左側上顎第1大臼歯(#26)の歯根破折 抜歯同時埋入症例
60歳代 女性
左側上顎第1大臼歯がとトライセクションされており、口蓋根が抜歯されている状態であった。残存していた頬側の根も分岐部から排膿が少量あり、根破折もしくは分岐部病変があり、保存不可能と診断した。
抜歯後の歯槽骨の変化も予測可能であり、抜歯同時埋入とした。ただ、口蓋根の抜歯により口蓋側の骨が吸収しており、埋入位置などには苦慮した症例である。
患者さんは、術約5か月でインプラント補綴によりまた噛めるようになったと喜んでいただけました。
LANDmarker(iCAT)の画像。抜歯前の歯の形態を参考に埋入位置を検討した。口蓋根が抜歯されているため、歯冠形態が頬側に偏っているのがわかる。埋入位置の決定は、最終補綴形態と骨の残存を確認して決定したが、骨の残存が通常と異なるため、その位置決定には慎重にならざるを得ない。
埋入部位のCT画像。L10mmを選択し、バイコルチカルな支持を得られる位置を計画。口蓋根の露出部を確認して必要ならば骨造成を行う計画とした。
iCATから送られてくるドリルプロトコル。指示に従って手術を進める。
Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を適合させた際の所見。
FINESIA HA Tapered type 直径4.2mm/長さ10mm(京セラ)を埋入する計画を立てた。
抜歯後、Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を適合させ、直径3.4mm用のガイドキーを装着し、的心パイロットドリル 直径3.4mm(京セラ)にてインプラント窩の形成を行っている。ガイドキーを装着することで位置、方向が制御される。
Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を適合させ、的心ガイドドリル 直径4.2mm用(京セラ)にてインプラント窩の形成を行っている際の所見。
インプラント体埋入時。Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)に沿って、適切な位置、角度、深さで埋入される。
インプラントタイプ及びサイズ:FINESIA HA Tapered type 直径4.2mm/長さ10mm(京セラ)
Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)に沿って、適切な位置、角度、深さで埋入される。ストッパーが装着され深度が規制される。
インプラントの埋入後の口腔内所見。抜歯窩にインプラント体が埋入されているのが観察できる。既存骨とのギャップを十分に確認する必要がある。今回の症例では、口蓋側に骨がない部分が存在すると予想されえたことから同部を十分に剥離して、骨補填を行った。
既存骨とインプラント体の周囲のギャップにアローボーンβ 250μm~1000μm(ブレーンベース)とアパセラム-AX(京セラ)を混合して補填する。
骨補填時にはヒーリングキャップを装着するのではなく、カバースクリューを一時的に装着し、インプラントレベルまでしっかりと骨を補填することが大切である。特に口蓋側のフラップを十分に開けて、骨補填を行っている。
アローボーンβ 250μm~1000μm(ブレーンベース)とアパセラム-AX(京セラ)を混合した骨補填後、コラーゲン・HA複合体であるリフィット(京セラ)を填入し、顆粒状の骨の溢出を防ぐ目的で使用することもある。
リフィットを挿入後、ヒーリングキャップを装着し、なお、その周りに歯肉の増生を期待してコラーゲンもしはスポンゼルを設置する。そして縫合により、治癒を期待する。
手術終了時の所見。
手術内容:左側第1大臼歯(#26) 抜歯即時 インプラント埋入術
埋入トルク:15N/cm (#26)
麻酔:笑気ガス鎮静・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 3.6ml
手術時間:13分
埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。上顎洞に入っているように見えるのは頬側と口蓋側の骨レベルの差によるもので。洞内には入っていない。フリーハンドでは絶対に正確な埋入はできない。
最終補綴物装着時確認Dental X-P
最終補綴物装着時の口腔内所見
最終補綴物装着時の口腔内所見
治療前は、破折後、噛むと痛かったが、硬いものでも何でもよく噛めると喜ばれていました。