膜上に貯留している唾液が単位時間あたりに吸湿される量を検査紙に湿潤する幅で簡易に計測する
2)モイスチャーチェッカー・ムーカス
粘膜上皮内に含まれる水分を静電容量として計測するセンサーを用いて、口腔粘膜の水分量を評価する測定器
ネバメーターなどがある。
●口腔乾燥症の原因としては、
1.局所的要因、嗜好品による口腔乾燥
1)口呼吸
2)嗜好品(カフェイン、アルコール、ニコチンの過剰摂取)
3)水分摂取量の不足
4)不十分な咀嚼
2.全身的要因に起因する口腔乾燥
1)体液、電解質異常
2)内分泌異常:甲状腺機能亢進症、性ホルモン失調症、尿崩症
3)代謝障害:糖尿病、腎機能不全、肝硬変
4)自己免疫疾患:シェーグレン症候群、膠原病、
5)貧血、血液疾患:悪性貧血、鉄欠乏性貧血
6)薬物:鎮痛薬、副交感神経遮断薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、向精神薬
7)脳血管障害
8)その他:人工透析
3.唾液腺障害
4.神経性要因による口腔乾燥
1)分泌神経障害 顔面神経障害 自律神経障害
2)精神的原因
5.加齢(生理的要因)
が挙げられる。
●治療
治療に関しては、原因が明らかな場合とシェーグレン症候群、放射線照射、老人性変化などの場合に原因疾患の治療と対症療法に分かれるが、日常生活および口腔衛生指導として、①唾液の分泌を促進するような食品(梅干し、レモン、酢の物など)を積極的に摂る。
②刺激性のもの(香辛料など)をさけるなどを指導することも重要である。