左側上顎乳犬歯、乳臼歯の残存 動揺 抜歯同時埋入症例
(20歳代 女性)
左側上顎の側切歯が欠損しており、乳犬歯ならびに乳小臼歯が残存していたが、動揺が生じてきたため、インプラント治療も含め、相談に来院された患者さんです。
周囲の骨の残存状態や感染がないこと、残存するであろう骨の幅や高さなどを考慮し、抜歯同時埋入と判断した。
患者さんは、インプラントの術後4か月、側切歯などの欠損に伴う歯冠の隙間を神経を取らずに審美的に修復するラミネートべニアによる歯冠補綴も同時に行い、見た目も改善して非常に喜ばれていました。
左側晩期残存の乳歯抜歯時の所見。感染巣などは、基本的には存在しないが、肉芽組織などの除去は丁寧に行う。
LANDmarker(iCAT)の画像。それぞれ補綴主導を考え埋入位置を計画。
埋入部位のCT画像。CT値(参考値)を確認すると、非常に柔らかい骨と想像されたため、バイコルチカルな支持を得られるようインプラントの長さを選択した。
埋入部位のCT画像。骨の形態と補綴位置を考慮し埋入位置を計画。
iCATから送られてくるドリルプロトコル。手順に沿って進めていく。
左側上顎犬歯部(#23)にはFINESIA HA Tapered type(京セラ)直径3.4mm/長さ12mm、第1小臼歯部(#24)には 直径3.4mm/長さ8mmを埋入する計画を立てた。Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を適合させ,直径3.4mm用の的心パイロットドリル(京セラ)でドリリングを行っている所見である。
Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を用い、的心ガイドドリル 直径3.4mm用でドリリングを行っている。ガイドキーを装着することで位置、方向が制御される。私は800rpmでドリリングを行っている。場合により、エンジンヘッドの上から押すような形でドリリングすることがある。右端の写真でその様子がわかると思う。後方の#24部でも同様のドリリングを行った。
インプラント埋入窩形成後、インプラントの埋入を行っている時の所見。
インプラントタイプ及びサイズ:FINESIA HA Tapered type 直径3.4mm/長さ12mm(京セラ)
インプラント体がガイドに誘導されながら適切な位置・方向で埋入される。ストッパーが装着され深さも適正になるように設定されている。
インプラントの埋入後、ヒーリングキャップを装着し、ドリリングによって得られた自家骨を、インプラントの上部ならびにヒーリングキャップの周りに填入して、縫合する。これによって骨ができるのを期待しているわけではないが、自家骨でインプラント周囲がより守られ、思った以上の骨ができてくれれば予知性にも寄与するのではないかと考え行うことが多い。
手術終了時の所見。
手術内容:左側上顎犬歯(#23)ならびに第1小臼歯部(#24) 乳歯抜歯 抜歯即時インプラント埋入術
埋入インプラント:FINESIA HA Tapered type 直径3.4mm/長さ 12mm(#23)、 直径3.4mm/長さ 8mm(#24)
埋入トルク:10N/cm (#23,#24)
麻酔:笑気ガス鎮静・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 5.2ml
手術時間:28分
埋入後、パノラマX-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。臨在歯との距離の関係も含めて、適切である。上顎洞までの距離に関してもきちんと予定された位置に埋入されている。フリーハンドや簡易的なガイドでは絶対に正確な埋入はできない。
印象採得時と最終補綴物装着時確認Dental ならびにパノラマX-P所見
最終補綴物装着物の模型上での写真と口腔内装着時の所見
【担当技工所の中田デンタル・センターのコメント】
初診時に前歯部の隙間や形態の大きな改善が必要であった為、診断用ワックスアップを正確に行い先生と相談、確認しながら行ったケース。
特に左の1番の近心と右上二番の近心のマージン部においては、歯頚ラインをそろえる為に、立ち上がりを歯肉を若干圧排しながら形態を付与する必要があったので1ミリ縁下形成をし製作した。
今回のケースは双方の密なコミュニケーションと連携があったからこその成功症例だといえる。
最終補綴物装着時の口腔内所見
以前より気になっていた前歯補綴処置(神経を取らない、温存するラミネートべニアによる審美補綴)も同時に行ったことで、見た目も大きく改善され、ご家族ともども本当に喜んでいただけた。乳歯ではやはり、怖くて思い切り噛むことができないと、食事の時も遠慮がちだったものが非常によく噛めて満足していただけた。