侵襲の高い骨移植を回避できた症例

高度の頬側骨欠損を伴う上顎小臼歯部に抜歯後ポケットプリザベーションと埋入時のエクスパンジョンによりRegular sizeの直径4.2mmインプラントを埋入し、頬側の骨膨隆を得られた症例

~侵襲の高い骨移植を回避できた症例~

 

伝えたいポイント

  • 抜歯後のソケットプリザベーションは理想通りにはいかないこともあるが、予測の範囲内であり、行うべきである。
  • エクスパンジョンにより頬側の歯槽骨膨隆は改善される。
  • フリーハンドで行わざるを得ないエクスパンジョンと今後の展望。

 

右側上顎第一小臼歯(#14)の抜歯後、ソケットプリザベーションからのエクスパンジョン症例
50歳代 男性

 

右側上顎第一小臼歯の根尖性歯周炎で大きな瘻孔を形成しており、頬側の広範囲における欠損が生じることが予測できた。上顎洞までの距離は問題なかった。

 


 

抜歯後ならびに抜歯窩に人工骨を補填し、いわゆるソケットプリザベーションを行っている所見。
抜歯後、頬側の瘻孔付近を十分に掻把すると、写真のごとく頬側の歯肉が、脆弱なために粘膜の欠損も伴うことがあるが、これは炎症巣を完全に除去するという意味では不可避なことでもある。
後で供覧するがそのような場合には同部の骨膜も欠損してしまうため、何らかの吸収性のメンブレンを置くことが多い、このような場合に、顆粒状の人工骨ではなくスポンジ状のコラーゲン・HA複合体であるリフィット(京セラ)などが使いやすい。
頬側の最外側に吸収の遅い人工骨を使用することがあるが、骨膜がない場合には、大きくフラップを開けて減張切開も行ってのいわゆるGBRが必要とする臨床家もいるが抜歯時にはまず、どれだけ骨や粘膜が変化するのかを見極めるほうが良いのではないかと考える。

 


 

先述したように骨膜の代わりにコーケンティッシュガイド(吸収性メンブレン)を置き縫合する。抜歯窩の上方には骨が逸出しないように、テルプラグとその上方にさらにスポンゼルなどを配置することが多い。頬側の粘膜欠損もテンションフリーにしながら、縫合して近接させる。

 


 

縫合終了後とソケットプリザベーション後3週経過した時点での口腔内所見である。炎症などの合併症はないが、頬側の粘膜は陥凹しており、深部ならびに歯槽骨の骨幅の点で十分とは言えないために、インプラント埋入時にどのように対応するかを考える必要がある。

 


 

LANDmarker(iCAT)の画像。既存補綴をデータに取り込み、トップダウントリートメントを考慮した埋入シミュレーションを実施。

 


 

埋入部位のCT画像。頬舌断面、近遠心断面では気づきにくいが、体軸断面で見ると骨が狭窄している様子がよく分かる。(黄線が骨のライン)

CTによる診断は、一つの断面だけでなく複数の断面で、さらにそれらの断面を移動させながら患部の周囲をあらゆる方向からしっかり観察しなければならない。

 


 

インプラント埋入時の所見。歯槽骨の頬側にかけての骨欠損が観察できる。陥凹はあるが慎重に粘膜骨膜弁を挙上してガイドサージェリーで計画通りの位置、深度に埋入できれば問題ないと判断しGBRなどは必要ないと判断した。

また、①小臼歯であり、側方運動に関しての重要な歯牙であること、②上部構造を固定するスクリューの強度、③サブジンジバルプロファイル、④頬側の陥凹の改善の点からエクスパンジョンを行い、直径4.2mmを埋入することを選択した。

歯肉粘膜の切開は、#12コールドメスを用い慎重に行った。

 


 

右側第一小臼歯部の粘膜骨膜弁の剥離所見を示す。縦切開を行う大きな粘膜骨膜弁ではなく、歯槽頂と陥凹部くらいまでの最小の剥離で対応する。これで不十分と考えれば、袋状ならびに縦切開を入れてのGBRに切り替える。

Landmark Guide マルチガイド(iCAT)を装着して2mmのドリルで予定された深度までインプラント窩の形成を行う。現在は京セラの1.6mmドリルを使用しているがそれについては、今後の症例で紹介する。

 


 

BOS BONE SPREADER
少ない衝撃で骨を押し拡げながら「脆弱骨の緻密化」・「骨幅の拡幅」を行う際に用いる。

 


 

エクスパンジョンを行い、FINESIA HA Tapered type 直径4.2mm/長さ12mm(京セラ)を埋入する計画を立てた。BOSボーンスプレッダー(京セラ)で2mmインプラント形成窩を押し広げることでインプラント埋入に必要な窩洞を形成する。骨の幅がないときに有効となる。

Step1 BOSボーンスプレッダー#1先端系1.1mm・ボディ部2.5mm

 


 

Step2 BOSボーンスプレッダー#2先端系1.4mm・ボディ部2.9mm
手指でのエクスパンジョンが困難になれば、トルクレンチを用いて押し広げることになる.
●隣在歯にボーンスプレッダーが干渉することがあるのでその場合には、エクステンションをつけて干渉を回避する。
最終的な骨幅の拡大とインプラント埋入窩の形成にタップフォーマーを用いると非常に有用である。

 


 

インプラント埋入窩形成後、インプラントの埋入を行う。タップを切っており、ここからずれることはないと思われるが、完全を期すためにはガイドによる埋入が必要である。ディバイスの開発を待ちたい。
インプラント埋入後の歯槽骨、特に頬側の厚みを見ていただきたい。エクスパンジョンにて十分な厚みの骨が頬側に確保されていることがわかる。
インプラントタイプ及びサイズ:FINESIA HA Tapered type 直径4.2mm/長さ12mm(京セラ)

 


 

ヒーリングアバットメントの装着後、インプラント体自体は骨内にしっかりと埋入されているが歯肉の形態(陥凹)を改善するために、おまじない的な意味も込めて、ヒーリングアバットメントの頬側にリフィットを配置し、縫合して手術とした。

手術内容:右側上顎第一小臼歯(#14)インプラント埋入術 エクスパンジョン症例
埋入インプラント:F 4.2X12
埋入トルク:25N/cm
麻酔:笑気鎮静・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 3.6ml
手術時間:18分

 


 

埋入後、panorama X-Pにて状況の確認を行った。予定された部位に埋入されている。隣在歯との距離の関係も含めて、正確な位置に埋入されている。印象採得時のDental X-Pを示す。プラットフォームスイッチングの性格を持つFINESIAが理想的に埋入されている。

 


 

最終補綴物装着時のパノラマならびに上部構造装着後8か月でのDental X-P所見。プラットフォームスイッチングのところまで骨がのっており理想的な埋入と言える。

 


 

最終補綴物装着時の口腔内所見。歯肉の陥凹も若干、存在するが、臼歯部であり気にならないレベルである。患者さんも、埋入時の大規模な骨移植ならびにGBRを回避できて喜んでおられた。

 

 

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