口腔粘膜疾患の前がん病変・前がん状態

本日は、常日頃から関係が深いにも関わらず、知っているようで知らない、あるいは学生の頃に習ったけど忘れていることの多いであろう、口腔粘膜疾患についてお話しさせていただこうと思います。

口腔粘膜疾患とひとくちにいっても、ほとんど全ての病気を網羅することになってしまう。

歯科開業医の先生方が出会う頻度の高い疾患について話をしたい。


口腔を構成する粘膜

口腔は、口蓋、頬粘膜、歯肉、舌、口底によって構成されている。

それぞれの部位によって粘膜上皮の厚さや、付属器官が違う。

ときとして、フォーダイス斑(異所性皮脂腺)のように異所性の器官がみられることがある。

咀嚼による摩耗を防ぐために硬口蓋や歯肉では角化傾向が強く、頬粘膜や口底は口腔の拡張に適合するために柔軟性をもっている。


口腔粘膜上皮の構造

口腔粘膜上皮の実際の構造ですが、上皮は各細胞への分化を経て角質へ終末分化を行い代謝する。

ランゲルハンス細胞は棘細胞の上部に局在し、抗原提示細胞として働く。

メラニン産生細胞は基底細胞の約1〜8%を占め、メラニンを産生する。

メルケル細胞;基底部に局在し、触圧覚に関係する。


口腔粘膜疾患の発症状況

 

  1. 口腔粘膜に限局した固有の病変
  2. 他の部位の粘膜(陰部,眼など)の病変や皮膚疾患と関連のある病変
  3. 内臓疾患などの全身疾患の部分症状としての病変

 


 

粘膜疾患診断の A B C D E

 

Asymmetry:左右対称性

Border:境界(明瞭か不明瞭か)

Color:色調

Diameter:直径

Elevate:隆起性

 


代表的な口腔粘膜疾患

炎症性疾患

  • 舌の疾患(正中菱形舌炎,舌痛症・舌炎,溝状舌,地図状舌,毛舌)
  • 口唇・口角炎(日光口唇炎,肉芽腫性口唇炎,カンジダ性口唇炎,接触性口唇炎,剥脱性口唇炎,ヘルペス性口唇炎)
  • アフタ性・潰瘍性疾患(再発性アフタ,ベーチェット病,Bednar’s アフタ,難治性潰瘍,潰瘍性歯肉炎)

水疱性病変

  • ヘルペス感染症,水痘・帯状疱疹ウィルス感染症,手足口病,尋常性,天疱瘡

角化性病変

  • 白板症,紅板症,扁平苔癬

色素異常

  • 色素沈着,色素性母斑

悪性腫瘍

  • 扁平上皮癌,基底細胞癌,悪性黒色腫

その他

  • 口腔カンジダ症,薬疹,麻疹

代表的な口腔粘膜疾患

炎症性疾患

  • 舌の疾患(正中菱形舌炎,舌痛症・舌炎,溝状舌,地図状舌,毛舌)
  • 口唇・口角炎(日光口唇炎,肉芽腫性口唇炎,カンジダ性口唇炎,接触性口唇炎,剥脱性口唇炎,ヘルペス性口唇炎)

正中菱形舌炎

舌の正中線上にみられる境界明瞭な斑,あるいは結節

形成不全のひとつ

 

平滑舌

とくに舌乳頭の萎縮と上皮の菲薄化が著明な場合は鉄欠乏性貧血と関連することが多い。

Plummer-Vinson症候群,Hunter舌炎

血液検査,ビタミンB群の投与

 

亀裂舌,溝状舌

Melkersson-Rosenthal症候群の部分症状

 

地図状舌

小児や女性に多い

尋常性乾癬や脂漏性皮膚炎に合併することもある。


代表的な口腔粘膜疾患

炎症性疾患

  • アフタ性・潰瘍性疾患(再発性アフタ,ベーチェット病,Bednar’s アフタ,難治性潰瘍,潰瘍性歯肉炎)

アフタ

一つの病的所見の総称で,数mm程度の円形ないし楕円形の粘膜疹を指す。

再発あるいは多発する場合にはベーチェット病を疑う必要も

 

難治性口内炎

この症例はIgGの低下例

口腔内全体の病変の場合は,後でもでてくるが自己免疫疾患を疑う必要がある。


代表的な口腔粘膜疾患

水疱性病変

  • ヘルペス感染症,水痘・帯状疱疹ウィルス感染症,手足口病,尋常性,天疱瘡

帯状疱疹

片側性,三叉神経支配領域

 

尋常性天疱瘡

 

尋常性天疱瘡

 


代表的な口腔粘膜疾患

角化性病変

  • 白板症,紅板症,扁平苔癬

白板症

 

 

紅板症

赤い病変=注意が必要

特に隆起を伴う場合は悪性の可能性も

 

扁平苔癬

角化異常を伴う慢性炎症性変化のひとつ

統計的にみた発症率は0.1〜4%

金属などの接触抗原,C型肝炎などの肝疾患,薬剤(NSAIDs,アンジオテンシン変換酵素阻害薬),ウィルス感染などとの関連が報告されている。

 


代表的な口腔粘膜疾患

色素異常

  • 色素沈着,色素性母斑

黒色性斑

色素性母斑の場合は,メラノサイトの過誤腫的な増殖物のため,軽い隆起を示す事が多く,悪性黒色腫との鑑別が必要。

 

生理的メラニン沈着

 

悪性黒色腫


代表的な口腔粘膜疾患

悪性腫瘍

  • 扁平上皮癌,基底細胞癌,悪性黒色腫

カンジダ症


代表的な口腔粘膜疾患

その他

  • 口腔カンジダ症,薬疹,麻疹

ヘルペス性口内炎

確実な検出は血液検査によるウィルス抗原の検出

塗抹標本をgiemsa染色で検鏡する方法も有用


口腔領域の悪性腫瘍 = 口腔癌

 

がんは、硬い

がんは、きたない

 

 

 

 

 

頬粘膜がん

 

下歯肉がん

 

上顎がん

舌がん


前がん病変の診断・治療

 

→ 前がん病変のうちに切除など治療をする

→ 口腔癌の早期発見・早期治療

 

早期舌がんの切除

進行癌の治療

癌の根治性のために形態機能の犠牲を伴う。

しかし、顎骨の広汎な切除例では、顎骨再建を含む組織再建は行い得ても、口腔の形態・機能の回復が十分行い得ない例も存在します。そのような例では咀嚼、嚥下あるいは発音機能の低下により患者様のQOLは著しく損なわれることとなります。この症例は下顎骨と口腔底の合併切除例ですが、形態の再建は行えたものの、インプラントを含め、義歯の装着による咀嚼機能の回復は困難でした。こちらは上顎切除の症例で顎義歯により咀嚼撥音機能の回復はある程度図れたものの、顔面の変形や開口障害などを生じております。

 

腫瘍切除に伴う顎骨切除と再建

口腔癌の治療においては口腔の形態・機能の温存が考慮されなければなりません。しかし、進行癌では比較的大きな切除が必要となり、そういった切除では口腔の形態ならびに機能の犠牲がつきまといます。こちらの例は腫瘍切除に伴い、下顎骨区域切除し腓骨皮弁にて再建し、こちらでは下顎骨の辺縁切除を行っ手います。この様な切除を行った症例では、顎骨の形態はある程度、温存されますが歯牙の欠損を生じ咀嚼や摂食機能の低下は免れません。


口腔がんの進行度と生存率

口腔がんの病期(ステージ=進行度)が進むほど予後は悪くなります。


口腔癌治療のまとめ

がんはどうしてできるか

 

腫瘍ができるまで

正常な細胞の遺伝子に2個から10個程度の傷がつく

細胞増殖

第二の異常=さらに早く増殖

異常の積み重ね

がん細胞が完成

多段階発がん

 

「イニシエーション(引き金反応過程)」

発がん物質などにより遺伝子が傷つけられ、細胞が無制限な増殖をはじめる。

 

「プロモーション(促進過程)」

イニシエーションを受けた細胞がホルモンバランスや加齢、さらには喫煙習慣などにより、成長に拍車をかけ判別できる大きさに成長する。

 

 

癌は遺伝子異常の蓄積によってできる

図:がんは遺伝子異常の蓄積でできますが、その遺伝子異常は環境による遺伝子異常が大きいのです。


どんな人が癌になりやすいのか?


 


どんな人が口腔癌になりやすいのか?


口腔がんのできる理由は?

東南アジア諸国ではビートルナッツを噛む習慣から口腔癌の発生頻度が非常に高い

 

喫煙、飲酒、慢性の機械的刺激、食事などの学的刺激、炎症による口腔粘膜の障害ウィルス感染、加齢などがあげられます。

口腔癌の危険因子

喫煙、飲酒、慢性の機械的刺激、食事などの化学的刺激、炎症による口腔粘膜の障害、ウィルス感染、加齢など


前癌病変・前癌状態

 

前癌病変(precancerous lesion)とは…

“形態的にみて正常なものに比べて癌が発生しやすい状態に変化した組織”

白板症leukoplakia,紅板症Erythplakia

 

前癌状態(preprecancerous condition)とは…

“癌となる危険性が著しく増大している一般的な状態”

扁平苔癬 Oral Lichan Planus, 口腔カンジダ症 Oral Candidasis など

 


前がん病変:白板症

  • 臨床的あるいは病理学的に他のいかなる疾患の特徴も有しない白色の板状ないし斑状の病変
  • 粘膜表面からやや高まった白色あるいは灰白色の板状または斑状の病巣を形成
  • 白斑はガーゼなどで擦過しても除去できない。粘膜は柔軟性を失い、やや硬いものが多く、通常、自発痛、接触痛などの自覚症状を欠く

 

 

Homogeneous thin leukoplakia in the tongue

 

白板症

Homogeneous thin leukoplakia in the upper Gingiva

 

Homogeneous thin leukoplakia in the tongue

 

Homogeneous leukoplakia in the lower lip

 

Homogeneous thick leukoplakia in the tongue

 

Non-homogeneous (speckled) leukoplakia in the upper alveolar ridge

 

Proliferative verrucous leukoplakia. Notice the multifocal involvement in the lower gingiva

 


白板症 Leukoplakia

定義

摩擦によって除去できない白斑で、他の診断可能な疾患名に分類できないもの WHO(1978年)

a white plaque that does not rub off, cannot be clinically identified as another entity.

 

口腔白板症の病理組織像

Histopathologic appearances of oral leukoplakia

ほとんどの白板症は、機械的刺激によるものであったり、無症候である。

Most cases of leukoplakia are a hyperkeratotic response to an irritant and are asymptomatic.

 

約20%の白板症様病変で上皮異形成もしくは初期の癌である。

About 20% of leukoplakic lesions show evidence of dysplasia or carcinoma at first clinical recognition.

 

口腔底や舌縁部では上皮異形成もしくは初期の癌である確率が45%になる。

However, some anatomic sites (floor of mouth and ventral tongue) have rates of dysplasia or carcinoma as high as 45%.

 

  1. Axell T, Pindborg JJ, Smith CJ, van der Waal I. Oral white lesions with special reference to precancerous and tobacco-related lesions: conclusions of an international symposium held in Uppsala, Sweden, May 18-21 1994. J Oral Pathol Med 1996; 25:49-54

 

臨床像から病理所見を類推するのは困難

ある研究では、白色のみの病変での悪性化の確立が6.5%であったのに対して、紅斑を伴う白色病変では23.4%であったとの報告がある。

In one large study, lesions with an erythroplakic component had a 23.4% malignant transformation rate, compared with a 6.5% rate for lesions that were homogeneous.

Silverman S Jr, Gorsky M, Lozada F. Oral leukoplakia and malignant transformation: a follow-up study of 257 patients. Cancer 1984;53:563-8.

 

初診時口腔内所見 細胞診 Class II  → 経過観察

 

21ヶ月後口腔内所見 細胞診 Class IV → 扁平上皮癌() → 切除へ

 


 

紅板症 Erythroplakia

臨床的にも病理組織学的にも他の疾患に分類されない紅斑

50-91%の確率で、上皮異形成もしくはすでに癌であるとの報告がある。

An erythroplakia is a red lesion that cannot be classified as another entity. Far less common than leukoplakia, erythroplakia has a much greater probability (91%) of showing signs of dysplasia or malignancy at the time of diagnosis.

Shafer WG, Waldron CA. Erythroplakia of the oral cavity. Cancer 1975;36:1021-8

 

初診時口腔内所見 細胞診 Class IIIa → 経過観察

 

1年2ヶ月後口腔内所見 細胞診 Class V → 扁平上皮癌 → 切除へ


口腔扁平苔癬 Oral Lichen planus

皮膚や粘膜にできる角化性で炎症をともなう難治性の病変口腔では頬粘膜に多く認める。

舌や口唇にも生じる。白い粘膜の角化がレース状にみられ、周囲に発赤を伴うのが特徴。

 

 

前がん状態:口腔扁平苔癬

皮膚と口の中の粘膜における慢性の角化異常を伴う疾患

口の中の粘膜に見られる扁平苔癬は、幅1~2mmの白い細かい線状で、レース状や網目状になっていることが多く、ほとんどが頬の内側の粘膜に見られ、左右対称にできることも多い。

40歳以上の中高年齢層に多く、女性に多く見られる。明らかな原因は不明。細菌やウィルスによる感染、歯科用金属アレルギー、ストレスなどが考えられている。

低い確率ではあるが、癌化することがあり前がん状態の範疇に入る。

 

 

口腔扁平苔癬の臨床像

Clinical appearances of oral lichen planus

 

口腔扁平苔癬の病理組織像

Histopathologic appearances of oral lichen planus

上皮直下(粘膜固有層)にTリンパ球を主体とする炎症性細胞の帯状浸潤

 

 

皮膚と口腔の扁平苔癬

 


 

前がん状態:口腔カンジダ症

全身抵抗力低下などによる菌交代現象によって発症する。

  • 偽膜性カンジダ症:口腔粘膜や口角に乳白色の小斑点状の不規則な白斑が  付着し、偽膜を形成することもある。ぬぐいさると、  その部位は発赤する。白板症や角化性病変の白斑はぬぐいされないため、カンジダ症との鑑別点になる。
  • 肥厚性カンジダ症:粘膜に肉芽腫性変化を伴った増殖がみられるもの。
  • 紅班性(委縮性)カンジダ症:偽膜が脱落して粘膜に委縮や紅班がみられるもの。

 

急性偽膜性カンジダ症

Acute pseudomembranous candidiasis

 

慢性肥厚性カンジダ症

Chronic hyperproliferative candidiasis

 


 

前がん状態:鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson 症候群)による粘膜炎

鉄欠乏性貧血、舌炎、嚥下困難の合併

 


前がん状態:円板状エリテマトーデス(Discoid lupus erythematosus)

直径5~10mmの紅斑状,円型,麟屑丘疹で毛嚢腺塞栓を伴う。粘膜障害,特に口の潰瘍がよくみられる。

 


 

口腔癌と間違えやすい病気

エプーリス:歯肉腫

歯肉に生じた腫瘤、歯肉・歯根膜・歯槽骨骨膜由来の良性の線維性組織の増殖、あるいは肉芽腫

  • 不適合な充填物、補綴物、残根、歯石などの種々の外的刺激が関係
  • 妊娠性エプ-リスの存在から内的因子として女性ホルモンの変調も関係

脂肪細胞による脂肪種

線維性組織の増殖による線維腫

血管の腫瘍である血管腫など

アフタ性口内炎

口の粘膜にできる直径3〜5mm程度の円形ないし類円形の、痛みを伴う潰瘍。慢性再発性アフタ

 


どちらが口内炎で、どちらが癌?

 

口腔癌と間違えやすい病気

辺縁性歯周炎

  • 歯肉辺縁部の軽度の発赤や腫脹
  • 歯肉縁の退縮、歯槽骨頂の吸収や退縮
  • 歯根膜が破壊 → 病的歯周ポケットを形成
  • 出血や排膿、歯槽骨の水平的及び垂直的吸収
  • 歯の強い動揺

 


 

口腔前がん病変のがん化のリスク

 


 

Human papilloma Virus と前がん病変

Human papillomaviruses (HPVs)は、多くの皮膚、粘膜の乳頭腫様あるいは疣状の病変と関連する。

 

子宮頸癌の90%にHPV types 16 and 18 が存在する。

zur Hausen H. Papillomaviruses in anogenital cancer as a model to understand the role of viruses in human cancers. Cancer Res 1989;49:4677-81.

Stoler MH, Rhodes CR, Whitbeck A, et al. Human papillomavirus type 16 and 18 gene expression in cervical neoplasias. Human Pathol 1992;23:117-28

The E6 and E7 oncoproteins are able to bind the tumor suppressor protein, facilitate its degradation, and inhibit normal apoptotic pathways in these cells; the last feature may favor

httpgenetics.thetech.orgaskask359より

 

腫瘍に関連するOncogenic HPVs が多くの口腔前がん病変、扁平上皮癌で検出されている。

Gassenmaier A, Hornstein OP. Presence of human papillomavirus DNA in benign and precancerous oral leukoplakias and squamous cell carcinomias. Dermatology 1988;176:224-33.

Greer R, Eversole LR. Detection of HPV genomic DNA in oral epithelial dysplasias, smokeless tobacco-associated leukoplakias and epithelial malignancies. J Oral Maxillofac Surg 1990;48:1201-5.

Loning T, Ikenberg H, Becker JH, et al. Analysis of oral papillomas, leukoplakias, and invasive IV-10 carcinomas for human papillomavirus type related DNA. J Invest Dermatol 1985;84:417-20.

 

HPV 16が頭頸部扁平上皮がんの80%以上で検出されたとの報告がある。

変異型のHPVが口腔がんならびに前がん病変に関連するとの報告も多い。

Watts SL, Brewer EE, Fry TL. Human papillomavirus DNA types in squamous cell carcinomas of the head and neck. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1991;71:701-7. 46. Yeudall WA, Paterson IC, Patel V, Prime SS. Presence of human papillomavirus sequences in tumor-derived human oral keratinocytes expressing mutant . Eur J Cancer, Part B Oral Oncol 1995;31B:136-43. 47. Min BM, Baek JH, Shin KH, et al. Inactivation of the gene by either mutation or HPV infection is extremely frequent in human oral squamous cell carcinoma cell lines. Eur J Cancer, Part B Oral Oncol 1994;30B:338-45.

 

HPV 単独でがん化するとは考えにくい点もありタバコやその他の発がん因子が重なってがん化すると考えられる。

 


 

口腔前がん病変の診断の流れ

 

1)問診,視診,触診など、口腔内外の診察

最初に行わねばならない検査は問診,視診,触診

 

2)細胞・組織学的検査

  •  細胞の採取はメスで病変の一部を採る検査(組織生検
  •  病変の所を綿棒などでこすって検査(細胞診

 

細胞診

口腔内では鋭匙,歯間ブラシを応用し,患部から直接擦過される擦過細胞診が主体。

細胞診の結果

Class I <=良性>から、Class V <=悪性>まで)

I   「異常細胞を認めない」

II  「異常細胞は存在するが、悪性ではない」

III   「悪性の可能性はあるが、悪性とは判定できない」

IV  「強く悪性を疑う」

V   「悪性と判断できる」

 

 


 

組織診断(生検)

  • 組織を少しだけとってきて検査
  • 診断を確定
  • 外科的な侵襲、局所麻酔が必要

 

組織診断はいつするべきか!

喫煙習慣も含めた原因の除去、2~3週間 経過観察して変化がなければ生検

 

 

Histopathological stages in epithelial precursor lesions

 

 

口腔粘膜異型上皮の組織学的特徴(WHO

  1. 基底細胞の極性喪失
  2. 基底細胞様細胞の重層化
  3. /C比の上昇
  4. 滴状形態の上皮釘脚
  5. 不規則な細胞重層
  6. 細胞分裂の増加
  7. 異型核分裂の出現
  8. 上皮表層上半層の細胞分裂
  9. 細胞と核の大小不同
  10. 濃染性核
  11. 核小体の肥大
  12. 細胞接合性の低下
  13. 棘細胞層内の角化巣や単一細胞角化 

 

扁平上皮内新生物(SIN)の病理組織学的分類とその診断根拠

 

 

口腔癌がん、「前がん病変」の診断は難しい。

 

 

Proliferative verrucous leukoplakia. This elderly woman presented multiple lesions affecting different sites of the oral mucosa.

 

 

Left: specimen of an oral leukoplakia showing irregular epithelial stratification.

Right: Normal oral mucosa. Hematoxylin and eosin, 200X

 

 

 

Loss of polarity of basal cells in a photomicrograph of an oral leukoplakia specimen (arrows). Hematoxylin and eosin, 400X magnification.

 

A keratinocyte showing dyskeratosis. Hematoxylin and eosin, 1000X magnification.

 

Left: in this specimen, it can be noticed anisonucleosis, anisocytosis, nuclear and cellular pleomorphism, increased nuclear size, increased nuclear-cytoplasm ratio, and increased number and size of nucleoli of keratinocytes in an oral leukoplakia.

Right: normal keratinocytes.

 

Keratinocytes exhibiting atypical mitotic figures (arrows). Hematoxylin and eosin, 400X magnification.

 

Oral leukoplakia specimen exhibiting increased number and size of nucleoli (arrows). AgNOR staining, 200X magnification.

 

Sample of an oral leukoplakia showing hyperplasia. Note an increased number of basal / parabasal cells and a hyperkeratotic surface. Regular stratification is observed, as well as no cytological atypia. Hematoxylin and eosin, 200X magnification.

 

These specimens of oral leukoplakia exhibited mild dysplasia. Observe architectural disturbances affecting the lower third of the epithelium and cytological atypia. Hematoxylin and eosin, 200X magnification (left), 400X magnification (right

 

Microscopic presentation of an oral leukoplakia showing moderate dysplasia. Architectural disturbances extending into the middle third of epithelium, along with cytological atypia. Hematoxylin and eosin, 100X magnification

 

Histological section of oral leukoplakia exhibiting severe dysplasia. Architectural disturbances affecting greater than two thirds of the epithelium. Pronounced cytological atypia is evident. Hematoxylin and eosin, 100X magnification.

 

 

 

An oral leukoplakia that showed microscopic features of carcinoma in situ: architectural disturbances are observed in the full thickness of epithelium with pronounced cellular atypia. No superficial keratinisation can be observed. Hematoxylin and eosin, 200X magnification.

 

 

 

 

 

 

 

Immunoexpression of hMLH1 in oral leukoplakia showing no dysplasia (left) and severe dysplasia (right). Advance HRP, 200X magnification.

 

Immunoexpression of p53 in oral leukoplakia with mild dysplasia (left) and severe dysplasia (right). Streptoavidin-biotin, 100X magnification.

 


 

前がん病変の好発部位と好発年齢

 

■好発部位

Kaugars GE, Burns JC, Gunsolley JC. Epithelial dysplasia of the oral cavity and lips. Cancer 1988;62:2166-70

頬粘膜21.8%、口蓋13.7%、口腔底12.3%

Waldron CA, Shafer WG. Leukoplakia revisited. A clinicopathologic study of 3256 oral leukoplakias. Cancer 1975;36:1386-92

下歯肉25.2% 、頬粘膜21.9%.

 

■好発年齢

50-69歳 30歳以下は  5% 以下

 


 

前がん病変の悪性化

 

■前がん病変(上皮異形成)の5-18%が悪性化

■悪性化する期間

6ヶ月~39年

軽度上皮異形成   58ヶ月

中等度上皮異形成 38ヶ月

高度上皮異形成  12ヶ月

Richart RM, Barron BA. A follow-up study of patients with cervical dysplasia.

Am J Obstet Gynecol 1969;105:386-93.

■悪性化するリスク

1)  白板症の中に紅板症がある

2) 増大傾向を示す

3) 舌や口底部などの解剖学的にリスクの高い部位

4) 多発性病変

5)  喫煙歴

Lumerman H, Freedman P, Kerpel S. Oral epithelial dysplasia and the development of invasive squamous cell carcinoma. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1995;79:321-9.

 

半年後、癌化

 

2年後、がん

 

1年後、乳頭腫は小さくなったが、赤みが増し、硬結を触れ生検 → がん

 

6年後、表面が塑造になり、硬結を触れたため切除 → 初期癌(観察

 

8ヶ月後、舌がん

 


 

前がん病変の治療

外科的切除

メスによる切除かCO2レーザーによる切除。生検を行い、上皮性異形成の診断を得れば、全切除が望ましい。

切除後の再発は34.4%.と高い確率で生じるとの報告

高度上皮異形成の周囲  3-5 mm の正常組織からの再発生は 18% との報告あり。

Chu FWK, Silverman S Jr, Dedo HH. CO laser treatment of oral leukoplakia. Laryngoscope 2 1988;98:125-9. 22. Vedtofte P, Holmstrup P, Hjorting-Hansen E, Pindborg JJ. Surgical treatment of premalignant lesions of the oral mucosa. Int J Oral Maxillofac Surg 1987;16:656-64.

上皮過形成の治療に関しては悪性化の率も高くないためどのような選択をするか難しい

 

 


 

癌化を防ぐためのCHEMOPREVENTION

 

■Beta-carotene and the retinoids (抗酸化剤)

Lippman SM, Batsakis JG, Toth BB, et al. Comparison of low-dose isotretinoin with beta carotene to prevent oral carcinogenesis. N Engl J Med 1993;328:15-20.

  • 解剖学的な部位、範囲、医学的な見地から切除が困難な場 合などに癌化を防ぐためのChemoprevention を考慮する。
  • 一度切除して、再発をした場合や非常に広い範囲での前がん病変では切除してもまた、発生することが考えられるので、抗酸化サプリメントを考慮する。

Beta-caroteneの臨床試験では14.8% から 71%.の症例で有効であったとの報告

Several clinical trials have found that treating oral leukoplakia solely with beta-carotene supplements is associated with clinical improvement; rates have ranged from 14.8% to 71%.

  • Garewal HS, Meyskens FL, Killen D, et al. Response of oral leukoplakia to beta-carotene. J Clin Oncol 1990;8:1715-20.
  • Toma S, Albanese M, De Lorenzi M, et al. Beta-carotene in the treatment of oral leukoplakia. Proc Am Soc Clin Oncol 1990;9:179 (abstract).
  • Malaker K, Anderson BJ, Beecroft WA, Hodson DI. Management of oral mucosal dysplasia with beta-carotene and retinoic acid: a pilot cross-over study. Cancer Detect Prev 1991;15:335-40.

 

■Retinoids (抗酸化剤)

vitamin A, 13-cis-retinoic acid (13-cRA),isotretinoin or Accutane®

M.D. Anderson Hospitalの報告

  • 1-2 mg/kg/day of 13-cRA for 3 months
  • 44 patients with oral leukoplakias
  • 32 nearly 67% of the patients had more than a 50% reduction in lesion size
  • 79% experienced a variety of side effects.

Beta-carotene and the retinoids (抗酸化剤)

  • 喫煙者で肺がんのリスクを高める
  • 血管形成術後の患者で重篤な有害事象
  • アスベスト被ばくのある患者さんでがんのリスクを高める

 

 

前がん病変・早期がんの診断は難しい。

前がん病変の癌化の予想はもっと難しい。

 


 

口腔がん・前がん病変診断の新しい試み

 

Our strategy for better treatment of Oral Cancer

 

 

A brush cytology sample is collected from the oral cavity and processed in a suspension for (B) analysis on the bio-nanochip platform for epidermal growth-factor receptor (EGFR) biomarker and morphometric characteristics of disease. (C) Fluorescence-microscopy images of cells stained with a cocktail of fluorescent dyes and antibody-based reagents such that the cytoplasm appears red (Phalloidin), the nucleus blue (4ʹ-6-diamidino-2-phenylindole: DAPI), and EGFR is green (AlexaFluor®488). PMMA: Poly(methyl methacrylate).

 

 

The nuclear-to-cytoplasm (N/C) ratio (blue) and mean intensity (in arbitrary units, a.u.) for EGFR biomarker (green) increase across patients groups from healthy to potentially malignant legions (PML) to oral squamous-cell carcinomas (OSCCs).

 

 

口腔がん診断のための研究①

 

噴きかけるだけで癌が光る魔法の試薬

 

口腔がん診断のための研究➂

gGlu-HMRGについて

gGlu-HMRGプローブそれ自身は無蛍光であるため、細胞外から散布しても当初は蛍光は観察されない。GGTを高発現しているがん細胞に出会うと、細胞膜表面上のGGTによる反応が起こり、強い蛍光を発するHMRGが生成する。HMRGは容易に細胞膜を通過し、細胞内のリソソームに主に蓄積するため、がん細胞だけを特異的に蛍光染色できる。

 

癌細胞および正常細胞の蛍光イメージング

癌化を知るために → 癌細胞を見えるようにする!

 

Telomerase

Telomerase is a ribonucleoprotein complex that is responsible for the complete replication of chromosomal ends by adding hexameric (TTAGGG) repeats.

Many studies have demonstrated that the majority of malignant tumors express telomerase activity, whereas most normal cells do not.

Three major components associated with telomerase activity in humans have been identified:

(a) the RNA component [hTERC]

(b) the telomerase-associated protein [hTEP1]

(c) the telomerase catalytic unit or human telomerase reverse transcriptase [hTERT].

Only hTERC and hTERT, however, are required for the reconstitution of telomerase activity in vitro and therefore represent the minimal catalytic core of telomerase in humans .

 

Telomerase activity in human cancer

 

 

Structure of OBP-401(TelomeScan)

 

がん細胞での選択的なウイルス増殖と細胞死誘導

 

ヒトがん細胞における選択的なTelomelysin増殖複製

 

 

 

Mechanism of imaging tumor cells

 

口腔がん診断のための研究②

岡山大学医学部との共同研究 TelomeScan(テロメスキャン)

 

 

Visualizasion of tongue tumors and lymph nodes in Mice

 

 


 

口腔がんに関する検査

現在使われているもの VEL SCOPE

 

 

口腔癌ならびに前癌病変に対し、術中にNBIシステムと消化器用拡大内視鏡を用い補助的に使用しました。通常観察では視認できなかった粘膜表面の微細な血管構造がより明瞭に認識でき、病変の境界の観察や肉眼では診断の難しいと思われる微小病変の観察にNBIが有用である可能性が示唆されました。しかしながら、口腔癌や前癌病変を含む口腔粘膜病変の評価に関して、不明な点も多く、今後症例を集め検討してゆくべきであると考えられました。

 

 

Narrow Band imaging is useful to observation of microvessel

今までの研究から、正常粘膜において、血管は規則的なル-プ走行をしていますが、前癌病変あるいは癌においては、その走行が乱れ血管密度も高くなることが分かっています。そこで、NBIを用いて、粘膜下の微細血管を観察し、病変を検出しようとする試みがなされています。

 

 

Observation with different wave length

NBIの原理ですが、これまでの可視光線全域をカバ-していたRGBフィルタ-の分光透過率特性を狭帯域特性に変更、すなわち狭く限られた波長の光で臓器を観察しようとするものです。スライドに示すように、各波長により深度の違う種々の深さの微細な血管が観察できることが分かります。

 

スライドには正常口腔粘膜上皮のNBI像を示します。血管がル-プ状を呈して、規則的に走行していることが分かります。また、深部の血管は青みがかって、観察されます。口腔領域においても、食道や咽頭部と同様に粘膜下の微細血管の走行が観察されることが分かります。

 

スライドは、上顎の高分化型の歯肉癌ですが、このように正常粘膜で見られる血管のル-プ状走行が変化し、癌部では不規則になってきているのが観察されます。

 

これは非常に早期の臼後三角部に発生した癌ですが、廻りの粘膜で微細な血管がル-プ状に規則正しく走行しているのに対し、病変部では非常に太く異常な血管が粘膜上皮の直下で走行しているのが分かります。

 

症例は、早期の前歯部、舌側歯肉の癌です肉眼で観察しても内視鏡で拡大して観察しても粗造感はあるのですが、周囲粘膜と病変部の境界も不明で、癌かどうか診断の難しいものと思われます。

 

 

2015

九州大学などの研究グループは、「線虫」と呼ばれる生物を使って、微量の尿からがんを高感度に検出できることを明らかにした。さまざまな種類のがんを、早期の段階で高精度かつ安価に検出することにつながるという。

 

 

 

 

 

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